ココは何処?
ぐるんぐるん転がされて、ほっぽり出された私は、気がつくと冷たい岩山の上に正座していた。
何故正座?
冷たいよ~お膝が痛いよ~。
寒さにブルッと身震いして、襟元を合わせようとしてみるが……。
寝間着だね、コレ確実に。
ウサギ柄のピンクのフリースパジャマby丸襟
モコモコ靴下も履いたままだね。
現状を把握しよう。
頭上に広がるのは、まだ薄ら暗い空。
ハイ。夜明け前ね。
左右を見渡しても霧がたち込めてよく見えない。
岩山?しかも山頂付近?
マジですか?
ココはドコ?
ワタシはダレ?
はい。
鈴木桃。32才。独身。
彼氏いない歴5年。
某化粧品メーカー美容部員。
まだ、気は確かだ。
『モモ~、コンビニあるからね~。貴女の力を使ってね』
やさしい声が頭に響く。
誰よ?誰なの?
優しい声で言ってるけど、内容がメチャクチャでしょうが。
待ってよ!もしや、守護霊?
亡くなった祖母の家系?
私の力ってどんな力よ。
コンビニが、山頂にあるわけないでしょーが。
山小屋じゃないっつーの。
答えてくれよ~。
声さんよぉ~。
「コンビニって。全くもう……」
呟いた瞬間、目の前に文字が浮かぶ。
・ムキムキ怪力娘
・スーパー体力バカー
・ふんわりテレパシー
・コンビニーズ
は?
複数系?
「……コンビニーズ?」
ドロン。
ご登場です。
山頂に。
見慣れた看板、仕事帰りにいつも利用しているイイ気分の、あのお店。
イヤイヤイイヤ、全く全く訳ワカメだけれど、岩の上で蝉の声に滲みいってるより10倍良いでしょ。
私は入りますよ。
どんな危険があの中に待ち受けてあろうとも!
暗闇の中、あるのはきっと救いの光よ。
吸い込みたまえ~。
トゥ~。
あぁ~。あたたかい~。
危険は無さそうだね。
誰もいないしね。
レジに従業員さんもいませんよ。
「誰かいませんかー。こんにちはー。こ・ん・に・ち・はー!」
叫んでみる。
返事は無い。
人の気配は全く、無い。
光々としたら明りだけが、店内を包んで頂を照らしている。
静かだね~。
あ。目眩が・・・。
私が見ているのは、幻覚?
幻覚体験イリュージョン?
ちょっと休んで落ち着こう。
商品ラインナップはいつもの、私がよく行くお店の感じ。
食欲はないけれど、あんまんとコーヒーを手にとる。
ホカホカ湯気がたっている。
「すいません。イタダキマス。」
イートインコーナーに座る。
あんまん、甘いよ。
美味しいよ。
コーヒーも……香りまでリアルだよ。
眠ろう。
ひと眠りして起きたら、私の12畳ワンルームマンションに戻っているはず!
きっとそうだ。
明日は販促会議だし、早起きして資料を見直さないといけない。
早く眠らなきゃ……。
無理矢理にうつ伏せって私は目を閉じた。