それぞれの想い。
タタ村に着いた時には、もう真っ暗になっていた。
フンフン鼻唄を歌いながら飛んでいるホトちゃんに先導されて、村までたどり着いた。
「モモーっ!」
塊が飛び付いてくる。
ジュウだ。
「モモさぁ~ん」
あ。涙声のミーナちゃんだ。
「モモ!どうした、そのデカいのは?」
ワヒーラに変化したシロに驚いている。
夜遅いのに、タダノさんもダイさんもヨウウさんまでいるよ。
待っててくれたんだね。
ありがとう。
「この大きな子は、シロだよ。森の中で覚醒してデカクなったの。浮いてるのが白竜のホトちゃんだよ」
「シロだよ。ボクはシロだよ」
巨体であろうが、今までの如くみんなに愛想を振り撒いて、尻尾をバタンバタンさせている。
「……」
「し、シロ?白竜?ホトちゃん?」
「まさか、白竜様?」
「そうだよ~ん。ヨロシクねぇ」
ふわふわと村の皆の回りを浮遊して、ホトちゃんが挨拶をする。
お。みんな固まってるね。
「アジ婆さんを呼べ!イヤ、アジ婆さんのところへ集まろう」
ダイさんが困惑した声で皆を促した。
「今晩は、白竜様。ようこそタタ村へいらっしゃいました」
アジ婆さんが柿の茶を啜るホトちゃんに頭を下げる。
村人たちが、それに続いて平伏する。
なんだか、ホトちゃん偉い人みたいだねぇ。
「いいよ、そんなに畏まらなくても」
ズルズルとお茶を啜る。
「ヘネシー湖のお水より美味しいよ。オレサマは、モモに付いて旅をするんだ。美味しいものもイッパイ食べて冒険もするんだ」
ホトちゃんが、小さな胸を反らす。
「……モモ、旅に出るのか?」
「う~ん。先ずはあの森の異変は、ホトちゃんが生まれ変わった後の力が足りなくて、獅子王様が森に注ぐ魔力をホトちゃんに使っていたからなんです。今は解決して、森も元に戻ると思います」
そうか、それは良かったと、村の皆が喜び合っている。
そんな中、ジュウの視線が痛いよ。
「獅子王様に話を聞いて、私の目的は妖精の森にあるんじゃないかと思います。妖精の森を目指します」
「妖精の森?ドミニク国の隣にある?」
「無理だよモモ!すげー遠いんだ。戦で国も荒れている。危険だよ!」
そうだね。戦争があったって言ってたね。
正直不安だよ。
でも私は何の為にこの世界に来たの?
その意味を知らなくちゃ。
「モモさん、妖精の森へは、ホホロ国とアステリア国とドミニク国と三つの国を越えなければならない。大陸の戦が終わってまだ数年だ。国も土地も乱れているだろう。それでも行くのかね?」
アジ婆さんが真剣な目で問う。
私は、頷く。
「行きます」
「そうかね。ならば旅の支度をせねば、ダイに教えて貰う事もあるだろう。出発は数日後にした方がいい」
「はい。わかりました」
私は頭を下げる。
お世話になってばかりだ。
「モモさん……」
ミーナちゃんが潤んだ瞳で私を見つめる。
止めて。
その攻撃は止めて。
「オレも一緒に行く……」
は?
「オレもモモたちと一緒に行く!」
イヤイヤイヤ、ジュウさん。
それは無理な提案でっせ。
「馬鹿を言うな!」
ダイさんの雷が落ちる。
「魔力もない子供のお前が一緒に行ってどうする。足手纏いになるだけだ」
ダイさん厳しい~。
だけどそうだよ。
ジュウの命を預かる自信は無いよ。
「オレだって、槍は使える。剣だって。足手纏いにはならない!オレはもう12になる!」
ジュウが真っ赤な顔で叫んでいる。
ジュウの気持ちは嬉しいよ。
嬉しいけど……。
「私も一緒に行きたいです……」
小さな声でミーナちゃんが呟く。
あ。ミーナちゃんまで……。
「ミーナお前!」
タダノさんが絶句している。
あ~。困ったよ。
何て言えばいいのか。
二人の暴走に頭を抱えている村人&私に、ホトちゃんが涼しい顔で言ってのける。
「来たけりゃ来ればいいじゃん。こんなチビたちでも、オレサマの荷物持ち位にはなるでしょ」
ホント、さらっと言うよね~。
「オレ、荷物たくさん持つよ」
「私も、お料理とかお洗濯できます」
ミーナちゃんの発言に「あんた採用!」ホトちゃんが勝手に内定を出している。
更に頭を抱えているダイさんとタダノさん。
「ふふ。取りあえず今日はもう休みましょう。夜も遅いわ。ジュウもミーナちゃんも後でゆっくり話しましょう」
妖艶な笑顔でヨウウさんが混乱をまとめようとする。
「そうだの。出発までに家族でよく話し合うことだ。白竜様を休ませて差し上げねば」
そしてアジ婆さんが締めて、解散となった。
「オレサマはモモと一緒に寝てもいいぞ」
「ミーナちゃん。大丈夫かな?」
ミーナちゃんに許可をとる。
「はい。光栄です」
「ボクもボクも!」
嬉しそうにシロがはしゃぐ。
ごめんシロ。
それは無理だよ。
あのベットにワヒーラサイズのシロは……。
床の上にタオルを敷いて寝転んでいるシロのブツブツと文句を言う声が、夜遅くまでミーナちゃんの家に響いていた。
「なんで?なんでボクだけ~」
「シロ、うるさ~い」




