ホトちゃん。
白竜さんが目を覚ましたのは、日も大分暮れてからだ。
「あ~よく寝た。体が楽になった~」
小さい体がピョンピョンと跳ねる。
可愛いぬいぐるみのようだ。
「さぁて、これからどうしようかなぁ~」
「あの~。私とシロは、そろそろ村に帰ります」
「何でよ!」
白竜さんが速攻かみつく。
「私たちは、果てない森から獣人たちが溢れ出てきた原因を、獅子王様に聞きに来たんです。もうこれで森も、獅子王様の力で元に戻りますよね」
「えー!」
白竜さんは、草の上でぐるぐると転がり回る。
気のせいか、少しふて腐れている気がする。
「あんたたちが、居なくなったら寂しいじゃない」
そんな事言われても、白竜さん。
「よし!オレサマもその村とやらに、一緒に付いて行ってやる!」
一緒に行ってやるって……。
えー?
しかも、オレサマって。
「白竜さんって、雄なんですか?」
「オレサマに性別はない!でも、おまえは一応メスなんだろう?」
はぁ。一応メスですね。
ん?一応?
「一緒には行けませんよ。白竜さんは、この森と山の主なんでしょ?居なくなったら困りますよ」
「困りはしない」
重厚な獅子王様の良いお声が聞こえてきた。
獅子王様、素敵なお声よ。
「次の変異までに戻れば良い。外の世界を見るのも良かろう。白竜は今の大きさでなければ、共に行くのは無理であろう」
「オレサマは凄くデカクなるのだ。小さいのは今だけなのだ。ワヒーラなど目ではないのだ!」
え?本当にオレサマキャラでいくの?
「今だけって、どのくらい?」
「幼竜のサイズでいるのは、20年位か」
う~ん。気の長い話だね。
「そなたの気からは、アンジェリーヌの加護を感じる」
獅子王様が呟く。
アンジェリーヌ?
もしかして、優しい声さんのこと?
「優しい声さんをご存知なんですか?」
「……腐れ縁だ」
「優しい声さん……アンジェリーヌさんに会いたいんです!獅子王様どうすればいいのですか?私はアンジェリーヌさんに、この世界に連れて来られたんです」
「そなた、召喚者なのか?……アンジェリーヌに会いたいのならば、グリーンランドにある妖精の森を目指すがよい」
「妖精の森?獅子王の気でひとっ飛び?」
白竜さんが茶々を入れる。
「いや。そなたからは未知なる強い力を感じる。だが、狼ごときにやられていたではないか。経験が足りていないのだろう。それを補いながら妖精の森に行くがよい。今のままで妖精の森に行けば、ただの役立たずだ」
獅子王様から厳しいお言葉を頂く。
「私、妖精の森を目指すよ!目指して旅に出るよ!」
「ボクもついてくよ~」
「妖精の森かぁ。ジューシの実が旨いんだよな~」
やっぱり、白竜さん付いてくるの?
「暫く留守にするけどさぁ。何かあったら呼んでよね。火竜にもさ、ヨロシク言っといて」
「了解した。道中の無事を祈る」
いいの?そんなに軽くていいの?
獅子王様~。
カムバッーック!
こうして私とシロと白竜さんは、呆気なく森を後にした。
「本当に良かったんですか?後悔しても知りませんよ」
「あのね~、オレサマは前の三百年は殆ど山と森から出たことが無いの。他の世界を知ったっていいじゃないか!森を加護してるのは獅子王。オレサマは謂わば、象徴!マスコット!」
そうなの?
白竜さんは、プクプクと浮いて私の横を飛んでいる。
「じゃあ、私たち旅の仲間です。自己紹介をしないといけませんね。私は鈴木桃です。この世界に来て間もない初心者です。よろしくお願いします」
「ボクはシロ。モモちゃんとはすご~く仲好しなの。ヨロシクね」
「ふ~ん。オレサマは白竜。一度目の生まれ変わりが終わったところ。名前は……ない」
「無いの?ボクもなかったよ。モモちゃんがつけてくれたんだよ。シロって。モモちゃんがつけてくれるよ」
シロの言葉に、白竜さんが期待を込めた上目遣い目線を送ってくる。
困ったなぁ。
白くてちびっこいの二匹目だから…。
「しろーず」
「ソレは、何かヤダ」
却下されてしまった。
う~ん。
白だからホワイトで、ホトちゃん。
「……ホトちゃん」
「えー。ソレ可愛い~」
なんと、気に入られてしまった。
「ボクはシロ」
「オレサマはホトちゃん」
名乗り合って盛り上がっている。
仲良しで良かった。よかった?
じゃれ合っている二人を眺めながら、先の事を考えていた。
目的地は決まった、妖精の森。
アジ婆さんに話を聞いて旅に出よう。
アジ婆さん……ミーナちゃん、ジュウ、教官、ヨウウさん、みんな。
名残惜しいな。
本当に居心地が良い村だから。
辺りがどんどんと暗くなっていく。
「シロ、ホトちゃん村まで急ごう!」
私たちはスピードアップして村まで走った。




