白竜さん。
私は吸い寄せられるように、そのスポットライトに近づく。
「近寄るな!今すぐ立ち去れ!」
獅子王様の声が厳しくなる。
それでも私は、ふらふらと近づいて行く。
白い、真っ白で真珠のような光沢を放つ、小さな小さな生きものが、スポットライトの中佇んでいた。
とかげ?……竜!
「白竜?」
ピレネーの山にいるという白竜。
獅子王様がその為に森を守っているという白竜?
丸まっていた小さな生き物が、顔をあげた。
「何の用?力はないから何もできないからね」
弱々し気に聞こえる声に問う。
「白竜……白竜さんですか?」
「そうだよ」
怠そうに体をひと捻りして、また丸まってしまった。
「生まれ変わったばかりの白竜に、私の力を与えているが、うまく取り込めていない。森もコントロール出来なくなっている。今すぐに立ち去るのだ!」
獅子王様の声が聞こえる。
でも、宝果の実が白竜さんに力を与えるって、アジ婆さんが言っていた。
「宝果の実は、食べられたのですか?」
「……実りが少なかったのだ。白竜に力を与えられる程のものが無かった」
そんな……。
白竜さんの側には、バナナの皮のようなものが幾つか落ちている。
ん?
あのバナナ擬き、何処かで見たような。
ハッと思い出して、リュックの中を探る。
腐ってない?腐ってないよね?
「もしやこれが宝果なんてことは………ナッシングですよね」
黄金に輝いているバナナ擬きを2本差し出す。
「これ!」
怠そうに此方に目を向けた白竜さんが、飛び起きる。
私の手からバナナ擬きを奪い取り、一目散に食べまくる。
「これ、この質よ!この充足感よ!あぁ~みなぎってくるぅ~」
身悶えしながら食べまくっている。
「あ~満足!満足!」
食べ散らかしてお腹がぽっこりになった白竜さんが、仰向けに寝っ転がる。
「あんた、なんで宝果を持ってんのよ」
「イヤ~、まさかそのバナナ擬き。果物が宝果だとは思わずに、拾ったままリュックに入れてたんです。色んなことがあったから拾ったことも忘れてて……」
「ふーん。あんたトロそうだもんね」
チロっと、イヤな視線を私に向ける。
トロそうって……。
「血をだらだら垂れ流してるその姿。トロ子でしょ」
白竜さん、毒舌ぅ。
痛みも血だらけなのも忘れていた私は、確かにトロ子だ。
指摘されると、痛みがぶり返してくる不思議。
ヨロヨロとリュックから消毒液と包帯を取り出す。
消毒液をかけると。
う~。沁みる。
悶絶している私に、シロが心配して擦り寄ってくる。
うん。もうずっしりとした重圧を感じるね。
「モモちゃん痛くない?痛くない?」
「大丈夫。シロ、包帯引っ張るの手伝って」
シロにお手伝いしてもらって包帯を巻く。
血が滲んだままだが、「スーパー体力バカー」を唱える。
これで大丈夫だと思うんだけど。
「ふーん。魔力持ちねぇ。それも面白魔力」
白竜さんが欠伸をする。
「あんた、しばらく昼寝するんだからココ見張っててよ」
言い残すと、さっさと高鼾をかきはじめた。
白竜さん……なんだか、イメージが。
「これで白竜もエネルギーが満ちるだろう。私も森の事に専念出来る。礼を言う」
獅子王様から有り難いお言葉を頂く。
とんでも御座いません。
むしろ勝手にバナナ擬きを持ち帰った私が責任を感じるよ……。
「そなたが森に入ってきたのは、知っていた。宝果を持ち去ったのに気付かなかった私の落ち度だ」
おぉー。男前発言!
見たいな。お顔を見たいな。
「暫くすれば白竜も目覚める。その時にまた相見れよう」
獅子王様の気配が消えて無くなった。
取り残されたワヒーラのシロと、グーグー眠っているちびっこい白竜さん。
「シロ、私たちも少し休もう。いちご飴食べる?」
「食べる!食べる!」
シロが太い尻尾をブンブンと振って、大きなお口をがぶりと開けた。




