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ウエスリア大陸へようこそ  作者: 猫娘
森を抜けて
22/26

白竜さん。

 私は吸い寄せられるように、そのスポットライトに近づく。

「近寄るな!今すぐ立ち去れ!」

 獅子王様の声が厳しくなる。

 それでも私は、ふらふらと近づいて行く。


 白い、真っ白で真珠のような光沢を放つ、小さな小さな生きものが、スポットライトの中佇んでいた。

 とかげ?……竜!

「白竜?」

 ピレネーの山にいるという白竜。

 獅子王様がその為に森を守っているという白竜?

 丸まっていた小さな生き物が、顔をあげた。

「何の用?力はないから何もできないからね」

 弱々し気に聞こえる声に問う。

「白竜……白竜さんですか?」

「そうだよ」

 怠そうに体をひと捻りして、また丸まってしまった。


「生まれ変わったばかりの白竜に、私の力を与えているが、うまく取り込めていない。森もコントロール出来なくなっている。今すぐに立ち去るのだ!」

 獅子王様の声が聞こえる。

 でも、宝果の実が白竜さんに力を与えるって、アジ婆さんが言っていた。


「宝果の実は、食べられたのですか?」 

「……実りが少なかったのだ。白竜に力を与えられる程のものが無かった」

 そんな……。

 白竜さんの側には、バナナの皮のようなものが幾つか落ちている。

 

 ん?

 あのバナナ擬き、何処かで見たような。

 ハッと思い出して、リュックの中を探る。

 腐ってない?腐ってないよね?

「もしやこれが宝果なんてことは………ナッシングですよね」

 黄金に輝いているバナナ擬きを2本差し出す。


「これ!」

 怠そうに此方に目を向けた白竜さんが、飛び起きる。

 私の手からバナナ擬きを奪い取り、一目散に食べまくる。

「これ、この質よ!この充足感よ!あぁ~みなぎってくるぅ~」

 身悶えしながら食べまくっている。

「あ~満足!満足!」

 食べ散らかしてお腹がぽっこりになった白竜さんが、仰向けに寝っ転がる。


「あんた、なんで宝果を持ってんのよ」

「イヤ~、まさかそのバナナ擬き。果物が宝果だとは思わずに、拾ったままリュックに入れてたんです。色んなことがあったから拾ったことも忘れてて……」

「ふーん。あんたトロそうだもんね」

 チロっと、イヤな視線を私に向ける。

 トロそうって……。


「血をだらだら垂れ流してるその姿。トロ子でしょ」

 白竜さん、毒舌ぅ。

 痛みも血だらけなのも忘れていた私は、確かにトロ子だ。

 指摘されると、痛みがぶり返してくる不思議。

 ヨロヨロとリュックから消毒液と包帯を取り出す。

 消毒液をかけると。

 う~。沁みる。

 悶絶している私に、シロが心配して擦り寄ってくる。

 うん。もうずっしりとした重圧を感じるね。

「モモちゃん痛くない?痛くない?」

「大丈夫。シロ、包帯引っ張るの手伝って」

 シロにお手伝いしてもらって包帯を巻く。

 血が滲んだままだが、「スーパー体力バカー」を唱える。

 これで大丈夫だと思うんだけど。


「ふーん。魔力持ちねぇ。それも面白魔力」

 白竜さんが欠伸をする。

「あんた、しばらく昼寝するんだからココ見張っててよ」

 言い残すと、さっさと高鼾をかきはじめた。

 白竜さん……なんだか、イメージが。


「これで白竜もエネルギーが満ちるだろう。私も森の事に専念出来る。礼を言う」

 獅子王様から有り難いお言葉を頂く。

 とんでも御座いません。

 むしろ勝手にバナナ擬きを持ち帰った私が責任を感じるよ……。

 

「そなたが森に入ってきたのは、知っていた。宝果を持ち去ったのに気付かなかった私の落ち度だ」

 おぉー。男前発言!

 見たいな。お顔を見たいな。

「暫くすれば白竜も目覚める。その時にまた相見れよう」

 獅子王様の気配が消えて無くなった。

 

 取り残されたワヒーラのシロと、グーグー眠っているちびっこい白竜さん。

「シロ、私たちも少し休もう。いちご飴食べる?」

「食べる!食べる!」

 

 シロが太い尻尾をブンブンと振って、大きなお口をがぶりと開けた。


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