暴走・爆走。
午前中はククの実や薬草を採りに行ったり、畑仕事をお手伝いして過ごし、午後からは魔力の訓練を続けていた。
「モモちゃん、ボク体が熱くてはち切れそうだよ~」
シロがフウフウと真っ赤な顔で唸っている時だった。
ピピピピピ
逃走、逃走、逃走、逃走。
いきなりデーターが押し寄せてきた。
え?何かあった?
座禅を組んでいた私は慌てて立ち上がる。
「どうしたモモ。トイレか?」
イヤ、違うし!
「ふんわりテレパシー」
ピピピピピ
ハリネズミ女、まるむし男、ムササビ男、山嵐女、とかげ女、蜘蛛男、逃走、逃走中。
ピピピピピ
くま男、ヤギ女、モモンガ男、キツネ男、ねずみ女、なめくじ男、逃走、逃走中。
データーが頭の中を駆け巡る。
これは、ヤバイ気がする。
「森から獣人が押し寄せてくるぞー!」
「逃げろー!」
外から叫び声が聞こえる。
ダイさんが、外に駆け出す。
私も後に続く。
まだ遠くだが、獣男や女たちが、村の方に押し寄せて来るのが見える。
ダイさんの顔色が変わる。
「トワ、女子供をアジ婆さんの家に集めろ。キラ、剣と弓矢を用意しろ。急げ!」
「はい!」
「了解です!」
二人の行動も素早い。
風のように行ってしまった。
「モモ、お前もアジ婆さんの所に行け!」
女の子扱いしてもらってうれしいけど。
いいの?私、怪力娘だよ。
そこそこの戦力には、なると思うよ。
ダイさんに、ニヤリと笑う。
「今こそ修行の成果をみせる時ですよ。師匠!ね、シロ?」
「セイカ!セイカ!」
わかっているのか?シロが合いの手を入れる。
「オマエは……」
絶句している鬼教官を促す。
「私の怪力見ましたよね?今は急がないと」
「……よし!ついて来い」
教官!ついて行きますとも~。
フンフン鼻息を荒くしているシロと手頃な石を選びながら「スーパー体力バカー&ムキムキ怪力娘ー!」を唱えておく。
ダイさんと武器を用意したキラさんとトワくんと、村の入り口で待ち構える。
タダノさんとジュウの父親のヨミさんと合流する。
「何が起こってるんだ?」
「こんな事は始めてだ」
険しい顔で、走ってくる獣たちを睨みつける。
私は幾つかの石を構える。
「来るぞ!来るぞー!弓を引けー!」
ダイさんが叫ぶ。
獣たちの群は、やって来た。
私たちの存在を無視するかのように、すり抜けて通り過ぎて行く。
村人も村全体も無視して、ただ一目散に走り去る獣人たち。
2、3本弓を射たキラさんもその手を止めて、剣を構えているタダノさんたちも、そのまま固まっている。
何かおかしい?
私は、通りすぎようとするたぬき女さんを捕まえる。
たぬき女さんだよね。
だってどう見ても、狸だもん。
「お急ぎのところ、すいませ~ん」
「ホント急いでるのよ!止めてよ」
「あ。ごめんなさい」
怒られたので、並走しながら話を聞く事にする。
「どこに向かってるんですか?」
「果てない森から離れたトコロよ」
「え?森で何かあったんですか?」
「魔力が歪んでおかしくなってるのよ。とてもいられないわよ。森から少しでも離れないと、私たち獅子王様からお印をもらって繋がってるから頭が変になりそうなのよ」
フムフム。
果てない森に異変が起こってるのね。
「もういいでしょ?私に構わないでよ。あんた人間でしょ?足速いのね」
「そうなんです!私、スプリンターになったんです。どうもありがとうございます。さようなら」
「よくわからないけど……サヨナラ」
親切なたぬき女さんと別れて、村に戻る。
男衆が一同に集まっている。
ジュウがその輪の中から飛び出してくる。
「無茶すんなよモモ!大丈夫か?」
大丈夫だよ~。
心配してくれてありがとう、ジュウ。
「へへ。たぬき女さんに、話を聞いたんですが、果てない森で異変が起こっているそうですよ。それで獣人たちが、森から遠くへ避難しているようです。村の辺りではまだ森の影響から逃れられないみたいだから、とりあえず村は安全だと思います」
ホーッと深く息を吐いて、トワくんが地面にへたり込む。
緊張してたんだよね。
わかるわかる。
「取りあえずは良かったのか?交代で村の警備をしないとな」
「そうだな。森で何が起きてるかわからん」
タダノさんたちが首を傾げている。
「私、果てない森に行ってきます」
シロとね。
そう言った私の顔を、息を飲んでみんなが見つめていた。




