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ウエスリア大陸へようこそ  作者: 猫娘
森を抜けて
17/26

元気の源

 翌日、ミーナちゃんとジュウとシロと一緒に、ククの実と薬草を取りに出掛けた。

 

「果てない森から住人が出て来るのはおかしい。俺たちとは住みわけてるはずなんだよ。危険だから、森には近づかないように!」

 髭もじゃタダノさんが念押ししているのに、妙に呑気な声でジュウが言う。

「ミーナはこれからは、一人で森に近づいたらダメだからな。今日は特別だからな」

「今日はいいの?」

「今日は怪力ねーちやんがいるからな」

 よーし。

 アンタ、喧嘩うってるね?

「森の近くの果物や薬草はよく育っていて美味しいんです。昨日もククの実を採りに行ってたんです。今日は沢山採れそうな気がします」

「森の恩恵を受けてるから、ウマイんだよな~獅子王サマサマだよ」

 なんだか、二人楽しそうだね。

 イイヨイイヨ。

 怪力ねーちゃんで。

 

 村から果てない森までは、ミーナちゃんたちの足で、歩いて1時間足らずの距離だ。

 鬱蒼とした大きな森に近づいて行く。

 おぉ。この森この森。

 アンタたち立派な使命を持った森だったんだね。

 確かに、周りにも草花や木の実が繁っているね。

 昨日は森から出られた喜び満載で、全く気がつかなかったよ。

 「ふんわりテレパシー」

 気配は何も感じないが、念のためサーチをかけておく。

 やはり、データーは何も入ってこない。


「これが、ククの実」

 ジュウが椰子の木のような枝を揺らす。

 ポロポロと、ククの実が落下する。

 これは昨夜と今朝のスープに入れたね。

 ジューシーな瓜みたいで美味しかった。

 シロが真似して、下から枝に飛び付く。

 ぶら下がって、ククの実を落とす。

「上手いぞ、シロ!」

「へへへ」

 誉められて、シロは得意そうだ。


「この茎が、食べられるし、お薬にもなるんです」

 ミーナちゃんが手にしてるのは、アロエだった。

 胃腸にも美容にも良いこの一品。

 よく見ると、草に紛れてシソやミントっぽいのもある。

 これは料理に使えるぞ。

 お茶にしても美味しいし。

 楽しくなってきたぞ。

 私も夢中で収穫を始めた。


「ククの実以外にもうまそうな果実あるんだ。一回食べてみたいんだよな」

 ジュウが、毬栗のような実を睨んでいる。

「あの中には美味しい実が入ってる気がするんだ。でも棘が生えてるし動くからキケンなんだ」

 え?棘まで動くの?

 ウニみたいだね。


「まだ知らないことがあるなんて、凄い森だね。アジ婆さんでも知らないことあるのかな?森が生きてるみたいな事言ってたよね」

「……森は生きてる。それにオレたちはここに来てまだ5年だから。知らないこともイッパイある」

「え?移住してこの村に来たの?」

「……ここはアジ婆ちゃんや、オレたちで作った村だ」


 いまいち理解していない私に、ミーナちゃんが説明をしてくれる。


「モモさん。私たちはホホロ国からやって来たんです。アステリア国と、戦争があって。私たちの国は負けてしまったんです。お母さんはその時に……教会が焼かれているのを手助けに行って、亡くなりました。私は小さくてあまり覚えてないんだけど。……怖かった。アジ婆ちゃんが宮廷魔力者で、お父さんもセナおじさんもヨミさんも、そこで働いてた。敗戦が決まって街中が混乱して暴動が始まった時に、アジ婆さんが、果てない森の近くに行こうって。あそこなら逃れられるかも知れないって……そっちの方が安全だからって……みんなで…」


 ミーナちゃんは思い出しているんだろう。

 涙目になって言葉がつまってきた。


「オレたちは、馬車の荷台に乗せられて、ここまでたどり着いたんだ。獣人や、妖樹がいるからそれが隠れ蓑になるって。アジ婆ちゃんが怖いのは人間だって言ってた。森の前にお供えして、獅子王様に、この森の近くに住まわせて頂きますって、みんなでお祈りに行ったんだ。そしたら森から獅子王様の声が聞こえて、『森には入るな。森の者にもに手出しはしないように伝えておく』って、言ってくれたんだ。それからここに住んでるんだ」

 

 まだ10や11くらいの、年端もいかない少年少女の身の上に、そんな過酷なことがあったの?

 突然の村の成り立ちの告白に、私は絶句するしかなかった。

 戦争とか焼かれるとか、出てくる単語が衝撃的過ぎて、ただ打ちのめされていた。

 イイ人ばかりの長閑な村だと思っていた。

 戦火を生きてきた人達には見えなかった。

「た、大変だったね」

 ありきたりな言葉しか出てこない自分が憎いよ。

 俯いて長い睫毛を震わせているミーナちゃんに私がしてあげられることは……。

 コトは……。

 あった!あるよ!


「ミーナちゃん。ジュウ。シロもちょっと待ってね。今、甘くて美味しいの出してあげる。コンビニーズ!」

 久々に、そのフレーズを叫ぶ。


 はい!ドロリンパ。

 コンビニエンスご登場です。

 茫然としている二人に声をかける。

「ほら、入ろう。中に色々あるから」

「ヤッター!ボク、ミルク飲みたいよー」

 シロが店内に突入して行く。

 促されて入ろうとしたミーナちゃんとジュウが弾き飛ばされる。

 中に足を踏み入れ様とすると、弾き飛ばされる。

 え?どうしたコンビニーズ。


「入れません」

 悲しそうな声でミーナちゃんが言う。

 もしや、私と繋がってないとダメ?

 優しい声さんが認めた人しか入れないの?

 シロが入れるって事は、そういうこと?

 こんな時に融通の利かない事しないでよ~。

 空気読んでよコンビニーズ!


「そのー、これはー、私のいた世界ではポピュラーで……商店?そう、何でも屋さんみたいなお店なの」

「モモの魔力で出したのか?」

「そうなの。所謂、オリジナル魔力?みたいな。中にあるもの取ってくるから待っててね」

 ミーナちゃんとジュウに手を振って店内に入ると、シロが焦れたように待ち構えていた。


「モモちゃんおそーいーっ」 

 プンプンと、かわいい怒り顔をつくる。

「ゴメンゴメン。シロは牛乳とアメリカンドックだよね」

 先にシロの食べ物を用意する。

 ナイロンの袋に、思い付いたモノをどんどん入れていく。

 みんなの生活が乱されるようなモノを、闇雲には入れない。

 それは注意しよう。

 ミーナちゃんとジュウに食べさせてあげたい甘いものと……脂っこいものも食べたいな。

 大福、シュークリームにアメリカンドック、フライドチキン、イチゴ飴、コーヒー牛乳とおにぎりも。

 私に必要な下着にTシャツ、靴下の着替え類とタオル。

 あ……ライター。

 ライターがあれば、村の人たちが助かる。

 ちょっと考えて、あるだけの在庫を袋に入れた。

 二袋パンパンになったのを抱えて出ようとして、引き返す。

 トイレに行っておこう。

 ここの世界、トイレは原始的なんです。

 スッキリして、手も顔も洗って、二人の前に戻った。

 お待たせしました。

 さぁ、甘いモノを食べて元気を出そう!

 私はいつもそうだよ。

 コンビニスイーツをモリモリ食べて明日に備えてたよ。

 

 まだ鳩が豆鉄砲顔の二人の前に、アメリカンドックを差し出す。

「先ず、これを食べよう。シロの好物だからね~シロ」

「おいしいの~大好きなの~」 

「ほらほら。食べなよ。ネ。ネ。」

 

 アメリカンドックを見つめていたジュウが一気にかぶり付く。

「ウマイ……ミーナも食えよ」

 ミーナちゃんもパクリと食べる。

「……おいしい」


 二人の周りを、シロが元気に駆けていた。


 

読んで頂いてありがとう御座います。今回は話を区切りたくなかったので、少し長くなってしまいました。

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