元気の源
翌日、ミーナちゃんとジュウとシロと一緒に、ククの実と薬草を取りに出掛けた。
「果てない森から住人が出て来るのはおかしい。俺たちとは住みわけてるはずなんだよ。危険だから、森には近づかないように!」
髭もじゃタダノさんが念押ししているのに、妙に呑気な声でジュウが言う。
「ミーナはこれからは、一人で森に近づいたらダメだからな。今日は特別だからな」
「今日はいいの?」
「今日は怪力ねーちやんがいるからな」
よーし。
アンタ、喧嘩うってるね?
「森の近くの果物や薬草はよく育っていて美味しいんです。昨日もククの実を採りに行ってたんです。今日は沢山採れそうな気がします」
「森の恩恵を受けてるから、ウマイんだよな~獅子王サマサマだよ」
なんだか、二人楽しそうだね。
イイヨイイヨ。
怪力ねーちゃんで。
村から果てない森までは、ミーナちゃんたちの足で、歩いて1時間足らずの距離だ。
鬱蒼とした大きな森に近づいて行く。
おぉ。この森この森。
アンタたち立派な使命を持った森だったんだね。
確かに、周りにも草花や木の実が繁っているね。
昨日は森から出られた喜び満載で、全く気がつかなかったよ。
「ふんわりテレパシー」
気配は何も感じないが、念のためサーチをかけておく。
やはり、データーは何も入ってこない。
「これが、ククの実」
ジュウが椰子の木のような枝を揺らす。
ポロポロと、ククの実が落下する。
これは昨夜と今朝のスープに入れたね。
ジューシーな瓜みたいで美味しかった。
シロが真似して、下から枝に飛び付く。
ぶら下がって、ククの実を落とす。
「上手いぞ、シロ!」
「へへへ」
誉められて、シロは得意そうだ。
「この茎が、食べられるし、お薬にもなるんです」
ミーナちゃんが手にしてるのは、アロエだった。
胃腸にも美容にも良いこの一品。
よく見ると、草に紛れてシソやミントっぽいのもある。
これは料理に使えるぞ。
お茶にしても美味しいし。
楽しくなってきたぞ。
私も夢中で収穫を始めた。
「ククの実以外にもうまそうな果実あるんだ。一回食べてみたいんだよな」
ジュウが、毬栗のような実を睨んでいる。
「あの中には美味しい実が入ってる気がするんだ。でも棘が生えてるし動くからキケンなんだ」
え?棘まで動くの?
ウニみたいだね。
「まだ知らないことがあるなんて、凄い森だね。アジ婆さんでも知らないことあるのかな?森が生きてるみたいな事言ってたよね」
「……森は生きてる。それにオレたちはここに来てまだ5年だから。知らないこともイッパイある」
「え?移住してこの村に来たの?」
「……ここはアジ婆ちゃんや、オレたちで作った村だ」
いまいち理解していない私に、ミーナちゃんが説明をしてくれる。
「モモさん。私たちはホホロ国からやって来たんです。アステリア国と、戦争があって。私たちの国は負けてしまったんです。お母さんはその時に……教会が焼かれているのを手助けに行って、亡くなりました。私は小さくてあまり覚えてないんだけど。……怖かった。アジ婆ちゃんが宮廷魔力者で、お父さんもセナおじさんもヨミさんも、そこで働いてた。敗戦が決まって街中が混乱して暴動が始まった時に、アジ婆さんが、果てない森の近くに行こうって。あそこなら逃れられるかも知れないって……そっちの方が安全だからって……みんなで…」
ミーナちゃんは思い出しているんだろう。
涙目になって言葉がつまってきた。
「オレたちは、馬車の荷台に乗せられて、ここまでたどり着いたんだ。獣人や、妖樹がいるからそれが隠れ蓑になるって。アジ婆ちゃんが怖いのは人間だって言ってた。森の前にお供えして、獅子王様に、この森の近くに住まわせて頂きますって、みんなでお祈りに行ったんだ。そしたら森から獅子王様の声が聞こえて、『森には入るな。森の者にもに手出しはしないように伝えておく』って、言ってくれたんだ。それからここに住んでるんだ」
まだ10や11くらいの、年端もいかない少年少女の身の上に、そんな過酷なことがあったの?
突然の村の成り立ちの告白に、私は絶句するしかなかった。
戦争とか焼かれるとか、出てくる単語が衝撃的過ぎて、ただ打ちのめされていた。
イイ人ばかりの長閑な村だと思っていた。
戦火を生きてきた人達には見えなかった。
「た、大変だったね」
ありきたりな言葉しか出てこない自分が憎いよ。
俯いて長い睫毛を震わせているミーナちゃんに私がしてあげられることは……。
コトは……。
あった!あるよ!
「ミーナちゃん。ジュウ。シロもちょっと待ってね。今、甘くて美味しいの出してあげる。コンビニーズ!」
久々に、そのフレーズを叫ぶ。
はい!ドロリンパ。
コンビニエンスご登場です。
茫然としている二人に声をかける。
「ほら、入ろう。中に色々あるから」
「ヤッター!ボク、ミルク飲みたいよー」
シロが店内に突入して行く。
促されて入ろうとしたミーナちゃんとジュウが弾き飛ばされる。
中に足を踏み入れ様とすると、弾き飛ばされる。
え?どうしたコンビニーズ。
「入れません」
悲しそうな声でミーナちゃんが言う。
もしや、私と繋がってないとダメ?
優しい声さんが認めた人しか入れないの?
シロが入れるって事は、そういうこと?
こんな時に融通の利かない事しないでよ~。
空気読んでよコンビニーズ!
「そのー、これはー、私のいた世界ではポピュラーで……商店?そう、何でも屋さんみたいなお店なの」
「モモの魔力で出したのか?」
「そうなの。所謂、オリジナル魔力?みたいな。中にあるもの取ってくるから待っててね」
ミーナちゃんとジュウに手を振って店内に入ると、シロが焦れたように待ち構えていた。
「モモちゃんおそーいーっ」
プンプンと、かわいい怒り顔をつくる。
「ゴメンゴメン。シロは牛乳とアメリカンドックだよね」
先にシロの食べ物を用意する。
ナイロンの袋に、思い付いたモノをどんどん入れていく。
みんなの生活が乱されるようなモノを、闇雲には入れない。
それは注意しよう。
ミーナちゃんとジュウに食べさせてあげたい甘いものと……脂っこいものも食べたいな。
大福、シュークリームにアメリカンドック、フライドチキン、イチゴ飴、コーヒー牛乳とおにぎりも。
私に必要な下着にTシャツ、靴下の着替え類とタオル。
あ……ライター。
ライターがあれば、村の人たちが助かる。
ちょっと考えて、あるだけの在庫を袋に入れた。
二袋パンパンになったのを抱えて出ようとして、引き返す。
トイレに行っておこう。
ここの世界、トイレは原始的なんです。
スッキリして、手も顔も洗って、二人の前に戻った。
お待たせしました。
さぁ、甘いモノを食べて元気を出そう!
私はいつもそうだよ。
コンビニスイーツをモリモリ食べて明日に備えてたよ。
まだ鳩が豆鉄砲顔の二人の前に、アメリカンドックを差し出す。
「先ず、これを食べよう。シロの好物だからね~シロ」
「おいしいの~大好きなの~」
「ほらほら。食べなよ。ネ。ネ。」
アメリカンドックを見つめていたジュウが一気にかぶり付く。
「ウマイ……ミーナも食えよ」
ミーナちゃんもパクリと食べる。
「……おいしい」
二人の周りを、シロが元気に駆けていた。
読んで頂いてありがとう御座います。今回は話を区切りたくなかったので、少し長くなってしまいました。




