敗北とあたたかさと。
男女に分かれた公衆浴場は、簡素な作りなまでも、十分に清潔に体を温める要素を満たしていた。
お風呂場に立ち込もる湯気の中では、ジュウのお母さんであるヨウウさんに、圧巻されていた。
コレハ、完全なる敗北。
敗者は多くは語らぬモノだよ……。
ク~ッ。
ナイスバディ過ぎるよ、ヨウウさん。
ボンキュッボンだよ。
明らかに手のひらに余るサイズだよ。
そんな空しさを噛み締めている私に、ぷるるんヨウウさんが話しかけてくる。
「モモちゃんは10代よね。一人で旅をしているの?」
「はぁ。一応16です。旅のお供はシロとです」
一応なの?
可笑しそうにヨウウさんが笑う。
「ボクがモモちゃんのお供をしてるの。すご~く仲良しなの。モモちゃんは優しいの」
シロの力説にミーナちゃんがウンウン頷いている。
「ふふ。ジュウも言ってたわ。"変わったヤツだけど、いいヤツっぽいから母さんの洋服をモモにやってくれ"って」
あのガキ~。
でもまぁ、許す。
口添えしてくれたんだもんね。
「あの子乱暴なところあるけど、モモさんに懐いてるみたい。ジュウとも仲良くしてね。あ、勿論わたしとも」
「こ、こちらこそ」
湯船に浸かりながら、ペコペコと頭を下げる。
たっぷり温まって、ククの実の皮で体も磨いた私は、ヨウウさんが用意してくれた、茶色のワンピースに着替える。
予備にも二着頂いた。
シンプルな下着もある。
靴はミーナちゃんとお揃いの皮編み型のサンダルだ。
あぁ。やっと人心地ついた気分だ。
ブルブルと体を震わせて水気を弾いていたシロを、厚手の布でごしごしと拭く。
手拭いに似てるかな。
タオルのような素材は、無いのかもしれない。
「帰ってご飯にしませんか?」
ミーナちゃんの提案に一も二も無く頷く。
「ゴハン。ゴハン~」
シロがはしゃぐ。
女湯の建物の前で、ジュウが待っていた。
「オレも今日はミーナの家で食べる」
「そう?ミーナちゃん大丈夫かしら?」
「はい。にぎやかで嬉しいです」
ヨウウさんにお礼を言って、ミーナちゃんの家に戻る。
「お風呂。想像以上に良かったよ」
「ダイさんが造成の魔力で作ってくれたんです。アジ婆ちゃんの水魔力もあるから助かっています。火の魔力を使える人がいたらいいのですが……」
「ミーナちゃんは魔力は無いの?」
「フツーは、ねぇよ。この村でも魔力持ちは、アジ婆ちゃんの一家だけだぜ。大体魔力は伝承されるんだ」
「そうなんだ」
「だから、力持ちの魔力でも卑下することないぜ。魔力持ちはそれだけで凄いんだ」
どうやら私は、慰められているようだ。
それにしても……。
「あんた、ワルガキかと思ったけど、いいヤツだね。ありがとう」
ジュウに笑ってお礼を言うと。
「バカ!そんなんじゃねーよ」
耳まで赤くして怒られた。
どんなんじゃねーんだろう?
難しい年頃だ。
ミーナちゃんと一緒に作った、ククの実とキノコのスープと蒸かし芋。
ヨウウさんが差し入れてくれた鶏肉の丸焼きが食卓に並ぶ。
「これは、御馳走だな」
「ウマソ~。食べるぞ~」
「シロも食べるの」
みんなで囲んだ夕食は、美味しくて楽しくて、お腹がはち切れるほど食べた。
その夜はミーナちゃんと同じベットで、一緒に眠った。
「モモさん。明日はククの実と薬草を取りに行きましょうね」
ククの実は、皮は擦れば垢がとれる石鹸代わりに、その実はホクホクと美味く頂ける万能選手だ。
「りょーかい」
約束をしながら二人で眠った。
今夜はぐっすり眠れそうだ。
あ。足下には、シロもいた。
忘れてたわけじゃないからね、シロ。




