タタ村の人たち
さぁ、いざタタ村入村へ!
とは、いかなかった。
私は今、槍を突きつけられている。
ヤリですよヤり。
穂先の長い槍ですよ。
刺されたら痛いでしょ。
キャー。
その槍を両手で握って構えているのは、幼い少年だ。
私をキッと睨んでいる。
「やめてよ!ジュウ」
「ミーナを離せ!怪しいヤツめ!」
いや。ミーナちゃんを捕まえてはいないからね。
確かに怪しい姿ではあるけどね。
タオルマントの下は、Tシャツにウサギ柄のパジャマ姿で、タオルをぐるぐる足に巻き付けている女。
それが私、スズキモモだ!
ハッハッハッハッハー。
「ひどいよジュウ。モモさんは、なめくじ男から助けてくれたんだよー」
「ミーナ、なめくじ男に襲われたのか?毒は大丈夫なのか?」
ジュウが慌てる。
え?あのなめくじ、そんな危険生物だったの?
「モモさんがいないと危なかったよ。膝のケガもモモさんが治療してくれたんだよ。それなのに……ひどいよジュウ!」
ミーナちゃんの剣幕に、ようやくジュウ少年が、槍を持った手を下げてくれた。
「まぁ。塩があって良かったよ」
「え?モモさんが投げつけたのは塩だったんですか?なめくじ男は耐性があるから、ふつうの塩は効きませんよ。魔法の塩なんですか?モモさんは、魔力者なんですか?」
え?なめくじ男には塩は効かないの?
でも溶けてたじゃない。
デレデレ~ンって。
「妖犬を連れてるし。やっぱりモモさんは、魔力者なんですか?」
「オマエ魔力者なのか?本当に魔力者なら、その力を見せてみろ!」
上から目線でジュウが言う。
ボウズ。年上に対する尊敬の念がミクロも感じられないぞ。
「どうしたんだ」
「ジュウ、ミーナ。その人は誰だ」
騒ぎをききつけて、村人たちが集まってきた。
「こいつ、怪しいヤツなんだ!」
「怪しくないもん。ミーナを助けてくれたスゴイ魔力者様だもん」
う~ん。ミーナちゃん、ハードルあげないでね。
「ミーナを助けてくれた礼を言う。私はミーナの父親のタダノだ」
村人の中から出てきた髭もじゃ大男が、頭を下げる。
「私はスズキモモと言います。シロと一緒に旅をしている途中です」
「シロです。ヨロシクね」
シロが尻尾をフリフリ愛想をふりまく。
いいぞ!シロ。もっとやれ。
「喋る犬だ」
「小さいが妖犬か?」
村人たちが、ざわつき始める。
「魔力者だとお見受けする。よければどんな力か教えてもらえるか?この村で魔力者は貴重なんだ」
魔力ねぇ……。
果たして私の面白力が、魔力なんだろうか?
コンビニーズは、説明するのが難しいし、何よりこの村にはそぐわない気がする。
テレパシーと体力強化と……。
「力持ち?」
あえて披露するなら、怪力娘かな。
「力持ち?そんな魔力あるのかよ」
「なんじや、それは?」
明らかに落胆したような村人たち。
私は小屋の近くに積まれている石の山に近づく。
「ムキムキ怪力娘ーっ」
叫びながら髭もじゃ大男さんの体重くらいはあろう石を、まずは重量上げの手順で頭上に持ち上げる。
「うぉーっ!」
叫びながら、それをはるか東の空の彼方へ砲丸投げする。
おぉ~。飛んでいったねぇ。
た・ま・やぁ~。
「……」
ギャラリーは静まり返っていた。
「アジばぁさんの所へ連れていこう。アジばぁさんも魔力者だ」
「そうだな、魔力はともかく。旅人がいるというのは、我々にも希望になる」
ともかくかよっ。
「アジ婆ちゃんの所へ案内しますね」
ミーナちゃんがニコッと笑って私の手をとる。
「オマエ、スゲー力持ちだな」
ジュウも横に並んで着いてくる。
「私の名前はモモ!モ・モ、わかる?」
「わかってるよ。モモとシロだろ」
どうやら、私は槍使いの少年にも入村を認められたようだ。




