4つの力の理由。
シロと私は、湖から先へ進んでもまだ森の中にいた。
結構な距離は歩いたと思う。
シロのちびっこいおみ足では、一日中歩くことは出来ず、シロが疲れたらリュックに入れて背負っている。
シロを背負っている時は、私もフルパワーで走ることができる。
「モモちゃんースゴイよ。速いよ。ボク風になったみたい」
ピョコッとリュックから顔を出しているシロが、感じる風の速さに驚いて背中で興奮している。
「シロ、窮屈じゃない?大丈夫?」
「モモちゃんがフワフワの入れてくれたから大丈夫」
ふふ。
コットン在庫を一杯使って、毛羽立たせてタオルでくるんだんだよ。
クッション代わりになって、良かったよ。
その日の夜、久しぶりに優しい声が聞こえてきた。
『モモ……。貴女はシロと旅に出るんですね』
待ってたよ~声さん。
眠いけど眠っちゃダメだ、私。
「聞きたい事が沢山ありますー。まず、ここは何処なんですか?私は何をしてるんですか?ここは地球なんですか?私、変な力が使えるんです……。私はー」
『待って、モモ。一度には答えられないわ。モモは今、地球ではない世界、ウエスリア大陸にいるのよ。今いる場所は、果てない森の中』
「果てない森?何ですか、そんな恐ろし気なところ。私はどうしたらいいんですか?」
『モモなら、抜け出す事は出来るわ。その力を授けているもの。貴女には、ウエスリア大陸でやってもらいたい事があるの』
「私は何も出来ませんよ?精々、電卓叩いて、前年度と予算を達成出来るように、ハッパを掛けるのが関の山ですよー」
『ふふ。貴女のことは、ずっと見ていたわ。沢山の荷物に囲まれて、「私にもっと力があれば……」ってため息をついていたわね』
それはッ……イベント時の化粧品の品出しが大量で……。
ハッ!
もしやそれが、怪力娘の発端?
『一日中立ちっぱなしで、バテバテな貴女が「もっと体力があったなら……」って、嘆いていたわね』
そ、それが、体力バカーの……。
『メンバーに出した指示に、行き違いがあって「私に気持ちを察知する力があれば」って……』
解りました、解りましたとも。
了解です!
『貴女は残業の日は、いつもお気に入りのコンビニで、「今日も残ってたー。幸せだー」って、お弁当を抱えて……』
キャー!
もういいですぅ。
許してください~。
ふぅ~。
あの不思議能力に、こんなからくりがあったとは……。
確かに、その時の私には理想の力だよ。
今も役立ってるんだけどね。
でも、こんな力を私に与えてまで、何故私をこの世界に?
『沢山の人にメッセージを送ったわ。私の声に一番素直に反応してくれたのが、モモだったの』
そうなんですか……。でも。
「日本に帰れなさそうですね」
『どうしても、貴女が必要なの。このまま旅を続けて。私はその手助けをするわ』
……。
『お願い。この大陸は今、大変な事になっているの。貴女の力が必要なの。シロにも貴方を助けられるように、スキルを与えておくわね。また呼び掛けるわ答えてね』
「まだ行かないで下さいー。私、一人暮らしだけど、そろそろ親も心配すると思います。会社も無断欠勤して迷惑かけてるし。販促会議も私のプレゼンだったのに……」
『モモ……。私は貴女に謝らないといけないのね。私は、貴女がいない世界を残してきました』
いない世界?
私が、いない世界?
「そ、それって、私が存在しなかった事になってるんですか!」
『誰も悲しまない。一番良い方法だと思ったのですが。間違いだったようですね。私は、貴女に失礼な事をしてしまいました。申し訳ありません。モモ、許してくれますか?』
「そんなこと!今は答えられません。何て言っていいのか」
『貴女を巻き込んでしまった事は後悔してません。貴女が必要だ…か…ら……モ…モ…』
声がどんどん遠くなる。
「待ってー。まだ聞きたい事が、あなたは誰なんですか?声さーん」
何も聞こえなくなってしまった。
勝手だよ、声さん。




