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弟が兄の死を知る話。

7月6日の夕方6時半。

新橋で働いているせいか、新橋駅は人が多い。同じ帰り道なのだろう。みな家路を急いでいるように見える。

そんな中久しぶりに定時で上がった俺は、一人で酒でも飲んで帰ろうとしていた。

友人にも声をかけてみたが、みな忙しいとのこと。

一人で飲む覚悟だったが、俺は気まぐれに兄さんの携帯にかけた。


携帯の無機質なコールが繰り返される。

少しかかったが、兄さんは電話に出てくれた。


「やぁ兄さん。仕事が早く終わったんだけど、久しぶりに外で飲まないか?俺がおごるから」


そういうと兄は、少し急いだような声で言った。


『ごめん陽二。俺、これから彼女に会いに行くんだ』

「彼女?嘘、兄さんそんなこと一言も言ってなかったじゃないか。しかもこれから会いに行くってどういう」

『今飛行機の中。もうじき離陸する。3日間で戻ってくるから。その後詳しく話す』

「え、ちょっと兄さん――」


突然の宣言を聞いて、俺は問い詰めようとしたのだが電話は切られた。


「何だよ、兄さん。大事なことじゃないか。なんで黙ってたんだ」


俺はその日、自宅で自棄酒を飲んだ。

勝手にしてしまえと兄さんにも連絡しなかった。


そうして1週間。

兄さんは変わり果てた姿で帰ってきた。



警察に呼ばれ、まず尋問。兄さんは殺された可能性でもあるのか尋問された。


「7月7日の14時。あなたはどこで何をしていましたか?」

「新橋のビルで仕事をしていました」

「すいませんが会社名と住所を……」


会社の住所は覚えていなかったので、名刺を渡すと。

すいません、形式的なものですからといわれた。

ただただ呆然としていると一人の刑事が近づいてきた。名刺を交換すると、


『丁島警察署 強行犯係 城島健二』


という名刺を渡された。

そして、兄さんが亡くなったのはこの隣島の川だということを教えてくれた。


「携帯の着信履歴を見ると、最後の着信はあなたですね。お兄さんに何か変わった様子は?」


そう聴かれて、あのときのことはよく覚えていたから素直に話した。


「彼女に会いに行くって……」

「そうですか。その彼女のことは何か知っていますか?」

「いいえ、突然言われたので。俺もさっぱりわからないんです」


そういうと、城島さんは部下に声をかけられた。


『殺しですかね』

『まだわからんぞ』


「兄さん、殺されたんですか?」


その囁きを聞いてしまった俺は、ついそう口に出してしまっていた。

すると、城島さんに否定される。


「今は事故と殺人の両面で調べていますので」


冷静な一言は俺の心をヒヤッとさせた。

しばらくの質問のやり取りが終わった後、やっと兄さんに会えることになった。


霊安室であった兄さんは本当に変わり果てた姿だった。


最初俺は霊安室で涙も出ず、ただ呆然としていた。

すがりつくこともできず、ただ。


「兄さん、何があったんだよ……」


呆然とその言葉が口をついて出てから、やっと涙が出てきた。

ぼたぼたと零れ落ちる涙。

俺は兄さんの痛いに覆いかぶさって、泣いた。


匂いも何も気にならなかった。


だって俺はたった一人になったのだから。

この世でたった一人になったのだから。



俺は兄さんが検死に運ばれるまでずっと泣いていた。


初めて書いた推理小説です。拙いですが読んでもらえれば幸いです。

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