プロローグ
「突然だが重大発表、転校だ」
夏休みがまだ始まってばかりの7月30日の晩
織草古都(おりくさこと)は父親がさらりと言い放った一言に耳を傾けなかった
それは夕食の真っ最中―古都が豚丼をおかわりするために席を立った時だった
「重大でもねえよ、もう五回目だぞ。どんだけ転職すんだよ親父」
ため息と共に口から出たのは怠慢(たいまん)に溢れた言葉だった
「反応薄いな、重大って言っただろ、今までは言ってなかっただろ」
「重大な話じゃ腹は満たされねーの」
こっちは食べ盛りだ。高校一年の底なし胃袋を舐めてもらっては困る
丼にご飯をよそうと、古都はまだフライパンの余熱で温かい豚肉をよそうと自分の席に戻った
「あれ?一味唐辛子はどこだ?」
古都の豚丼の親友が入った瓶がテーブルから消えていた
すると丁度反対側に座っていた親父が一味唐辛子の入った瓶をペン回しのように扱いながら得意げな顔で
「探し物はこれかー?」
嫌な笑みを向けてくる。古都はやれやれと嘆息(たんそく)して、自分の父―織草司(おりくさつかさ)を見た
いい年こいて今回で五回目になる転職の話を持ち上げてきた親父
字面だけでも結構な迷惑だ、しかも高校生のバカンスの代名詞とも呼べる夏休み中に言われると軽く殺気立つ
「はぁ、話だけでも聞いてやるから、さっさと一味の瓶返せ」
「ほらよ」
落としたら割れてしまうことを知らないのか、司はペン回しで回っている状態のままの瓶を投げてきた
「うおっと、あっぶねー」
「ナイスキャッチ」
もう突っ込む気すらなくなる
「んで、転職って何やるつもりだよ」
戻ってきた一味を豚丼に掛け終えて一口食べるところで古都は聞いた
「驚くなよ、教師だ!」
「ぶっ!」
あまりにも予想していなかった角度からの剛速球に耐えられず、口に入れていた豚丼ごと吹き出してしまった。あーあ、勿体無い
「お、親父が教師?嘘だろ」
と呆れたように古都が言うが司は
「いやいや、マジマジ」
ニヤッと笑いながら答えながら横にあったティッシュ箱を滑らすようにこちらに寄越した
「まっ、そういうことだから、お前は俺が働くことになった神奈川の高校に転校することになる」
「親父が教える高校に転校か・・・・・」
再び怠慢に溢れた古都の言葉に司は「ああ」と短く言うと、含みのある笑みを浮かべた
そして、あっさりと、織草古都の運命を変える言葉を口にする
「そうそう、俺が教える高校に、な」
はじめして、永久高校生です
この作品を投稿している頃はもう夏休みも終わり時、だけど課題プリントはまだまだ残っている。そんな現実からどう逃げればいいか考えいたらこの小説にたどり着きました
新人中の新人なので指摘のコメも全然ウェルカムなのでよろしくお願いします