エピソード1 妄想自己紹介
まえがきです。
はじめまして、鬼灯蓮です。
まえがき終わりです。
「俺は、強敵に勝つために努力し、友情に支えられつつ、最後には勝利してみせる」
俺は勢いよく立ち上がり、ガッツポーズをしながら、声を張り上げて言った。周りの人はみな、いきなりの俺の声にびっくりして作業をやめ、俺を目する。その中、ただ一人が俺の言葉に反応して話しかけてくる。
「そんな言葉、あんたが使うといろいろ不自然なんですけど」
「いや、きっと俺が生まれる時代を間違えただけだ。もしくはこれから敵が宇宙からやってきて、そして俺が実は星に選ばれた戦士で、その敵と戦うはずなのだ」
「あんたねぇ……」
そこまでいくと、俺たち二人以外のみんなは興味がなくなったかのように元の作業に戻っていった。俺はそれを確認すると、席に座り目の前の少女に言う。
「なんだよ、ユキ。俺がどんな妄想しても俺の勝手だろ」
そう、妄想なのである。「努力」「友情」「勝利」とか言う某漫画雑誌で掲げられる言葉を使おうが、敵が現れようが、俺には何の関係もないだろうし、なにより俺は戦士でもない。いや、授業中にいきなりこんなことを言う俺はある意味戦士なのかもしれない。といっても、今は自習時間で先生はいないがな。いたら、こんなことできない程度に俺は普通である。
「たしかにあんたが妄想するのは勝手だけど、そのたびにその変な顔をしたり、大声で叫ばれたりされると、彼女としてあたしは恥ずかしいわ」
「なんだよ、それぐらいで。 ……変な顔って」
「なによ、文句あるのかしら」
「いえ、なにも」
ユキの冷淡な表情で睨みつけられた途端、俺は口出しできなくなってしまった――
彼女の握りこぶしが目に映ったからだ。
「なんで、あんたみたいなや――」
そろそろ、読者は俺について知りたくなってきたことだろう。俺の名前は工藤帝だ。どうよ、この神に選ばれて生まれてきたかのような名前は、
『ドンッ』
大きな音が教室内で鳴る。周りのクラスメイトもびっくりしたのか、また作業をやめて顔を上げていた。俺はその目を辿って、音の元を探した。
「――あんた、あたしが話をしているのに、別のこと考えていたでしょ」
音の元をたどると、ユキがまたきつい目つきで睨んでいた。どうやら俺が別のことを考えていたことに怒っているらしい。
「なぜ俺の考えていることがわかった。まさか、読心術」
するとユキは呆れたような顔で、
「そんなわけないでしょ。あたしがあんたと、どれだけ付き合っていると思っているのよ」
どうやらそういうことらしい。にしても、女っていうのはすごいな。なんでもお見通しらしい。
「まぁいいわ。このことは今度言うとして。どうせあんた、変な妄想していたなら、もう課題終わっているでしょ。あたしまだだから、見せてよ」
「あ、ああ。開始十分で終わらせたからな。見たけりゃ、ほらよ」
俺はすでに終わった課題のプリントをユキに渡した。ついでに今の時間は授業が開始して三十分経過している。
「ほんと、なんでそんなに頭いいのに中身はこんなに残念なのよ」
ユキが何やらぶつぶつと呟いているが、気にしない。俺のことを言ってそうだが、こういうのにわざわざ反応するほど俺は暇じゃないのだ。俺の日課は妄想に始まり、途中壁を排除して、妄想に終わる。それにユキは言いたいことはハッキリと言うタイプだ。こうぶつぶつ言っていることには反応しなくても大丈夫だということくらい俺でもわかる。
ところで、俺についての自己紹介はまだだったな。といってもほとんど終わっているんだが、どうしても伝えておきたいことがある。それは、俺は日課の妄想のためなら全力になれるということだ。先ほど述べたように課題が出たら、それを早く終わらせてあとは妄想に時間をつぎ込むというくらい徹底している。つまり、
「つまり、俺の妄想を止めることは誰にもできないのだよ」
思わず出てしまった俺の声が教室に響き渡る。今回はそれほど大声ではなかったが、それでも多くのクラスメイトが声の発生源である俺を見る。目の前ではユキが俺を見ていた。
「あんた、頭で考えていることを口に出すのをやめなさい。その度に周りがびっくりするでしょ」
「おおう、すまん」
どうやら予想以上に周りに迷惑をかけていたらしい。しかし、声が出てしまうのはどうしようもないのだ。これはテンションの問題で、想像力が尽きることなく次々と俺の元にやってくるのだから。
「さっきからいったい、誰と会話しているのよ」
「あれ、また声が出ていたか。これはまぁ、読者にだなぁ」
「読者って誰よ。なんか知らないけど、声がぼそぼそと聞こえてくるのよ。課題が終わったからって、まだ終わってない人だっているのだから、ちょっとくらい静かにしていて」
「お、おおう」
どうやらユキが迷惑だというのでテンションが上がらない程度に話すことにしよう。
「それでいいのよ。それじゃ、あたしはあんたの答え写すのに戻るから」
うん。やっぱり、ユキには言われたくなかった。しかしこのクラスで俺の面倒事は、全部ユキの元にやってくる。これは俺とユキが恋人同士ということもあるのであろう。
付き合い始めたのは一年半前からで、最初の方はこそこそと付き合っていたが、あることをきっかけに学校公認のカップルにまでされてしまった。俺はこそこそと付き合う必要はないと言ったのだが、ユキのほうが公にしたくなかったらしい。でも、ある時期にばれてしまい。同級生どころか先輩や後輩にまで知られてしまい、気づいたら学校全体で知られるという事態になった。隠し事はよくないということだな。
さて、ユキのことを少し話していたら自分のことをどこまで話したか、わからなくなってしまった。まぁ、気づいたときに俺のことは教えるとして、俺は少し妄想とかが多いどこにでもいる高校二年生である。あ、高校二年生っていうのは初めてか。
「はい、あんたのプリント」
ユキが俺のプリントを返してきた。時計を見ると、もうすぐ授業が始まってから五十分が経とうとしていた。授業終了のチャイムが、いまかいまかと待ちわびていた。
『ガラガラガラ』
教室の扉が開く音と同時に自習時間にした張本人の先生が帰ってきた。
「それじゃ、もう終わるから集めて持ってくるように」
先生の指示通り、プリントを集めて先生のもとに課題のプリントが集められていく。
「ふぅ、終わった。これで今日は帰れるわね」
ユキが今日一日お疲れ様みたいな顔で話しかけてきた。たしかに、今日の授業は先ほど終わったが、
「ユキはほとんどやってないだろ」
「ギクッ」
そう、先ほどの自習も俺がプリント渡すまで、ずっと寝ていたほど今日もユキは何もやっていない。
「いいでしょ、今日の授業が終わったんだから」
ユキは荷物をまとめ始めた。周りのクラスメイトもそれぞれ帰る準備をして、それぞれ部活に向かったり、下校したりしている。
この学校には帰りのホームルームというものは存在しない。いや、昔はあったが今はなくなったというほうが正しい。だいたい、この学校は伝えることは朝伝えてしまうし、部活動が盛んであるため、部活動優先で帰りのホームルームがなくなったという理由がある。
しかし、本当の理由は違う。そのことを知る人はほんの数人しかいない。まぁ、その話はこの後に話すとしよう。今は、
「さすがは生徒会長のいうことは違うな、ユキ」
「はいはい、副会長さん。早く行くわよ」
目の前の生徒会長である大空雪という彼女が原因であるということだけ伝えておけばいいだろう。そして、俺とユキいつもの活動場所である生徒会室に向かうのであった。
自分はまだまだ ひよっこですが、名前だけでも覚えていただけたらうれしいです。
今後とも 自分が執筆できる時間を見つけて執筆しながら話を続けていこうと思っています。




