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哀悼の栞 角山山岳事件  作者: 冨町朋和
Part 1 発端
1/3

Introduction

我が信愛すべき全ての人に捧げる。

 ねぇねぇ、知ってる?

 あ、なんだ?

 だから、知ってる?

 いや、知らねぇよ。そもそも主語ないし。だいたい、お前ってこう云う話題好きだよな。俺は苦手なんだ。もう、9年の付き合いなんだ。これくらい察する事はできるだろ?

 えー、でもー。私、この話を聞くのに命賭けたんだよ!?

 お前の命は木曽川の砂の数ほどありそうだな。そもそも、俺は中学3年生だ。お前、今日は何月何日だ。

 えっと、11月28日。

 受験が近づいているだろ? 期末考査も終わったんだ。中三の俺達は受験に向けて勉強に勤しむ時期なんだ。

 ちぇ、ひどい! 私だって、最初はあんたに云ったら絶対断られると思ったもん!

 自重していて、なぜ云った?

 だって、あんたなら絶対に興味ありそうな話題だから……

 ああ、そうかい。

 って、そういや、私も中三じゃん!

 今気づいたか。

 私だって、勉強しないといけないって事?

 そうだろうな。

 もう、いい! とりあえず、話を聞いてよ!

 何かが吹っ切れたようだな。

 いいでしょ!?

 わかった。わかった。どうせ昼休みのつてはないし、図書室の本も結構読んだから、暇つぶしに聞いてやんよ。


 20年前の話よ……

 20年前、俺らが生まれる前の話か。

 そう。年号で云えば、1993年ね。

 1993年か。何があったっけな。

 『夏の日の1993』しか思い浮かばないわね。

 ああ、Classのか。その曲ならちょっと知ってるぞ。親父の影響で。

 まぁ、それはどうでもいいでしょ。で、その年にここで事件が起きたの。

 はぁ? こんな片田舎だぞ? 地名が「市町」じゃないぞ「村」だぞ? あ、まさか……

 ダム決壊事故よ。

 見当はついてた。

 そんな風に切らないでよ。あの事故は酷いわよね。

 ああ。確かどこかの集落がほぼ全滅だったよな?

 ええ。それより、あんたのほうが詳しく知ってんじゃないの?

 ばあちゃんとかから聞いた。1993年6月22日。勢いをつけた停滞前線が日本に近づいてきて、中部地方付近で停滞。俺らの村は1時間138mm雨が降るという酷さ。6月23日午前10時46分、ダム貯水率が100%を超え、ダム決壊の注意が発表。

 ほんっと、詳しいわね。

 怖くて覚えてるな、多分。6月24日午前1時37分、ダム貯水率は94%に下がるものの、再び100%に上昇。1時56分、ダム貯水率が109%。そして決壊。香田川に轟々と水が流れて確か大峰集落の人間の93.7%を死に至らしめた災害で、6月26日に沈静化。だったよな。

 ええ。問題はそこじゃなくてね。その水害が起こったちょっと前の6月14~20日に残酷な殺人事件が起きたの。

 聞いたことがない。ガセ情報じゃないのか?

 いや。新聞に載ってたわ。図書館で調べた。

 そうか。

 高校で起きたの。

 どこ高校か?

 香田高校。

 香田、か。じゃ、トイレ行ってくるわ。

 ま、まだ話は終わってないわよ!?

 トイレから戻ったら続きを聞いてやる。

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