彼とあたしと、はじめての出逢い(6)
さてさて、あれからどうなったかと言いますと、みなさん御存じのとおり、お付き合いというものをさせて頂いています。あ、勿論カップルとしてのお付き合いね。
え?そんなありきたりな返しはいらないって?いいじゃーん、だってここまでずっとお堅い語りだったでしょ?ここらではじけとかないとなんかダーリンとあたしの話じゃないみたいだし?あぁ、そろそろ話戻しまーす。
なんの話だったっけ?んー、あ、そうそう、なんというか彼ってとっても・・・・個性的って話。いえいえ、個性があるのが嫌いではないんです。そんな彼もとっても素敵。彼はとっても博識だから、あたしの知らない話をたっくさんしてくれる。例えば、
「あたし、グリム童話とか子供向けの物語って好きなの。なんかほのぼのしてていいよね」
なんて言おうものなら、
「グリム童話は子供向けの話じゃないよ?あれは大人に聞かせる最高に残虐で性的な話だよ」
なんて言うし(あ、この時のやりとりは『彼とあたしと、赤ずきん』を参照ね!)。
あぁそういえば、ある日突然、
「鉄の処女って知ってる?あれっていいよね。涎出ちゃいそう・・・」
なーんて言われた日には、意識ぶっ飛びそうだったなぁ。
ダーリンってば残虐性を含んだ話が好きみたい。特に拷問に関することは嬉々として語ってくれる。付き合い始めたころはそんな話がもちろん出てくることはなかったんだけど、どこでどう間違えたのか、気づいたら彼は鉄の処女やら呂后やらイルゼ・コッホやら、普通に暮らしてたら絶対に聞かないし話さないようなことをあたしの耳元で囁いてくる、そんな鬼畜な人にだーいへーんしーん。
もともとそういうことには興味があったみたいだけど、そんな話をあたしにしてきたのっていつからだっけ?うーん、分からない。まぁ、彼は少し(?)人とは違うし、そんな彼のことをあたしが理解しようなんて死んでも無理だろうけど(実は彼の鬼畜性を引き出したのはあたしがきっかけらしいけどあたしにはさっぱり分からない)。
まぁ、なんだ、うん。拷問話がなんだ。そんなの彼の声を聞けば嫌よ嫌よも好きのうち・・・あれ?違う。とにかく、彼の声ってば魔法のようにあたしを蕩けさせちゃうから、あたしは彼から逃れられない。とくにあたしが大嫌いで彼の大好きな拷問話をしてるときはね。
と、まぁ、彼とのあの衝撃的な出逢いはなんだったのか、幻だったのか、とでも言いたくなるようなピュアな過去の話はここでおしまい。あの頃の純粋なあたしは見る影もなく、彼に悪態をつくくらいには成長・・・衰退?してます、はい。
好きな人を目の前にしてしゃべれなくなる乙女のような頃もあったんだなぁ、なんて全くもって遠くない過去を思い出しながら憔悴してるあたし。
え?ダーリン?勿論今もあたしの背後に座って愉しそうに『お話』してますが、なにか?
「ふふ、ハニー?ちゃんと聞いてないと・・・痛いよ?」
「・・・・痛いのはやだ」
・・・・まぁ、なんだかんだでうまいことやってます。そろそろ彼の話から逃避するために始めた回想をやめないと、まじで大変なことになりそうなのでこの辺で。
『ねぇ、ハニー?』
それは始まりの合図。二人だけの秘密の呪文。
猟奇的な恋の始まりは、そっと囁く甘い声。
それは、とっても純粋でとっても狂気的な愛がたくさんつまった物語。
あなたも始めてみる?
こんな恋の物語。
さてさて、これで二人の出逢い話は終わりです。
どうでしたか。
きっと想像してたような物語ではなかったと思います。
ダーリンとハニーのことだから、出逢いからぶっとばしてほしかったという方もいらっしゃるでしょう。私も大変悩みました。しょっぱなからばんばんエグいグロいエロいの3連発をぶっぱなすダーリンも素敵すぎていいと思いました。
けれど、考えてみれば、この二人のいわゆる出逢いというものは、本当に本当にピュアなものだったと思うのです。そこから変貌していくダーリン。そしてそれに惹かれるハニー。そんな二人の物語の方がこの二人らしいと思ったのです。
というよりも実はハニーの発言によりダーリンの変態性が引き出された、という設定でのお話が先にできてしまったので、こういった流れとなりました(その話については最終話で掲載します)。
でもいつか、『もしも』の話を書きたいと思っています。
『もしも出会いがしらからダーリンがぶっとばしてたら』
きっと面白い話になるでしょう。
しょっぱなからガンガンに責めるダーリン。
考えただけでうずきます(笑)
表舞台での出逢いはこんな純愛ですが、「ダーリンとハニーの物語じゃないみたい!」「ぶっぱなしてよ」といった読者の皆様からの苦情は受け付けません(笑)どうかこれで勘弁して下さい。
最後までお読みいただき、ありがとうございました。