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彼とあたしと、鉄の処女  作者: 瑞雨
彼とあたしと、出逢いの物語
19/24

彼とあたしと、はじめての出逢い(3)


あたしが、自分の恋心をはっきりと認めてからしばらくたって、彼女を含む友人たちに、彼に恋をしてしまったことを素直に告白し、もう一度彼に会いたいと、そう言った。


彼女達はとても驚いた顔をしていて、あたしはそんな彼女達の驚いた顔がおかしくてお腹を抱えて笑ってしまった。そしてそんなあたしの姿を目にした彼女たちは更に驚いた顔をして、おどおどとうろたえた。それがまたあたしの笑いを引き起こした。


彼女たちは「ひどいなー」なんて悪態をつくけれど、その顔はとても優しい笑顔であふれていた。あたしが恋をしたことも、その相手が彼であったことも、そしていつもは一歩引いて静かに見ているだけのあたしがお腹を抱えて笑ったことも彼女たちにとっては驚愕だったことをあたしは知っている。だから彼女たちが驚いた顔をするのは想像できていたけれど、想像していた以上に彼女たちが驚くものだからあたしは可笑しくてたまらなかった。



あの日、あたしを叱咤してくれた彼女だけは事情を知っていたから、そんなあたしと一緒に楽しそうに笑っていたけれど。何やら含みのある笑みで笑いあうあたし達に彼女たちは拗ねた表情を見せた。それでも、あまりにあたし達が笑っているものだから、最後にはみんな一緒になって笑った。


箸が転んでも笑う年頃は過ぎたはずなのに、なんでもないことで笑いあえるこの瞬間がとても幸せだった。女3人集まれば姦しいなんて、そんなの目ではなくて、女5人が集まって爆笑している姿を周りの人はぎょっとしながら見て見ぬふりをしていた。それさえもあたし達は可笑しかった。



「ごめんね、言うのが遅くなって」



そう言ったあたしに彼女たちは顔を見合わせて、くすりと笑った。


「うーんとねぇ、知ってたよ?」

「うんうん」

「なーんかちょーっと変だったし?」


「・・・・・え?」



彼女たちが気づいていたことにあたしは驚きを隠せなかった。だってそんな姿一度も見せてなどいなかったのに。



「あのね、あの彼だってことは分からなかったよ?」

「恋をしてたってことも知らなかった」

「でも、あんたがなんか悩んでたのは知ってたよ」



あたしは自分で自分の感情を隠し通せていたと思っていたけれど、それはあたしの思い違いだった。



「他の人は気づいてないと思う」

「あたし達だから気が付いただけで」

「それでもあんたが恋してたなんて気づかなかったのは悔しいけど」



ねー?なんて声をそろえる彼女たちの優しさはあたしの心を温かくさせるに十分だった。



「でもね、あたし達が嬉しいの、そんな理由じゃない」


「え・・・?」


「あのね、あんたが恋をしたとか、腹抱えて爆笑してる姿とか、そういうことじゃなくて、いやそれも十分可笑しかったけれど。いやぁ、今思えばムービー撮っとくんだった!超貴重映像!!あんたを好きな男どもに高く売れる!!」


「ぎゃはははー!確かに!惜しいことをした!」


「ちょ、携帯準備するから、もっかい最初っからやり直してー!あははっ!!」



「・・・・・・」



あたしの冷めた目をみて彼女たちはゴホンとわざとらしく喉を鳴らして、生真面目な表情を作った。口元が歪んでるのは、敢えて指摘はしない。その顔こそムービーで撮ってやろうか・・・。



「あのね、あたし達が嬉しかったのは、そうじゃなくて、あんたがあたし達に相談してくれたことだよ」



彼女たちの言葉にあたしは首を傾げた。



「相談してたよ?」


「いや、うん。相談って言ってもさ、ランチどこで食べるかとかそんなレベルじゃん?じゃなくて、あんたが変になるほど頭を悩ましていることを相談してくれたのってこれがハジメテ」


「そうだっけ?」


「そうそう。あんたってあたし達の話聞くだけでさぁ、たまに相談してくることと言ったら『鳥五目丼と豚丼どっちにしよう?』とかさぁ、『レアチーズケーキとカボチャのタルトどっちにしよう?』とかさ、超どうでもいいことばっかり!」


「ていうか、食べ物の話ばっかじゃん」


「そのくせこういう大事なことは絶対人に相談しないんだから」


「ご、ごめん」



思わず謝るあたしに彼女たちは「まったくだよー」なんて笑う。あぁ、あたし、すごく彼女たちが大好きだ。



あたしの大好きなもう一人の彼女(あたしを叱ってくれた大切な親友)はあたし達の会話を静かに聞いて、笑って、喜んでくれた。


―――『良かったね』

―――『うん』



「で?どうすんの」

「決まってんじゃん?」

「じゃぁ、『偶然』会っちゃいますかー」



ぐふふ、と笑う彼女たちをこれほどまでに頼もしく、大好きだと思ったのは後にも先にもこれが最後だったと思う。


なぜなら彼女たちはこの後、恋愛初心者のあたしの相談に最初は親身に乗ってくれていたのに(面白がっていたとも言う)、彼とあたしの少しばかり(・・・)可笑しなお付きあいを目にして、匙を投げてしまい、呆れたように溜息をはいて、「あんたたちお似合いだよ」なんて褒められてんのか貶されてんのかよく分からない発言を最後にあたし達の付き合いに口を出すことをしなくなったのだから。


あたしがいくら助けを求めても彼女たちはしっしっと手で追い払ってしまう。ひどい!あたしが彼に殺されてもいいっていうのか!


(はいはい、のろけは後でねー)

(のろけじゃない・・・っ!!)





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