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親愛なるルイボスティーへ

作者: 河井 ヨメ
掲載日:2025/11/09

この手紙を読み始める前に、一つ質問させてください。


あなたの家に、**「捨てられないもの」**はありますか?

それは、恋人からの手紙かもしれません。あるいは、たった一度使った、特別な日のグラスの跡かもしれません。それは、他者から見ればただのゴミや残骸であっても、あなたにとっては過去の光を宿した聖遺物ではないでしょうか。


この書簡の主は、「ルイボスティー」という聖なる飲料の残滓、すなわちティーバッグの繊維の隙間から漏れ出た微細な粉末や、カップの底にこびりついた赤い沈殿物に、その聖性を認めました。

彼は(彼女は)、それを**「貴方の抽出されし残光」**と呼び、乾燥させ、再加熱し、そして舐めるという行為を、最も高貴な愛の儀式としていたのです。

あなたが今手にしているこの書簡は、その**儀式の「マニュアル」**かもしれません。


— あなたの記憶の共有者より

最愛の、私のルイボスティーへ。



私がこの筆を執る度、貴方の姿が目の前に現れ、私の心臓の鼓動は激しく高鳴ります。貴方が去ってからというもの、この屋敷のすべてが冷たく、色を失った魂の抜け殻のようです。


貴方と私が離れ離れになり、もう何年が経つでしょうか。


もうとっくに夏は過ぎ去り、木の葉達は若かりし頃を惜しみながら、ゆっくりと枯れてゆきます。


思えば、それは遥か幾年も前の、私の幼少の記憶に端を発します。


熱にうだる真夏の日、祖母の屋敷を訪れた私に、祖母は貴方、ルイボスティーを差し出しました。紅く、まるで禁忌の宝石のように光るその液体は、私の視線を釘付けにしました。


顔を近づければ、甘く爽やかな魂の香気が漂い、渇きの極致にあった私の口内には、堪え難いほどの甘露が湧き出たのです。「試しに飲んでみなさい」と促され、私は震える手でコップに口をつけました。


その瞬間、私の眼窩の奥に、幾重にも重なる夏のヴィジョンが見えた気がしたのです。青空のような爽快な甘さ、重厚な見た目からは想像もつかないほどすっきりとした後味。私が見た永遠の夏は、手を振る間もなく、ただ一瞬の啓示のように去っていきました。


なぜこのような神聖なる恩寵が身近に存在していたのに、もっと早く貴方に出会うことができなかったのかと、その時の痛切な後悔を、今でもはっきりと覚えています。


ああ、私の愛しき人よ。貴方との別れは、まるで魂を身体から引き剥がされるような苦悶でした。


私は今も、あのすべてが許され、私がまだ社会の期待に応えられていた頃の、輝かしき日々を反芻しています。


**あの頃、私は貴方の聖体を我が魂へと拝領し、その精髄が私の霊魂と真に融合したのです。**その一瞬の温もりこそが、私に価値があった唯一の証明でした。


しかし、貴方は、この屋敷の古き秩序、そして家族の冷たき視線に受け入れられなかった。


そして、社会で立派な役目を果たせないこの私の居場所が、貴方を手元に留めることを許さなかったのです。


貴方が傍にいてくれたなら、この現実は変わったのだろうか?


少なくとも、この世で私を優しく慰め、偽りのない魂で鼓舞してくれたのは、今も昔も貴方だけでした。


どうか、私の魂の糧である貴方を、一瞬たりとも手放さないでください。私の生命は貴方の存在によってのみ保たれているのです。


私が次に貴方にお目にかかることができる日、それは私の人生における最も幸福な日となるでしょう。その日を渇望し、私はひたすらに耐え忍びます。


どうか、貴方の抽出されし残滓を、ひと欠片たりとも残さず、私のもとに届けてください。貴方の芳香、神聖なる甘露、そして深紅の残光、それらすべてが、私の心を鎮めることができるのですから。



貴方へ絶対的な献身を捧げる、忠実なる崇拝者より


貴方への永遠の愛とともにおくる

この物語の結末は、手紙の主が、自らの渇望を成就させたという一点に集約されます。


彼は(彼女は)、ルイボスティーの抽出液の最も濃い部分、すなわち数日間放置され、微粒子が底に沈殿し、ぬめりを持ち始めた液体を、愛情の結晶として選別しました。

そして、最後の行で切望した**「ひと欠片たりとも残さず」**という願いは、彼が(彼女が)、その濃厚な沈殿物を、丁寧に集めて飲用した後、その日の便器に浮かぶ残滓さえも注視し、愛する貴方の最終的な排出を確認することで、完遂されました。

ルイボスティーの成分は、彼の体内で真に分解されず、永遠の残滓として体内に留まり続けたのです。


あなたは、この愛を「気持ち悪い」と切り捨てますか?

それとも、あなたの愛するものを、その沈殿物や残渣に至るまで、体内に残し続けるという、真の崇拝の道を選ぶでしょうか。


— 真の愛の伝道者

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