プロローグ はじまり
―世界を救う爆弾だって?
―ああ、そんな爆弾あったら誰でも欲しがるだろ。
―いいや、そんなこと証明なんてできないし、もし仮に救ったとしても気付く人間なんているのかな。
―そうだよな。やっぱり、俺のくだらない思い付きだ。忘れてくれ。
―気にするな。いつもの事だ。
なにやら朝からあわただしい。警視庁捜査一課刑事たちはジャケットを身につけ、寒空の下へ急いで行った。一課の室内には誰もいなくなった。数分前、険しい表情で出て行った彼らの中に一人だけ場違いな表情をした男がいた。彼の名はレノ。イギリスからの異例の入庁という肩書をもった人物である。髪の毛の色は赤く、ジャケットも前のボタンを留めた事がないらしく、いつも開いている。中のシャツも入れた姿を見た者などいない。どうしてそんな彼がこんなところに居るのかと言うと、理由はない、というのが本人の答えであり、知らないというのが同じ一課の口をそろえて言う答えなのだ。
殺人事件。人が人を殺すのである。とてもいいとは言い切れないが、何かの事情があって仕方なくということであれば、いくらでも罪を軽くする事が出来るというのが日本の司法制度を裏返した時の見方である。
「連続殺人、ですかね。」
「ああ、その線が強そうだな。」
河川敷に打ち上げられた女性の死体を見て、捜査一課刑事森口と太田がつぶやく。森口と太田は年も近く、捜査一課の中でも優れているという評判の刑事コンビである。長年コンビを組んできたからか、森口の呟きにはほぼ100%太田が返答する。そんな二人が
鑑識の結果、女性は絞殺されており、そのあとに川に流されたものであることが分かり、遺留品などから、女性は田口友恵、22歳独身。近くの大学に通う大学生だと決断された。
日本国中が事件事件でいっぱいだった。テレビでは殺人事件などの凶悪犯罪が放送されない日は無かったし、東京などの大都会を歩いていると、あちらこちらに警察の立ち入り禁止の黄色いテープを見る事が出来る。
その日、一課が担当した事件は河川敷の女性殺害事件だけではなかった。毒殺された疑いがある事件や旅館での強盗殺人、研究所での権力争いの末の殺人など様々な事件を一気に手掛ける事になったのだ。その全ては上からの命令であり、完全な縦社会である警察にとってそれは否定できない絶対的な命令でもあった。
赤い髪の目立つレノは流暢な日本語を話す。初めは驚かれるが、どちらかと言うとレノのその性格の方に関心が向き、レノが日本語を話すという事など一瞬にして忘れ去られていく。そんな彼の担当する事件は、研究所での権力争いの末の殺人である。研究所近くの施設に設置された捜査本部も“研究所での権力争いの末の殺人事件捜査本部”となっているほどである。彼は、早速聞き込みに行くことにした。
とりあえず、プロローグっていうところまで出来ました。
これから出来れば連載続けていこうと思いますので、応援よろしくお願いします。