表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
80/86

79話

 カリが階段で四階から一階に下りきると、その姿は返り血で血濡れになっていた。戦いの中で貴族たちを強引に仕留めるしかない場合もあったため、鎧や衣服に刃でつけられた切れ目もある。肉体に付けられた傷については、カリが魔法で治したため無傷の状態ではある。

 一階に到着し、カリは不可解な存在がいる方に向く。

 未だ多数の貴族が立ちふさがっているが、その背の先には巨大な両開きの扉があった。

 細かな装飾のある豪華で大きな扉を見るに、あの先に王がいることは間違いなさそうだと、カリは感じた。


「もうひと踏ん張りってところか」


 カリは体から垂れる返り血を身振りで吹き散らすと、巨大な扉を目指して歩き始める。

 立ちふさがる貴族たちは武器を手にしたまま、攻撃しようとしてこない。

 カリが不思議に思って改めて姿形を確認すると、カリより若干年が上の頃の、青少年や青少女と言える年齢の者たちだけしかいない。

 きっと彼ら彼女らの親は、カリが階段での攻防で殺し尽くしてしまったのだろう。

 その証拠に、彼ら彼女らの目には怨恨の感情が浮かんでいるにも関わらず、親が勝てなかった相手に勝てないと理解しているために体を動かせていない。

 カリは相手側の状態を確認すると、力強く言葉を放った。


「そこを退け。そうすれば殺さないでやる」


 カリの傲慢に聞こえる言葉を受けて、青少年貴族の一人が剣で斬りかかってきた。


「ここを通すものか! 父上の仇!」


 怒りに我を忘れているのか、その肉体も振り上げている剣の刃も素の状態で、魔法をかけていない。

 一方でカリは万全に肉体を魔法で強化しているため、相手の斬りかかりに難なく対処できる。

 カリは、相手が振り下ろしてきた剣を横に一歩ずれることで避け、魔法で刃を精製している手刀を斜めに振り上げた。


「勢いは買うけどッ!」

「ぎゃああああああ!」


 右脇から首の左側へと斜めに両断され、斬りかかった青少年貴族は絶叫と共に命を落とした。

 この攻防でカリの実力を知ったことで、年若くて貴族としての覚悟が固まっていない様子の青少年少女貴族たちが尻込みする様子をみせる。

 しかし中には気骨あるものもいて、それでも役目を果たそうと攻撃をしかけてきた。


「貴族としての矜持を!」

「うわああああああああああ!」

「やってやるんだあああああ!」


 連携せずに突撃してくるだけの存在に遅れを取るはずもなく、カリは攻撃してきた全員を容易く屠った。

 勇気ないしは矜持持つ者が死に尽くしたことで、生き残っている面々が腰砕けの姿になる。

 まさに腰抜けといった見た目の彼ら彼女らの間を、カリは平然と通り抜けていく。もちろん、いつ攻撃されてもいいように心構えだけはしたままで。

 そうして大扉の前に到達し、カリはその扉の取っ手に血濡れの手をかけた。そして、ぐっと力を込めた押すと、軋み音はないものの重たい手応えで、巨大な扉が開かれていく。

 解放された扉の向こうには、階段付きの台の上にある豪華な椅子に、三十歳には達して居なさそうな成人男性が座っていた。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
>青少年や青少女と言える年齢の者たちだけ 青少女という言葉は存在しません 何故なら青少年という言葉に男女の区別がないからです
いよいよ王とのご対面ですかねえ? これ程の犠牲を出すくらいなら王自ら出ても良さそうなもんですが戦闘力そんな無いのか別の理由か
子どもたちを最後の壁にするとは。 なんかスゴイな。個人のエゴが少ないのかな〜。 王を頂点とした群体みたいな。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ