75話
カリは野宿にて一人で一夜を明かしてから、都を目指す空の旅を続けることにした。
地図を見ながら移動していると、次の目印となる村が見えてきた。
村人に見つからないための用心で、カリは高度を上げて飛び直す。その上で、視力を魔法で強化して、村の様子を上から覗き見ることにした。
すると、村の中に貴族が沢山いることが見て取れた。
村にいる貴族たちは、地図を手にカリが飛んできた方向を指しながら、なにかを言い合っている。
カリは空高くにいるため、聴力を魔法で強化しても、何を言っているかは聞こえない。しかし予想はできた。
「街道がない方向から僕が来ることを、信じている人と信じていない人で言い合いになっているんだろうな。これは確実に、僕の居場所がバレているし、貴族を多く動員してきているね」
カリが空を飛んで移動していると予想できない様子を見るに、あの村にいる貴族たちは空を飛べないようだ。
「いや。魔法は願えば叶えてくれるんだ。空を飛ぼうと考えたことがないか、空から落下する危険から尻込みしているかだ」
なににせよ、今日までのところは、カリの空を飛んでの移動は貴族たちの意表を突けているのは間違いない。
カリは、戦闘を回避できるのなら楽だと考えて、その村の上を飛んで通過することにした。
次の目印に向けて移動しながら、カリは考える。
「僕の居場所が都にいる王にわかるとして、どうやって貴族たちに伝達しているんだろう?」
カリの飛行経路は、地図に記載のある目印を探しながら移動しているため、蛇行しながら都に向かう感じになっている。
だが先ほどの村にいた貴族たちは、的確にカリが飛んできた方向を指していた。
それはつまり、直近のカリの居場所を、貴族たちが掴んでいるということになる。
「王以外に、僕の居場所が分かる人が居る? 遠くの場所に情報を伝える術がある?」
カリは、自分ならどう遠方に情報を伝えるかを考える。
「魔央を糸のように細長くすれば、かなり遠くに魔法を出現させることができる。こちらの声を、その遠くへ伝えることだってできるだろうけど」
そう考えてから、カリは手の地図に目を落とす。
ここまで飛んできた距離を考えると、都からこの場所までの距離は、カリが魔央を糸のように細長くしても到達し得ない。
貴族たちが展開している魔央の幅を考えると、例え王が貴族よりも広い範囲の魔央を持っていたとしても、有り得ないように感じられた。
「となると、僕の居場所を書いた手紙を高速で撃ち出すとかかな。それなら僕でもできそうだ」
貴族を駐在させている村の場所は固定されている。
都からその村までの方角と距離が分かっているのだから、どのぐらいの強さで物を撃ち出せば到達できるかを計算できるはずだ。
カリは、この方法に違いないと結論づけ、どう対処するべきかに考えを移行させる。
「都から物体が飛んでくるのなら、それを打ち落とせば、僕の情報は伝わらなくなるはず」
しかし、その物体が何処に向けていつ射出されるか分かっていないと、迎撃することは難しい。
つまり、実際のところは打つ手がない。
「逆に考えて、僕の居場所が知られている前提で進む方が気が楽かも」
貴族たちがカリが空を飛んで移動していると気付いていないうちに、できるだけ都までの距離を稼いでおく。
そして移動法がバレて対策を取られるようになったら、待ち構えている貴族たちと戦って通ればいい。
カリはそう結論付けると、地図にある目印を見失わない限界の速度を出して、飛翔移動を行うことにした。




