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71話

 カリは、転倒している馬車の荷台に商品があるようなら、馬車の中を探ってみると決断した。

 その決断を終えてからすぐに、横倒しになった馬車が見えてきた。

 まだ誰も近くを通ってなかったのか、ぐったりと地面に倒れたままの御者と馬の姿があり、馬車から投げ出された木箱が散乱していた。

 カリはまず魔央を最大範囲まで展開して、周囲に人が居ないことを確認した。それからまず、馬車に繋がれた状態で倒れ伏している馬に近づいた。

 その首筋に手を当てて脈を確認するが、鼓動は感じられなかった。しかし、まだ体温が残っていて温かい。


「事故を起こして死んだばかりって感じだ」


 カリは次に、御者らしき男へと近づき、生きているかを確かめる。

 こちらも体温は残っているが、既に死亡していた。死因は馬車が転倒した拍子に頭を地面の硬い場所に打ち付けたことによる、頭蓋骨が陥没したからだと予想がついた。


「死んでいるのなら」


 カリは魔央を最大展開を続けながら、男の死体の衣服を検めていく。

 この男性が地図を持っているとしたら、身に着けている物の内側にあると予想したからだ。

 そうやって探っていくが、衣服の裏地に縫いつけられた金貨は発見できて回収したが、地図らしいものを持ってはいなかった。


「ちぇ。予想外れだったか」


 カリは死者の服装を整えてから、この場から離脱することにした。

 魔央を通して、この場に近づいてくる複数の存在を感知したからだ。

 目的地にした町の方からと、その反対側からの両方から数人ずつ。

 その人物はまだ離れた場所にいるので、急いで離れる必要はない。

 しかし、地図を探すという用が終わったのに留まって、近寄ってきた人に痛くない腹を探られても具合が悪いだけである。

 カリは横転した荷馬車から離れると、改めて目的地に決めた町へ向かって歩いてくことにした。

 しばらく歩いていると、道の上を走って移動して近づいてくる一団と出くわした。

 その人達が着ている装備は、デザインが統一された鎧と武器だったので、あの町に所属している戦士だろうと当たりをつけることができた。

 戦士らしき一団は、道を歩いているカリへと声をかけてきた。


「おい。この近くで、馬車が倒れてなかったか?」

「荷馬車だったら、ここから少し戻ったところに倒れていたよ。馬も御者も、動いていなかった。死んでいるんじゃないかな」

「なに!? それは本当か?」

「僕は近寄ってないから、それ以上のことは知らないよ。ああでも、僕の後続の人が漁っているかもしれないね。荷馬車から物が飛び出て散乱してたからね。馬車から転び出た荷物は漁っても良いって聞いたことがあったし」

「それは不味い。おい、急ぐぞ!」


 戦士らしき一団は、カリの横を通り過ぎて、馬車を目指して駆け出していく。


「ああも焦っているってことは、あの戦士たちに関わる物品を運んでいたのかも?」


 カリは散乱していた木箱の中身は見ていないので、戦士たちが何を行商人に注文していたのかを知る術はもうない。

 それでも、カリが道歩きを再開して少しすると、転倒した馬車がある方向から武器を打ち合わせる音が聞こえてきた。

 恐らく先ほどの戦士たちと、散乱していた物品を物色していた誰かが、物資の取り合いをしているんだろう。


「戦士と戦っているってことは、もしかして相手は盗賊だったり?」


 気にはなるが、いまのカリが優先的すべき目的は王がいる場所を断定することだ。

 カリは後ろ髪を引かれる思いを感じつつ、目的地にした町を目指して進んでいくことにした。

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― 新着の感想 ―
魔央による感知、実に便利ですよねー 相手が魔法使いでもなきゃ気取られる心配もないですしトラブルはできる限り避けられますな
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