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52話

 部屋に雪崩れ込んできた人たちを見て、ベティの対応は素早かった。


「この家に住む、お前たちも同罪よ! 死ね!」


 幾つもの魔法を一斉射。

 部屋の扉と付近の壁ごと、侵入者たちは穴だらけになった。

 しかし侵入者の何人か――魔法使いである者たちだけは、体の前に魔法の障壁を張ることで生き延びたようだった。

 その生き残った魔法使いたちは、部屋の中で死に絶えている当主夫婦に顔を向けた直後、憤怒の表情に変わった。


「お前たち! 自分が何をしたのか分かっているのか!」


 魔法使いの一人――最も年上に見える人物が、ベティとカリに向かって、水を投射する魔法を放ってきた。

 ベティは咄嗟に横に避け、カリは最大まで自分の魔央を圧縮してからの障壁魔法で防いだ。

 カリは防御しきってから肩をすくめると、攻撃してきた魔法使いに指を向けた。


「僕は戦う気はなかったんだけど、無差別に襲ってくるのなら容赦しない」


 徴税官を屠ったときと同じ、限界圧縮した魔央が生み出す超強力な魔法でもって、カリは一瞬にして狙った魔法使いの頭部を消滅させた。

 この瞬殺劇は相手にとって予想外だったのだろう、一様にカリを警戒する素振りを見せる。

 そのとき、ベティがカリに向かって口を開いた。


「この家にいる全員が、私の復讐対象よ! カリは手出ししないで!」

「……分かったよ。でも、僕を狙ってくる人については、反撃させて貰うからね」


 カリはベティの意見を尊重するため、部屋の隅の角に移動した。

 そうしてカリが戦う意思を失くした様子を見せたところ、相手の魔法使いたちは調子づいた様子に変わる。

 そしてベティも、復讐相手が目の前に沢山いることで、我慢が利かなくなっていた。


「全員、殺してやる!」


 ベティは魔法を連射しながら、魔法使いたちへと襲い掛かる。

 飛来してくる魔法に対し、魔法使いたちは協力して魔法の障壁を張って防ぐ。

 しかしベティは、この日のために、貴族たちよりも高濃度で魔央を圧縮する術を身に着けている。

 お互いの魔央を圧縮率の差によって、段々とベティの魔法が相手の魔法障壁を貫通し始めた。そして魔法使いの何人かの体に、魔法が直撃する。


「ぐあっ! くそっ、被弾した!」

「もっと頑張って障壁を張れ!」

「あっ、何処に行く! 逃げるな!」


 魔法使いの一人が、ベティの魔法の威力に怖気づいて逃げようとする。

 しかし他の魔法使いたちが張っている障壁の外へ出た瞬間、ベティが魔法で発射した石槍に胸を貫かれて絶命した。


「くそっ、防いでいるだけでは勝てない! こちらも攻撃せねば!」

「誰か一人、全力で障壁を張れ! その間に、他が攻撃するんだ!」


 魔法使いたちは視線で意見を交換し合うと、障壁が一つを残して消失した。それと同時に、ベティへと多数の魔法が放たれた。

 ベティは、敵から魔法が迫ってくることを視認しつつも、魔法攻撃を止めなかった。むしろ、さらに沢山の魔法を放っていく。

 結果ベティの多数の魔法により、一つきりの障壁が易々と破られ、その裏にいた魔法使いを穴だらけにした。さらに、飛んできていた魔法についても、多数の魔法によるごり押しの迎撃で相殺することに成功した。

 しかし数によるごり押し迎撃なので、全てを狙って打ち落とすことは出来ない。そのため、相手側の魔法を二発からだに受けることになった。

 高圧縮した魔央は、それだけで魔法に対する防御力を持つ。だが、ベティの圧縮技量では、受けるダメージを軽減することしかできない。

 打ち落とし切れなかった相手の魔法によって、ベティは左腕に火傷と右わき腹に擦過傷を受けた。


「きゃう! やったわね!」


 怪我させられた腹いせも込めて、ベティは魔法を更に多く放っていく。

 相手の魔法使いたちは、再び全員で協力して障壁を張って耐えようとする。

 しかし障壁は五秒と保たずに破られ、裏にいた魔法使いたちはベティが放った多数の魔法に打ち据えられる結果になった。


「ぐあっ!」「いだい!」「ぐほっ!」


 魔法使いの二人は即死したが、他の面々は運よく大怪我で命を落とすことはなかったようだった。

 しかし、その大怪我を負った瞬間から、魔法使いたちは魔法を使うことを止めてしまった――いや、魔法が使えなくなった様子だった。

 どうして魔法が使えなくなったかについて、カリは観戦しながら仮説を打ち立てる。


「怪我の痛みで、魔法を使う際に必要不可欠な、願い事を定めきれないのかも」


 魔法使いは、願えばなんでも魔法で適えることが可能だ。

 しかし裏を返せば、使用者がちゃんと願わなければ、何も魔法を出せないということでもある。

 そして、ああして大怪我を負い、その痛みに思考が支配されてしまっていると、満足に願い事が頭に浮かばなくなっても仕方がないように思えた。


「痛い痛いと思っている間に、その怪我を魔法で治せばいいのにな。いや、余りの痛さで、怪我を治すなんて考えも浮かばないのかもな」


 カリが感想を呟き、その声がベティの耳に入った。

 ベティは、それが助言だと感じ、傷みに呻いている魔法使いたちに止めを刺すよりも先に、自分の怪我した場所を魔法で治すことにした。

 ベティは目をつぶり、痛みを発している体の部分を治したいと願いながら、魔法を行使した。

 すると、左腕にあった火傷が消えて滑らかな肌に戻り、右わき腹の擦過傷も塞がって元通りになった。


「ふぅ。魔法使いを殺す際は、一撃で殺すか、大怪我を負わせないと、怪我を魔法で回復されちゃうかもしれないわね」


 ベティは今後の対策の弁を口にしてから、相変わらず痛みに悶えている魔法使いたちを始末しに向かった。

 魔法使いたちは、床に伏せて痛みを訴える者と、戦うことを諦めて逃げようと者とに分かれていた。

 ベティは先に逃げようとしている方の頭部を、魔法で撃ち貫くことにした。

 そうして逃げ出した全員が死んだ後で、床に倒れている魔法使いたちの首を魔法で刎ねることで止めを刺していった。


「はぁ……。これで、復讐は完遂ね」


 ベティが感慨深く吐息を漏らす。

 その姿を見て、カリは部屋の隅から動くと、廊下まで出ていって、ベティに近寄った。


「復讐を終えた感想はどんなもの?」

「やり切ったって感覚と、あっけないって感想、どちらもあるわ。でも、心に区切りがついたって実感しているわ」


 殺された村人たちのために、ベティは復讐を実現してみせた。

 その達成感は、ベティに気の緩みを生んだ。それこそ、魔央の圧縮を少し緩めてしまうほどの。

 そしてベティの魔央の圧縮率が下がることを待っていたかのように、廊下の先の暗がりから魔法が飛んできた。

 ベティは、意識せず広がっっていた自分の魔央の中に、敵の魔法が入ってきたことに気付きはした。しかし気持ちが緩んでいたことが災いして、咄嗟に魔法を使って迎撃することができなかった。

 カリは、自身の魔央を極限まで圧縮していたことによって、体付近にしか魔央が展開してなく、周囲の状況を魔央を通して知ることが出来ない状態。つまり廊下を飛来してくる魔法に気付くことが遅れてしまった。

 そうした二人の失態が合わさったことで、廊下を飛んできた魔法はベティの頭に直撃した。

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― 新着の感想 ―
人数を数えてなさそうだもんな。
魔法を使い慣れている貴族関係者だろうに野良魔法使いにここまで一方的に力負けするかあ しかし、気を抜くには早かったかな
あらまあ
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