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46話

 カリとベティは、魔央に関するそれぞれの試みを行いながら、次の村まで歩いて移動した。

 二人はそれぞれ、最大まで範囲を展開した自身の魔央でもって、目前の村の様子を探る。


「石積みの外壁に多少の家屋。僕らがいた開拓村と大差ない。違いは、村の外まで畑が広がっているぐらいかな。今は刈り取られてなにもないけど」

「村外の畑を守るために、監視小屋が何個かあるわね。もしかしたら、小作人の住処かもしれないけど」

「ちなみに、あの村に魔法使いはいない」

「つまり貴族が滞在している感じもないわけね。じゃあ、魔央を圧縮する必要はないわね」

「まだ少しも圧縮できてないのか?」

「難しいのよ。というか、私が普通のはずよ。カリが魔法が上手すぎるのよ、きっと」

「ええー。そうかな?」

「絶対そう。だって徴税官は、貴族なのに魔央を限界まで圧縮できてなかったのよね。つまり貴族であっても、そうそう簡単に魔央を圧縮出来ないってことよ」


 カリは、ベティにとって都合の良い理屈だなと想いながら、目の前の村へと二人で向かうことにした。

 村の出入口で、その村の戦士が立ちふさがってきた。


「この村に何の用だ?」

「僕らは、この村を通り過ぎて、その先の町へ行く気でいるんです」

「子供二人でか?」

「僕は村で戦士と認められました。だから出てきたんです」


 村の戦士は、カリが胸鎧と短剣を装備している様子を見ても、半信半疑な様子だ。


「ともあれ、村を通り過ぎる気でいるのなら通してやる。だが村は徴税された直後だ。食料品が買えるとは考えないことだな」

「少しも変えないと? それほど不作だったとか?」

「お前たちの、その元気な姿を見れば、まだ食料は持っているんだろ。村で買うのは諦めろ」


 つまり余所者に売り渡す分の食料に限界があるから、余裕がある相手には売らないということのようだ。

 カリは、魔法で体に栄養を作れるようになっているので、それなら仕方がないと諦めた。

 しかしベティは、不満から頬を膨らませた。


「食料を買い込んだりしないから、食事くらいはさせてくれてもいいでしょ。それもダメっていうの?」

「……出せるのは、雑穀の入った黒パンと味の薄いスープぐらいだ。美食は期待するな」

「むむっ。その料理じゃ、我慢しようかしら」


 上から目線の言い分を口にしたベティの頭を、カリは押さえつけて下げさせた。


「すみません。口が悪くって」

「はっはっは。いやいや、そのぐらいの歳の娘は口が減らないものだ。我が家の娘もそうだからな」


 カリは、これ以上は騒動の元になると判断して、ベティの手を引きながら村の中へ入った。

 村の中は、実際に目で見ても、開拓村とあまり変わり映えのない景色だ。

 大人たちは刈り終えた畑に新たな種を撒き、子供たちは魔術の練習をしたり遊んだりしている。

 カリとベティは、初めて見るはずなのに見慣れた感じのする光景の中を歩きながら、反対側の出入口を目指す。

 そうやって歩いていて、ふとした拍子に、立ち話をしている村人たちの声が二人の耳に入ってきた。


「徴税官様、帰ってくるの遅くないかしら?」

「そう? もう一日二日、かかっても不思議じゃないんじゃないかしら?」

「例年ならね。でもほら今年は、あの噂のあった開拓村以外は、先に徴税されたから」

「そうだったわね。最後に開拓村に行って帰ってくるだけだものね。そう考えると、お帰りが遅いかしら?」


 その話の内容から考えるに、どうやら徴税官は開拓村から出た後でこの村に寄ることが毎年の恒例のようだ。

 そして、この村を寄るということは、その先にある町へ行くことは間違いない。

 その事実を知って、ベティは嬉しそうな笑みを浮かべる。


「どうやら徴税官の上役は、町に居そうね」

「町の更に先にいるかもしれないけど、手がかりは掴めるだろうね」


 小声でやりとりをしながら、ベティは獲物を見つけた狩人のような目になり、カリは妹の我が侭に付き合わされている兄のような目つきになった。

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― 新着の感想 ―
ベティが暴走しなきゃいいんですがねえ
ベティは、カリを利用しようとしているところが好きじゃない。 命を助けてくれて、魔法使いにしてくれた恩人なのに、村での上下関係のままでいるのはおかしい。 カリが流れで復讐に手を貸してしまうのも嫌だし。 …
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