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9話 警告

 俺と藤原を恐怖のどん底に落としてくれたクマ男。あろうことか俺に用があるらしい。話しかけてきた事だけでも衝撃だったのに、俺は巷で噂のこの不審者に認知されている模様。目を背けたい事実だ。


「あの……話ってのはなんすかね」


 用があると言って俺たちを足止めした癖に、クマ男はなかなか本題に入らない。カエル男の時もそうだったが、マスクのせいで表情が分からないのがより不安を掻き立てる。

 藤原は少し離れた場所に移動して、俺たちのやり取りを窺っている。当然だけどクマ男を警戒しているのだ。俺だって今すぐ逃げ出したい。てか、せめてマスク取ってくれないかな。


「その、クマかなんかのマスクなんですけど、脱いで貰うことは……」


「無理」


「……ソウデスカ」


「クマじゃない。モグラだよ」


「はっ? えっ、モグラ? モグラなの、それ」


「どうやったってクマには見えないだろ」


 なかなか話の本題に入らない癖に、マスクのモデル間違いはすぐさま訂正してきやがった。

 クマ男改めモグラ男は、長い足を踏み出して俺との間にあった距離を縮めた。マスク越しに聞こえる声は篭っているが、結構若い感じがする。カエル男と体格も似ていると思うけど……一度しか見たことないのであまり確信は持てない。


「キミさ、玖路斗学苑の試験受けるんだろ?」


「……なんで」


 なんでこのモグラまで知ってんだよ。この町から俺のプライバシーは無くなったのか。つい藤原の方を睨んでしまったが、彼女は勢いよく首を横に振った。


「なんで僕が知っているか……そうだね、風の噂で……とでも言っておこう」


 藤原が俺の試験のことを話したのは、湊を含めた同級生数人。場所も校内に限られる。こんな短時間で部外者であろう、この怪しいモグラのおっさんにまで噂が広がるとは思えなかった。


 祖母……もしくは姉経由で知ったという可能性もなくはないけど、ふたりはこういうことを他人にペラペラと喋るタイプではないから、やはり違う気がする。モグラ男は情報の入手先について詳しく説明する気はないようだ。戸惑う俺にはお構いなしで話を続行する。


「だから、僕からキミにひとつ……いやふたつ警告をしてあげる」


「警告……?」


 モグラ男の口から飛び出した警告という言葉。どう見ても警告される側なのはそっちだろ。今この場を第三者が見たら通報されてもおかしくないんだぞ。モグラに突っ込みを入れそうになってしまったけど、話が逸れてしまうので我慢する。


「アレらは時に人よりも多くを語る。更に悪気が無いのだからタチが悪い。当分の間……少なくとも試験が終わるまでは川に近づかない方がいい」


「はぁ……」


「それと、ここに来る途中にあった橋……そこにキミと同じ学生服を着た小柄な少年がいただろう。彼の動向には充分に注意を払え」


「小柄な少年って小山のこと?」


「名前なんて知らない。それじゃあ、伝えたからね」


「えっ、ちょっと……」


 かなり一方的だ。モグラ男は言いたいことだけを言ってさっさとどこかへ行ってしまう。


「わけわかんねー……」


 結局あいつはうちの店に来たカエル男と同一人物だったのだろうか。見た目も行動も怪し過ぎるが、今のところどちらも暴力的な振る舞いは見られない。


「河合!! 大丈夫だった?」


 モグラ男がいなくなったので安心したのだろう。藤原が俺のもとに駆け寄ってきた。


「あの不審者、あんたに何の用だったの」


「さあ、俺もよくわかんなかった。しばらく川に近付くなって。それと……」


『小山空太に注意しろ』

 どういう意味だ。まさか小山の身に危険が迫っているのか。それなら本人に直接警告してやればいいのに。なんでわざわざ俺に言うんだよ。

 あんな怪しいおっさんの言うことを真に受けるなんてどうかしてるとは思う。でも、モグラ男は俺が玖路斗学苑に入りたがっていることもなぜか知っていた。怖い。深く考えたくない。


「いや、なんでもない。見るからに変な人だったし、相手にしない方がいいよ。さっさと帰ろうぜ」


 少々強引に会話を終了させ、俺と藤原は帰宅の途についた。

 相手にする必要はない。変人に絡まれただけ。さっさと忘れてしまえと思うのに……モグラ男の『警告』がずっと頭の中でリピートされている。特にふたつめの小山に注意しろというもの。

 もし……本当に小山の身に良くないことが起きてしまったらどうする。それほど親しい友人でないとはいえ、危険が迫っているかもしれないと分かっていながら無視は出来ない。モグラ男の警告をあり得ないと一蹴してしまうのは難しかった。


「まだ近くにあのモグラ男がいるかもしれないから、藤原の家まで送っていくな」


「うん……悪いけどお願いする。ありがとう、河合」


 いつぞやの時とは違って、藤原は素直に送られることを了承した。今まで噂でしか知らなかった不審者に実際に遭遇してしまったのだ。遠慮なんてする余裕は無くなってしまったんだろう。

 小山にも身の回りに注意しておくようにと伝えておこう。俺まで変な目で見られるかもしれないけど仕方ない。黙っている方がキツい。さっさと言ってこの胸のモヤモヤをすっきりさせてしまおう。

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