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36話 クラスとレベル

「事前連絡もせずに無理やりついて来た私たちがとやかく言うことじゃなかったです。美作さん、困らせてすみませんでした」


「いいえ。元はと言えば、うちの主の言葉足らずが原因ですから。今は特に……浮かれてらっしゃって、私共も諸々の対応に追われている状態なのです」


 小夜子は美作に謝罪をした。気は強いけどちゃんと自分の非を認めて謝ることのできる良い子だ。美作も別に怒っているわけではなさそうだったので、小夜子の謝罪をあっさりと受け入れた。

 俺を推薦する際に学苑側と揉めたと聞いていたけど……小夜子と美作の会話からして、東野は普段から結構いい加減な奴なのかもしれない。そんな東野のおかげで首の皮が一枚繋がった状態である俺は、ふたりのやりとりを複雑な心境で眺めていた。


「込み入った話は機会を改めてするということで……さあ、今度こそ食事にしましょうか」


 しんみりとしていた空気を吹き飛ばすかのように、美作は再びテーブルの上にメニュー表を広げた。


「ここのカフェはデザートの種類が豊富ですから、お腹に余裕があるようでしたら、そちらもどうぞ注文して下さいね。河合様は甘い物はお好きですか?」


「え、ああ……好きです」


「八名木さんと更級さんは……」


「大好きです!!」


 美作の問いに真昼が勢いよく返事をした。彼女は美作がメニュー表を広げた時点でそちらの方に目が釘付け状態だったので言わずもがなだった。

 俺は最初にお願いしていたシーフードピザと、デザートに抹茶ワッフルを付けて貰った。真昼はカルボナーラとフルーツパフェ。小夜子の方は、たらこのパスタにクリームソーダ。美作と百瀬はデザートは頼まず、俺と同じシーフードピザにコーヒーを頼んでいた。

 なんだかんだ皆お腹が空いていたようで……注文した料理が運ばれてくると、しばし無言で食事に集中してしまった。雑談ができる余裕が生まれたのは、デザートに手を付ける段階になってからだった。





「そういえば、河合ってクラスとレベルは何?」


「八名木さんっ……!?」


「えっ、これも聞いちゃダメなんですか? 今後同じ学校に通うことになるんだし、このくらいはいいと思ったのにな」


「クラス? レベル……?」


「そう。推薦を受けるくらいなんだし、クラスはグリーンか……レベル3以上は確定かしら?」


 小夜子の言っている内容がよく分からない。何かランク的なものを聞かれているのは理解できるけど、自分がどれに該当するかなんて知る由もなかった。


「えーっと……俺は……」


「もしかして……透はまだ自分のクラスやレベルを知らないのかな?」


「お恥ずかしながら……小夜子の言ってるグリーンとかなんとかも意味不明デス」


 回答に困っている俺に気付いたのか、真昼が助け舟を出してくれた。そのグリーンなんとかって奴……知ってなきゃマズかったのかな。特待生試験を受けるにあたって基礎的な事は覚えていたつもりだったけど、小夜子や真昼に比べたら俺って無知も無知なんだな。

 二次試験ヤバいかもしれない。今から缶詰して間に合うだろうか。いや、学校の小テストじゃないんだから、その場しのぎの付け焼き刃で突破できるわけがない。もしかして、俺詰んだ?


「……河合様はおふたりと違って、完全独学で魔法を一から習得されたと伺っています。身近に教えてくれるような人材がいなかったのであれば仕方ありませんよ」


「美作さん……」


「受験者には自分のクラスやレベルを知らない方は多くおられます。河合様だけではありませんから大丈夫ですよ」


「そうだよね……正式な測定は学苑に入らなきゃ出来ませんものね。私と小夜子ちゃんは榛名先生のツテがあったから早い段階で知ることができただけなのよね」


 クラスとかレベルの話は学苑に入学できてから知っても問題ないようだ。真昼や小夜子のような講師から推薦を受けている受験者が頭ひとつ抜けているのは当然だろう。俺は俺のペースで彼女たちに追いつけるようにしっかりと勉強していこう。

 

「正規の測定はこれからですが、河合様のクラスは判明してますよね。ご主人様が直々に確認されて……我々も事前に知らされておりますから」


「あ、そうなんだ……」


「ばっ……か、百瀬っ!! お前……余計なことを」


「いいじゃないですか、どうせ分かる事ですし……ここで隠すことにあまり意味はないと思いますよ」


「それはそうだけど……こっちの段取りも考えろよ」


 百瀬があっけらかんと放った言葉。美作は慌てて止めようとしたけど全く間に合ってなかった。そのクラスとかいう奴、俺のも分かってるんだって。東野……いつの間に調べたんだろう。


「あの、美作さん。俺も自分のクラスが気になるんで教えて貰ってもいいかな? 用語の意味とかも説明してくれると有難いんだけど……」


 美作は眉間に深く皺を寄せている。相当悩んでいるようだ。どうせ分かることだと百瀬は言っているのに、そんなに深刻になるほどなのだろうか。


「……本当ならご主人様がお伝えしているはずだったのですが……仕方ありませんね」


『先生をするのを楽しみにしている』と、美作が語っていたのを思い出した。美作が言い淀んでいる理由は、今この場で俺に色々教えてしまうのは、東野の意思に反することになるからなのか。

 そうは言っても、ここまで中途半端に聞かされてしまっては気になってしまうだろう。当事者の俺はもちろんのこと、真昼と小夜子も興味津々で美作の次の言葉を待っている。


「……河合様のクラスは『ブルー』です」


「ブルー……」


 つまり青。青と言われて思い浮かんだのは、幻獣(スティース)と交渉時に発生する光の色。もしかしてクラスというのは、この光の色で分類されているのか。そういえば……小山が魔法を使っている時は黄色の光だった気がする。

 他人が魔法を使っている所を間近で見る機会なんて今までなかったのだ。こういう個人差のようなものがあるなんて興味深いな。


「……嘘……そんな、まさか……」


「あり得ない。美作さん、冗談にしてはちょっと……」


「冗談などではありません。ご主人様はこうも仰っておられました。自分よりも上質で……美しいと」


 真昼と小夜子が驚愕の表情を浮かべている。『ブルー』というのがそれほど意外だったのだろうか。確か東野が魔法を使った時は、俺と同じ青色の光が発生していたはずだ。

 ふたりの反応が尋常ではなく、不安な気持ちが押し寄せてくる。

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