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10話 再来

 次の日、小山は学校を休んだ。


 恐怖で手が震えている。あのモグラ男に警告されたことが現実になったとでもいうのか。

 担任に小山が休んだ理由を聞いてみると、風邪だという答えが返ってきた。ただの風邪……普段であれば、同級生が風邪で1日休んだからといってそこまで気に留めることはない。風邪なんて誰でも引くものだ。でも小山に関してはどうしてもモグラ男の警告が頭の中をチラついてしまう。真に受ける方がどうかしていると小馬鹿にしていた癖に、実際は気になって仕方がないんじゃないか。

 もし、モグラ男の警告が真実だったとする。そうなるとこれから先、小山にはどんな事が起こるというのだ。風邪を引いて終わりとはならない気がする。その程度であるなら、わざわざ警告などしてはいないだろう。

 更にもうひとつ……川に近付くなという警告もあったな。こちらも言う通りにした方が良いのかもしれない。


 その日は全く授業に身が入らなかった。勉強に関しては普段からさほど熱心とは言えないけど、友人に話しかけられても上の空状態になっていたのでなかなかの重症だ。

 いきなり現れて警告だなんて言われたら戸惑うのは当たり前だろ。しかもあんな怪しい見た目の奴に。中坊のガキを振り回すなよと、怒りにも似た感情まで湧いてきた。

 本当に小山に危険が迫っているなら、俺ではなく彼の家族……もしくは警察など然るべき機関に相談して欲しい。

 カエルにしろモグラにしろ、どちらも二度とお目にかかりたくないと思っていたが状況が変わった。あのモグラ男を問い詰める。警告の内容をもっとしっかり教えて貰おう。

 自分の中で考えがまとまった。学校が終わったらモグラ男を探しに行くと、意気込んだまでは良かったのだ。しかし、物事というのはそう都合良くはいかなかった。







 それから俺は、顔にアニマルマスクを被った人間を探し回ったのだが該当する者はひとりも見つからなかった。もうこの町から出ていったのか……いや、単にマスクを脱いで生活をしているだけかもしれない。だとしたら、素顔を知らない自分にはお手上げだった。

 結局小山は3日後には普通に登校してきた。あれほど心配したというのに……脱力感に見舞われた。無事だったのなら良かったけどさ。それでも念のため、モグラの警告に従って彼に注意を促した。

 予想はしていたけど、小山は俺の話をまともに取り上ってはくれなかった。話しかけられることすら迷惑そうに拒絶されてしまう。どうやら俺は彼に嫌われてしまったようだ。でも、気掛かりで仕方がなかった忠告は出来たので良しとするか……モグラも見つからないし、俺に出来ることはもう無い。小山にだって、これ以上しつこく絡みたくはないのだ。





 特に変わったこともなく、穏やかに日々が過ぎていった。今日は休日で学校は休みだ。朝急ぐ必要がないというのは最高だ。午前中は自室で漫画を読んだりテレビを見てリラックスした時間を楽しんだ。昼からはモカと一緒に外へ散歩に行くことにしたのだが……


「……暑いな」


 意気揚々と外に出たのは良いが、あまりの暑さに足を止めてしまう。もう9月も後半に入っているというのに、この夏のような暑さはどうしたものか。時刻はPM14時……1日で最も気温が高いと言われる時間帯だ。散歩に行くにしろ、もう少し太陽が落ちて気温が下がってからの方が良さそうだ。こんな暑い時に外をうろうろしていたらモカが熱中症になってしまう。

 散歩は時間を置いて出直すことに決めて、家に入ろうとしたその時だった。視界にあるものが飛び込んできたのだ。遠くにいても目を引く、その異様な存在感。見た目のインパクトは、小さな子供など遭遇したら泣き出してしまうのではないかと心配になる。


「カエル男……」


 奴がいた。

 うちの家から数メートルほど距離はあるが、見間違いようがない。頭にはカエルのアニマルマスクを被り、服装は仕立ての良さそうなスーツ。前回見た時と同じような格好をしている。

 カエル男は俺の方をじっと見つめている。探していた時は見つからなかったのに……意図していない時はこんなにあっさりと姿を現すのか。少々複雑な気分になったけど、こうやって見つかったのなら丁度いい。

 俺はあいつに聞きたいことがあるのだ。モグラ男との関連性……ふたりが無関係とは考えられない。それぞれ別の人間か、もしくは同一人物か……明らかにしてやるのだ。


「おい、ちょっとあんた……」


 カエル男に向かって呼びかけた。少し距離はあるが、このくらいなら充分聞こえるだろう。しかし、カエルは俺の声には反応しなかった。無視されたのか……いや、マスクのせいで聞こえなかったのかもしれない。俺はもう一度呼びかけることにする。今度はさっきよりも一段階大きな声で。


「おーい! 俺の声聞こえてる……って、えっ!? はあっ!!?」


 嘘だろ……マジか。俺は目の前で起きた衝撃の出来事に頭が真っ白になる。

 カエル男が倒れた。まるで大木が斧で伐採されたみたいだった。ゆっくりと根本から支えを失って地面に横たわる。俺はカエル男に向かって走った。残念ながらカエル男は木ではないのだ。受け身を全く取らないあんな倒れ方をして、頭を強打していたら大変だ。


「大丈夫か!! しっかりしろ!!」


「……平気。ちょっと気持ち悪くなっただけ」


 カエル男は意識はあるようで、俺の言葉に反応した。どう見ても平気ではなさそうだが。最悪救急車を呼ぼうかと考えていたけど、気持ち悪いと言う言葉……そして、こいつのしている格好。更に本日の夏のような炎天下。倒れた理由が分かった。


「……熱中症じゃん」

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