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1-8攻略対象その3、兄の登場①~additional~

 クロフォード公爵様が部屋から出ていくのを見届けた瞬間、へなへなと、その場に崩れ落ちた。

「私って、取りあえず勝負に勝ったのよね……」

 

 それは間違いない。一番危険な婚約者のポジションを避けることに成功したんだし。


「さすが、隠れキャラだわ」


 クロフォード公爵様もルーカス様と同じで、私に興味があるように見せかけた、嘘、なのよね。


「なのに、あの演技力」

 私を見て穏やかに頬笑むクロフォード公爵様が、あまりにも愛おしそうに見てきて。凄すぎるでしょう。ルーカス様とは比較にならないレベルだわ。


 ……だけど甘いわよ。

 かく言う私も、二度目、いいえ三度目の人生に突入した、悪役令嬢の称号を頂戴する身である。

 易々と攻略者へ引っかかるわけがない。


「彼の甘い言葉に乗せられてたまるもんですかっ! 絶対に、同じ過ちは繰り返さないんだから」

 一週間後だって、鮮やかに追い返してやるから見ていなさいよと、気合だけは十分だ。


 そのためには、兎にも角にも今の置かれた自分の立ち位置を確認すべきである。

 そう思った私は、慌てて自分の記憶を整理することにした。

 実のところ、このゲームについて、私の知識は相当に偏っているんだから。


『攻略対象その一』

 ルーカス・ゲルマン侯爵令息。

 十八歳(元婚約者)

 古城の見える海へ行った帰りに盗賊から襲われ、片足を失う。


 ルーカス様は、もう関係ないわね。

 昨日、人目に付く所で私は、しっかり、はっきり馬鹿にされて関係は終わったわけだし。

「ざまぁ」まで、ゲームを習って計画どおりに食らった。そういうことだ。

 それに今日海へ向かった彼は、もう外を歩くことはできないもの。


 ……それが分かりながら、引き留められなかったことは、少しだけ心苦しいけど、やれるだけのことはしたんだし。ここは割り切るしかない。


 これ以上、ルーカス様と会うことはないから、名前に大きくバツ印を付けておいた。

「よし、次!」


『攻略対象その二』

 ジェイデン・マッキンリー第一王子。

 ロードナイト王国の王太子。

 二十三歳。

 扱いやすい第二王子を押す派閥から、いつだったか毒を盛られる。


 あれ……。

 今までシャロンは、ルーカス様以外に興味はなかったのかしら。彼女であれば、逆ハーレムを目指してもおかしくないのになぁ。

 ゲームのキャラたちを魅了するシャロンが、意外に一途だというなら、明日以降、献身的にルーカス様のお世話でもしているでしょう。良かったわね。


 ……それよりもだ。

「王太子ねぇ……」

 私とは全く接点もなければ、夜会や舞踏会に行かなければ、すれ違うこともない存在だ。


 この国にとっては断然、第一王子が王位を継ぐべきなんだけど、一番初めに盛られた毒のような薬が、後々まで、政権争いの尾を引くのよね。

 薬かぁ……。

 大事なことだから思い出したいのに、駄目だ。

 振り絞ったところで一ミリも思い出せない。

 初めの薬は、いつ、第一王子に仕掛けられるのか?

 それさえもはっきりしない。

 そもそも、このルートをやり込んでいないから、記憶を手繰るのは難しそうだ。


「……よし、ここも割り切って次へ行こう」



『攻略対象三』

 セドリック・バーンズ侯爵令息。

 二十四歳(私の兄)


 何が起きるか、……不明。


「ははっ……。不明って」

 どうして、肝心なところを何も覚えていないのよ、バカバカ。


 それは、一先ず置いておいて、先に進むか。

「甘いマスクの覇者」のヒロインがシャロンだから、お兄様が攻略対象にいるのは、妥当と言えば妥当。

 あー見えて、お兄様も侯爵家の嫡男だものね。


 我が家だって代々続く名家だし、三LDKの家で十分広いと思っていた湊の感覚で言うなら、この屋敷は家じゃない。お城と呼べるやつだ。


 いわゆる召使と言う従者だって、歩く先々ごろごろ見かけるくらい溢れている。

 我が家の潤沢な資金を、他の貴族から疎ましく思われているんだっけ。


 そんなわけで、攻略対象に私のお兄様までいるのだろう。


「シスコンお兄様は安全圏」

 と考えても問題ないはずだ。


 だけど、攻略対象の五人は、何かしらの形で必ず不幸に見舞われる。

 だからお兄様にも何かが起きる。それは間違いない。


 う~ん。

 しばらく話を脱線させて時間をおいたけど、お兄様の不幸は少しも思い出せない。


 私ってば、シャロンの好感度を上げるイベントをことごとく阻止したくせに。……とんだ兄不幸な妹だ。


 実のところ。知性派のお兄様は、湊の一押しキャラだった。

 だから、分からないはずはないのにな。

 ……まだ、前世の記憶が曖昧なのかもしれない。


 お兄様にいずれ訪れる不幸。

 もう少し記憶が整理できれば思い出せそうだけど、今はさっぱりだわ。


「『シスコン』とは、何を意味するんだい?」

 声の聞こえた方向を見れば、黄緑色の瞳を向けるお兄様が、不安げな顔で立っていた。

 いきなり現れたお兄様に動揺し、挙動不審な私は視点が定まらずにいる。


「おっ、お兄様。レディーの部屋へ入るなら、ノックくらいしてください」


「ノックはちゃんとしたさ。でも、アリアナが夢中になり過ぎて聞こえていなかんだろうな。返事はなかったけど、部屋の中からブツブツ聞こえていたから入ってきてしまったよ。っで、シスコンって何かな?」


 出たっ!

 納得するまで次に進まない細かい性格のお兄様が、シスコンに突っかかって、首を傾げている。



お読みいただきありがとうございます。

誤字報告を送っていただいた読者様、ありがとうございます。

大変ありがたく受け取っています。

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