1-7 まさかの公爵様ルート突入。拒絶すればするほど裏目に。②~rewriting~
今後の展開に関係する改稿をしております。
ご注意ください。
感情的な私とは対照的に、怖いくらい真面目な顔のクロフォード公爵様は、淡々と話を続ける。
「おかしなことではないだろう」
「いいえ! 私はクロフォード公爵様のことを何も知りませんし、お慕いできません」
「じゃあ、私のことを知ってもらうために、一緒にどこかへ出掛けよう。そうだな……」
その先を、言わせてなるものかと間髪を容れずに話の腰を折る。
「できません! 体調も万全ではありませんから、しばらく部屋からでることもないでしょう。だから、警護もパートナーも、婚約者も望んでいません。心配はご無用です!」
ふっ、言い切った。
これで、私の勝ちだ。そう思った私は安堵の笑みがこぼれる。
「くくっ。では分かった。部屋から出られないあなたを、一週間後に見舞うことにしよう。まだまだ体を動かすのは大変そうだしね」
こいつは……。
パチパチと激しく瞬きする私は、クロフォード公爵様が、何を言い出したのか理解できずにいる。
そんな私の気持ちが、おそらくクロフォード公爵様に伝わったのだろう。
「私は警備の責任者だからね、あの夜会で起きた事故が解決するまで見守る必要があるんだよ。『感謝しかない』と言うのが嘘ではないなら、協力してくれるだろう」
至極冷静な口調で、クロフォード公爵様から言い切られてしまった。
……それでも私は、これ以上、ざまぁを食らうのは断固拒否したいんだ。なんと言っても、私は彼の「ざまぁ」を知らないままだし。ここで引く訳にはいかない。
「あれ、もう治った気がします」
「そう? ……あなたの侍女が『体調が万全ではないので、ドレスを着られなかった』と言っていたけど、どちらが本当なのだろうか」
「あの侍女は、大袈裟なので」
「そうなのか。客人に虚偽の報告をする従者は容認できないな。私にとっては死活問題だからね。……と、なると当主へ確認すべきだな」
クロフォード公爵様の眼光に鋭さが増した。
ふ~ん。やっぱりそうなのね。
この顔こそが、このクロフォード公爵様の本当の顔だわ。
私を捨てたルーカス様も最後だけ、……そう、昨日だけ、この顔を私に向けた。
そのおかげで、こちらはしっかり学習済みである。
今度こそ、絶対に騙されないんだから。
この男。エリーまで人質にとって、私を脅す卑怯者だ。許せない。
自信ありげな彼は、堂々とした態度で私の返答を待っているようだ。
ふんっ、どっから来るのよ、その自信。
そう思う私は、少し前の言葉を思い出し、次に返す言葉を慎重に探す。
彼の申し出を聞いて、瞬時に見舞いのシチュエーションを想像した。アリアナには経験がないから、日本流の湊のイメージでね。
静まりかえる部屋で、二人きりになる。
そんなのは危険な気がして、「治った」って、言ったのよ。だから……。
……おや。
私、もしかして、まずいことをしていないだろうか。
嘘を吐いたのは、エリーでもなければ、彼でもない。私じゃない!
このまま嘘を貫くべきか?
ちらりと彼の顔を見れば、私の心の奥まで見透かしている気がする。
駄目だ。ここは、一先ず大人しく引き下がるしかない。
「わざわざ足を運ばせるのが申し訳なかったのですが、一週間後ですね、お待ちしております」
エリーの余計な気遣いに内心いら立ちを覚えるものの、泣く泣く、わざとらしい笑顔を添えるサービスまで付けておいた。
それを見て、満足げな顔をしたクロフォード様は「見送りは不要と」言い残し、部屋を後にした。
とりあえず、エリーのことは不問にできたから、よしとしよう。
お読みいただきありがとうございます。
次話以降は当面、additional ストーリーが続きます。