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2-23作戦会議②

「アリアナの勘は無視できない。……それであれば、事情が変わった」

「どうして?」

「ジェイデンのやけ酒の原因が、サミュエル殿下の婚約者だ」

「えっ、どこから婚約者なんてやって来たんですか⁉ 聞いた記憶がないけど……」

 ゲームの中で、そんな素振りもなく、香澄だってそんな話はしていなかった。

 聖女の実を授ける者が直ぐに決められないから、王太子を眠らせたと思っていたけど、違うのか。


「あぁ、その話なら花の祭典の日に私も耳にしました。二週間後に大聖堂の前で、貴族たちを集めて婚約者をお披露目すると。近々、正式な知らせが、陛下から当主宛てに届くはずです」

「お兄様! そのときのサミュエル殿下は何か他にも仰っていましたか!」


「ジェムガーデンの花が一本も残っていないことに驚いていたな」

「他には?」

「唯一残る、ジェムツリーの鉢植えを『これしかないのか』と持ち上げたくらいか。とても、鉢植えの呪文が読める素振りには、見えなかったけれど」


「殿下の婚約者は、どなたですの⁉」

「お相手はどんなに聞いても、最後まではぐらかされたけどね」


「ジェイデンの話しぶりだと、男爵令嬢だとは思うが、可憐で、優しくて気遣いの出来る慈悲深い令嬢らしい。私はあまり令嬢に詳しくないから、どこの家の令嬢をさすのか分からないけど」


 一同に首をひねる。

 そもそも男爵家の令嬢で知っているのはシャロンくらいである。貴族の下位に位置する令嬢となれば、ここにいる私たちと、ほとんど関りもないのが社交界の実情。


「聖女の素養がある立派な御令嬢と言うだけでは、彗星は破壊できないんです。ブライアン様、お兄様。四の五の言っている場合じゃないから、さっさと聖女の実をいただきましょう」


「いや、それは駄目だ。アリアナが危険過ぎる。私たちはサミュエル殿下に思うところはあるが、彼は、れっきとした王位継承権第二位の王族だ。下手な動きをするとアリアナが取り返しのつかない形で巻き込まれる」


「それだと、何かあったら……」


「大丈夫だ。アリアナにバーベナを託した帝国のアルバート殿下が何かを知っているのだろう。王城内では常にサミュエル殿下の近くにいるが、帝国に帰るときは一人だ。どちらにしても、アルバート殿下の警護を強化する必要があるから私が殿下の護衛に付く。そのときに何かを聞き出すから」


「待って。そんなことをすればブライアン様が危険です。アルバート殿下が、弓で打たれる姿が見えますし」


「そうであれば、ことさら私が動くしかない。みすみすアルバート殿下を暗殺されてしまえば、帝国との戦争に繋がりかねないからね。……よしっ、セドリック殿、ここから速度を上げる」

 そう言って、私たち三人の会話は終わり、一気に馬が加速する。


**


 日付も変わった時間。バーンズ侯爵家の屋敷の前に到着した。そうすれば、ブライアン様に抱えられるように馬から降りる。


 途中何度か休憩はしたが、それでも地面に足を着けた途端、ふわふわとする感覚に襲われる。それに、気付いた兄がすかさず横に並んで支えてくれた。

 相変わらずの過保護ぶり。さすがシスコンと兄を見つめるが、険しい顔をしている兄は何も言わない。


「アリアナ、無理な長旅になってしまって申し訳なかったね」

 恐縮げに話すブライアン様へ、「いいえ」と答えた。ブライアン様とお兄様の方が余程お疲れたはずなのに、二人はそんな姿を微塵も見せないのだから。


 この中で唯一、ドーピング済みの私が「疲れた」とは、とてもじゃないが言えない。ましてや、兄への警戒疲れとはね。


「アルバート殿下が出発するのは予定では三日後だ。その翌日にはアリアナの予見の台風が来るのだろう。しばらく会えないが、必ず会いに来るから」


「アルバート殿下の御一行と、本当に北の国境まで向かうのですか……」


「ああ。それが一番希望のある方法だからね」

「お戻りは、いつになりますか?」


「そんなに不安そうな顔をしなくても大丈夫。何も起きないよ。片道二日は掛かるが、サミュエル殿下の婚約発表の二日前には戻れるから、対抗策も練れるさ」


「私のせいで……申し訳ありません」

「ん? どうしてアリアナが謝るのか分からないけど」


 だって……私がダリアをブライアン様に渡したせいだもの。


「ねぇ、ブライアン様。私に何か言い忘れていませんか? ほら!」

「ああ、そうだね。さあ、セドリック殿と屋敷へ戻って、ゆっくりお休み」


 違ぁ~う! それじゃない。

 いつもあったでしょう。「最愛の~」とか、「聖女のような~」とか臭い台詞が。いつもの自信たっぷりのやつ。それがないと、ブライアン様らしくない。それが聞きたいの。そんな寂し気に「会いに来る」と言われても、不安でしかない。


 こうなれば私から言ってみるか。


 いや……駄目だなと、横にいる兄をチラリと見て冷静になる。

 仕方ない、今日は諦めるかと、穏やかに頬笑むブライアン様に「はい」と伝えて別れてしまった。


お読みいただきありがとうございます。

次話は、ブライアン視点に戻ります。

引き続きよろしくお願いします。

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