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1-26花の祭典①~additional~

よろしくお願いします。

 花の祭典当日。

 とうとう今日を迎えてしまった。


 どうせブライアン様に気を許したところで、報われない。

 結果的に酷い仕打ちで捨てられるのだから、好きにならないって心に決めている。もう、泣きたくないし。

 だけど、町で会ってからというもの、ブライアン様の顔が頭から離れなくて参っている。


 そんな私の悩みを知ってか知らでか、嬉しそうに笑うエリーが、私を茶化し続けること一週間。


 ……そのせいもあるのだろうか。

 あれから、彼からの「愛してる」の言葉に取り付かれた私は、何も手につかないのだから。

 彼のことを常に考える私は、隠れキャラの手中に嵌ったのだろう。


 そう……。

 前回食らった断罪と、まるっきり同じ流れを辿っている。

 元婚約者のルーカス様。

 彼から邪険に扱われていたのは明白。それなのに、そんな彼を「領民のためを思うルーカス様♡素敵」と、馬鹿みたいな好感を抱き、慕っていたくらいだ。全く以て、どうかしていた。


 今だって。ブライアン様が「ざまぁ」を仕掛けるのは痛いほど分かっているのに、心を寄せる自分がいる。

 騙されては駄目だと否定しても。私を助けてくれた彼が頭の中に出てきて、彼の存在が大きくなる。


 どこまで行っても悪役令嬢のバイアスに翻弄される私は、バクバクと煩いくらいに、彼に胸がときめく病気に罹った。

 ……となれば断罪の準備は全て整ったのだろう。

 そっけなかった元婚約者から「ざまぁ」される直前より、断然、今の方が興奮しているのだから。


 断罪の先にいる好色おやじから絶対に逃げたい私である。だけど、ドーナツ屋計画を実行に移す前に、私の「ざまぁ」が始まる気がしてならない。



 私を窮地に落とす加担をするエリーは、今、目の前で満面の笑みを浮かべている。


「良かったですね、お嬢様。今日はクロフォード公爵様から、どんなプロポーズの言葉があるのでしょうか」

「は……。されても困るわよ」

 嘘で告げられる求婚。

 私一人で浮かれ、馬鹿にされる屈辱は御免被る。


「何を言うんですか? ご主人様はどれだけ期待しているか知っていますか。公爵様に遠慮なんてせずに、ガッツリ胸ぐらを掴んでくださいね」

「それを言うなら、胃袋でしょう」

 エリーへ冷めた口調で訂正すれば、やれやれとため息をついた。


 先日。「誰も食べたことのないもので胃袋を掴み、虜にするんだから」と、ドーナツ屋計画の意気込みを語ったのを、盛大に勘違いしている。


 胸ぐらって……。

 そんなものを掴んだら、おかしな事態にしかならないから。


「何でもいいんですよ。あんなに大きなジェムガーデンの花束を、お見舞いに持ってきて、ご主人様は腰を抜かしていましたからね」


「エリーは、お父様にも見せていたの! 次から次へと、お父様に要らない話を聞かせないでよ。相当に勘違いしているでしょう」


「ご主人様へ報告するのは、私の義務ですから。それに、勘違いではありませんよ。クロフォード公爵様が、あの馬鹿男にやきもちを焼く程、お嬢様にぞっこんなんです。お嬢様と庭でお会いした後は、真っ青な顔でふらふらとお帰りになって、お可哀想でしたよ」


「だから、それが適当な解釈だと言ってるのよ!」


 私が「新たな恋を拗らせている」とお父様から心配されているのは、こいつが犯人だ。

 エリーの出鱈目な話を聞かされたお父様が、舞い上がる事態に陥り、私の婚約を期待している。

 勝手に盛り上がるのはいいですけど、結局のところ、振られますよ、私。


「あれ。どうしてここにジェムガーデンのバラがあるの?」

 ドレッサーの鏡の前。赤い一本のバラが、白い陶器の一輪挿しに、ちょこんと活けてある。昨日、寝る前にはなかったはずだ。


「今朝早く、セドリック様が置いていったんですよ。さあ、準備をしましょうね。最後にバラも着ければ完璧ですね」

 首をブンブンと横に振る。



「駄目。そんないらないことをしないでよ」

 ブライアン様とは恋人でも婚約者でもないんだから、赤い花なんて着けられてたまるか。


「あ~。なるほど。そういうことですね。お嬢様のお気持ちは分かりましたから、エリーにお任せください」

 自信ありげに自分の胸をポンと一つ叩いたエリーが、不敵な顔で、にやっと笑った。

 


「……何をする気」

 どうせ、熱くなったエリーは、言っても聞かないのは承知しているし、面倒に思えて諦めかけたそのときだ。


 鏡越しに、深い青のワンピースが掛けてあるのが見えた。


 どこから来たんだ、それは?

 そんなの今まで見たことがない。

 まさか、私に着せる気か!

 アレはまずい。

 ブライアン様は、勝手に前向きな解釈をする痛い男だ!

 そのせいで、ありもしない約束をでっち上げ、名前呼びを強要される関係に発展した。

 彼を意識した色を纏えば、危険しかない。これ以上の混乱を招くのは、やめて頂戴。


「エリー。今日の服は緑って決めているから!」

「どうしてですか? 青いワンピースは、ご主人様の指示で、大至急、新調したものですよ」


「嫌よ。今日のラッキーカラーは、緑だから」

「何ですか、それは? 誰が決めたんですか? そんなことよりも、ご主人様の指示ですから、着てもらわないと怒られます」

 目を吊り上げるエリーに聞く耳はない。


 乙女ゲームの世界。

 適当に主張したラッキーカラーは信じてもらえず、やる気全開のエリーとの攻防はしばらく続く。



お読みいただきありがとうございます。

しばらく花の祭典が続きます。

引き続きよろしくお願いします。

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