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1-24ズレた歯車⑥~additional~

よろしくお願いします。

 気まずそうに、どこか言い訳を探している様子のクロフォード公爵様。

 彼の言動を根に持つ私は、彼に、おもいっきり非難めいたことを言おうと、喉まで出かけた。

 だが、思い留まった。


 冷静に考えてみれば、彼は、様子のおかしいルーカス様を私から引き離してくれた、恩人であることに変わりはない。


 全く隙のない貴族姿のルーカス様とメイド姿の女。

 その二人が言い争ったのでは、どうやっても私の不利だ。

 いくら私が見苦しく泣き叫んでみたところで、庶民が彼を咎められないのも事実。


 なかなか手を離してくれなかった彼の執念。あのままでは、抱え込まれて連れ去られても、おかしくはなかった。

 今、私の横で困り顔をする彼がいなければ、今ごろどうなっていたのか分からないし、考えただけでゾッとする。


 もちろん。クロフォード公爵様の「ざまぁ」に引っかかる気はない。だけどここは、彼の罠に嵌った体でいくか。


「お恥ずかしいところを助けていただき、ありがとうございました。部下の方もいたのに、ご迷惑をかけてしまい、申し訳ありません」

 これでも良識のある大人の私は、心からの礼を告げる。すると、心なしか元気のない口調が返ってきた。


「いや、謝る必要はない。助けるのは当然のことだから。むしろ謝るのは私の方だ。昨日、アリアナと呼ばれるのは嫌だとはっきり言われていたのに、あの場で咄嗟に、そう呼んでしまった。だから、怒っているのかな」


「いいえ、助けていただいて文句などありません。私のことは、お好きに呼んでください」

 

「そうか。それでは遠慮なくそうさせて頂く。となれば、アリアナの機嫌が悪いのは、彼の処分が甘過ぎたせいだろうか? やはり彼を拘束すべきだったな。戻って訂正しようか」


 真面目な口調で話す彼が、のぞき込んでくる。

 いやいやいや。

 既に十分でしょう。

 二人の騎士に睨まれ、必死に豆を拾う彼は、今ごろ商人たちの見世物になっているはずだ。

 私の名誉に関わる事態になるし、これ以上、何もしてくれるな!

 

「ふふっ。それ、ちっとも冗談に聞こえないですから。私は手を掴まれただけなのに、騎士団を動かすのは大袈裟ですよ」


「冗談ではない。本気だ。私を前にしても直ぐに手を離さなかった彼は、どう見ても、アリアナをまだ諦めていないようだし。でもねぇ、今日のアリアナの服装を見れば、こっそり屋敷を飛び出してきたのが分かるから。穏便に済ませたほうが、得策だと思っただけだ」 

 怖いくらいに私の心情を見抜く彼に、ドキリとさせられた。


「随分と遠くから、私だとよく分かりましたね。ルーカス様は近くで見ても、はっきり分かっていなかったのに」

「勇敢なアリアナの立ち姿は、目に焼き付いているから。どんな格好でも、直ぐに分かるよ」

 目を細める彼は、恐ろしいことを、ぬけぬけと言ってくれる。勇敢って……コレもゲームの決まり文句なのかしら。


「実は、昨日も王城でアリアナを見掛けたけど、元々予定があったのだろうか。そうとも知らずに無理を申したようで、気になっていたんだ」


「見られていたのは、少しも気付きませんでした。昨日は、急に本を読みたくなって、王城の図書室へ行っただけですから」

「図書室……。令嬢が読んで面白いものが、あっただろうか」

「ありましたよ。私、聖女が隕石を壊したのを知らなかったので、とても驚きましたわ」


「……えっ。アリアナは古代文字が読めるのか?」

「まあそんなところです。だけど何故、国を守った聖女様の大活躍を知らなかったのか、不思議なんですよね」

 クロフォード公爵様が、目を丸くして驚いているけど、私に古代文字が読めるはずがない。

 お兄様なら別だけどね。

 私が読んだのは、日本語で書かれた聖女の記述だし。


「アリアナ……。あの本を最後まで読まなかったのか?」

「あー、時間がなくて途中で読みやめてきましたけど」


「そうか。古代文字は、王位に関係する者しか継承していないからね。正直、アリアナから古代文字を読めると聞かされても、まだ信じられないけど」

「あれ? 古代文字を読めるって、そんな珍しいことだったんですね。知らなかった」

 まずいことを口走った気がする。

 セドリック・バーンズが、ゲーム中で披露した知識。それは、全て独学で身に着けたものだと、たった今理解した。



「この件に関する聖女の話は他言無用だ。禁止令が出ているからね。私は知っているから構わないけど、どこで誰が聞いているか分からないから、それ以上、言わない方がいい」


「そうですか。分かりました。兄からも同じようなことを言われた気がします」

 お兄様から言われたのは、聖女の呪文に関してだけどね。

 どっちも似たようなものでしょう。


「なるほどね。アリアナに古代文字を教えたのは、セドリック殿だな。彼ほどの分析力があれば、あれを読み解くのは、訳ないのか」

「あはは」

 どうしよう。

 そうじゃないけど、否定も出来ない事態に話が進んだ。

 でも、この話は世間話で交わすことではないようだし、クロフォード公爵様がお兄様へ、わざわざ問い詰めることはしないでしょう。

 勝手に勘違いして、話が解決したなら、それでよしとしよう。


 だけど、なんだろう。

 禁止令……。

 このロードナイト王国の聖女伝説。何か裏がありそう。

 私が読んだ聖女の日記。

 初めの頃は、庭へ魔法をかけた結果、花に付与された効果を、国民が誰でも摘めるようになっていた。

 国民から慕われる聖女様の様子が伝わったけど。


 でも、今は呪文を加えてある。

 魔法に、まるで自分しか開けられない、鍵をかけるように。



「…………アリアナ、大丈夫かい? 聞こえている?」


お読みいただきありがとうございます。

次話のタイトルは、これから悩むことにします。

応援いただきありがとうございます。

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