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1-19ズレた歯車①~additional~

よろしくお願いします。

 クロフォード公爵様を追い払い、外へ出る準備を整えた私は、調べものをしようと王城の図書館へ向かった。それまでは、至って順調に進んでいたのよ。


 だが、そこから戻ってくると、私の居室にクロフォード公爵様の置き土産が、鬱陶しいほどの存在感を放ち、居座っている。


「げぇっ。この部屋に、どうしてこの花が飾ってあるのよ!」

 この不吉な代物は、その辺に適当に置いて来たはず。誰が持ってきたというのだ。

 部屋にいたエリーを「犯人はお前か?」と、じろりと睨めば、悪びれもせず自供を始める。


「どういうわけか厨房のバケツに入っていたので、持ってきましたよ。この場所が、一番目立ってよろしいかと存じましたが、駄目でしたか?」

 エリーが平然とした口調で答え、首を傾げた。

 

 いやいやいや。エリーは、分かっているでしょう。私の気持ち。

 どういうわけもない。わざとだし。拾ってこないでよ。


「駄目に決まっているでしょう。ここにあった、ウサギのぬいぐるみは何処へやったのよ。元に戻してちょうだい」


「そういうことですか。エリーも迷ったんですよ。やはりお嬢様のベッドの横へ移しましょうね。そうすれば、寝ても覚めてもクロフォード公爵様とご一緒ですわね」


「はっ。不吉なことを言わないでよ。エリーが見つけた元の場所へ、戻してきなさい」


「何を仰っているのですか? クロフォード公爵様が『お嬢様♡愛してる』と贈られたお気持ちを、他の何処へ持っていけと言うんですかっ!」


「ご生憎様。クロフォード公爵様から言われてないわよ、そんなこと! この私が、言わせるわけないでしょう。彼とは二度と会わないし」

 乙女ゲーム「甘いマスクの覇者」で、攻略キャラを落としたサインが「愛してる」と、呟く一言。

 それをさりげなく会話中に言われたら、こっちのもの。

 それまで釣れない攻略キャラが、気を許してどんどん甘々になっていくのだから。ゲームでプレイしていた湊は、きゃっきゃっと喜んでいたっけ。


 だけど立場が現実の悪役令嬢となれば、話は変わる。

 まかり間違って攻略キャラに「愛してる」と言わせたら、どうなるか? 知らない以上、ただの恐怖でしかない。


「お嬢様……。一度、馬鹿男にいいように弄ばれたから、疑心暗鬼におなりなんですね……。お可哀想に。なんだか不憫ですわ」

「ちょっと! 他に言い方ってものがあるでしょう。失礼よ」

「あー、この言葉、厨房の者たちが口を揃えて言っていたんですよ。それでも厨房に戻してきますか?」


「はい? どうして私の婚約解消の話が、厨房の中にまで知られているのよ。さてはエリーの仕業ね!」


「違いますよ。夜会の日、ご主人様が倒れたせいで、屋敷中の者たちが馬鹿男の行動を知っていますからね。厨房の者たちは、クロフォード公爵様から贈られたジェムガーデンの花を、お嬢様が一人で隠れるようにバケツへ入れる姿を見て、泣いておりましたよ」

 むしろ、それは真面目な顔で言わないでくれと思う。

 笑い飛ばしてくれた方が、まだマシだ。


 厨房で気遣うような視線を向けられたのに、誰も声を掛けてこなかったのは、腫れ物に触るように扱われていたってことなのね。

 ……それなら、そうと事前に教えてよ。


「……仕方ないわ。花をここに置くのは、よしとしましょう。だけど、それにしても活けるセンスがないわね。無理やり一つの花瓶に入れなくても、分ければいいじゃない」


 大きな花瓶でも収まりきらない花々が、無理やりぎゅうぎゅうに押し込められている。

「愛の証し、ジェムガーデンの花ですからね。分けるのはよろしくありませんので」

「全く持って不要な気遣いなんですけど」

「まあまあ、そう仰らず。では、私はこれで失礼いたしますね」


 彼の思惑があっても、聖女様の花々であるのは、間違いない。花に罪はないからありがたく頂戴しておくか。

お読みいただきありがとうございます。

次話は②となります。

引き続きよろしくお願いします。

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