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1-16見舞い①~additional~

よろしくお願いします。

 私が王城の階段から落ち、あっという間に一週間が過ぎた。


 社交界で私の噂がどうなっているのか知らないけれど、屋敷の中に引きこもれば、至って平穏に時が過ぎている。


 大輪の花が色とりどりに咲き誇るバーンズ侯爵家の庭。

 この場所は、「とにかく目立つ花を植えればいい」と、派手好きなお母様の指示で、それはもう、残念なくらいに統一感がない。

 さっきから、馬鹿が付くほど大きい、季節外れの向日葵が、私を凝視しているようで怖い。

 この庭に、向日葵はないわと思う。


 庭師も同じことを思っているけど、言えば怒り出すお母様へ、誰も何も言えないのである。


 色んな意味でげんなりする私は、庭のガゼボの中に置かれた、白くて丸いテーブルの天板の一点を凝視しながら、クロフォード公爵様を待っている。


 いいえ。ここは正確に言うべきだわ。

 クロフォード公爵様を、お父様からの命令で、「待たなくてはいけない義務を課せられた」って話だ。

 

 彼が私の部屋を訪ねたあの直後。

 クロフォード公爵様は、わざわざお父様へ手紙まで送りつけてきて、見舞いの日時を指定したのだ。そう、悪役令嬢の私の「ざまぁ」に向けて、外堀から埋めてきたのよ。


 ……でもね。

 その手紙でとうとう、クロフォード公爵様が、ただならぬ気配の片鱗を見せてきた。

 私宛の手紙には、「愛の告白じみた言葉」と共に、「聖女のような慈悲深い笑顔を、もう一度見たい」って書いてあるのだ。


 いやいやいや。

 もう一度ってあなた。いつ見せた、そんな笑顔?

 見せていないでしょう、彼に慈悲深い笑顔なんて。

 彼が幻覚を見たのでなければ、「乙女ゲーム」の中で、彼のルートにある、決まり文句なんだと思う。いいえ、間違いなく、ゲーム中の何かが起きている。

 彼が私へ「ざまぁ」を仕掛けていることは、手紙を読んで確固たるものになった。


 そんなこともあり、本日の私の目標は、彼との関係を今日で断ち切る。何としても。

 そう意気込む私は、二度と見舞いは必要ないと見せつけるため、庭で会うことにしたのだ。我が家自慢のがっかり庭園でね。


 そもそも婚約者でもない殿方と、部屋で二人きりにさせるなんて、お父様もどうかしているわよ。


 ってな訳で、不満たらたらで待っているのだ。

「お客様がお見えでございます」

 とメイドが発し、その方向を見やる。


 ……この男、やってくれたな。

 対面一秒で、クロフォード公爵様の並々ならぬ気配を感じる。

 敵ながら、あっぱれだわ。

 私の想像以上の張り切りを見せる彼が登場した。


 だって、だって、だって。

 クロフォード公爵様は、大きな花束を抱えているんだもの。

 黄色と白を基調にして、とても美しくて眩しい花々。嫌でも目がいき胸がときめいてしまうやつを。


 以前の私が、「きっと来年こそは」と思い続け、その日は来ることはなかった。いつかは自分も贈って貰えると信じていた、ジェムガーデンの花束に感じる。


 きれいだわ……。


 はっ……まずい。

 会話を交わす前から、またしても彼のペースに持っていかれるところだった。

 危ない危ない。

 ……冷静になるのよ。

 あの花に釣られてはいけないわと、とにかく言い聞かせる。


 クロフォード公爵様に冷ややかな顔を向けているのだが、彼は気に留める様子もなく、爽やかな笑顔をまき散らしながら駆けて来た。


 ……カッコいい。流石だわ、隠れキャラの恐ろしいまでのポテンシャル。

 あなたが攻略キャラでなければ、もしくは、私が悪役令嬢じゃなければ、とっくに恋に落ちている。それほどにドキドキしてる。


 ですがご生憎様。「ざまぁ」が進行中なのは、存じている。誰が引っ掛かるかっ。


 お父様の指示で、ただここにいるだけの私は、お仕事モード全開の白けた顔を返す。


「アリアナ嬢、今日はまた一段と美しいね」

「ごきげんようクロフォード公爵様。見てのとおり、ドレスも着られるくらい、すっかり元気になりました。ですから、もうお仕事の確認はできましたでしょう」

 ドレスのスカートを両手で持ち、軽快にくるくると回った私は、「さっさと帰ってくださいな」と、直球をぶっこんでみた。


「そのドレスの深い青は、私の瞳を意識してくれたのだろうか、嬉しいな」

「……はっ」

 聞き捨てならない。そんなものは、ほんの欠片も意識していないわよ。

 怖いことを言わないでよと、睨んでみたものの、彼の笑顔は止む気配もない。


 ……この人は、前向きなのか、嫌味が通じないのか、なんだか調子が狂う。

次話は②です。

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