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1-11元婚約者の後悔①~additional~ ※ルーカス視点

時系列で投稿していこうと決めた結果、ルーカス視点からになりました。

よろしくお願いします。

 僕はこれまで、シャロンから泣きつかれることが度々あった。

 その原因は、いつだって一つで「婚約者のアリアナがシャロンを虐めるから」という、許しがたいもの。


 アリアナは、三年前から、自分より立場の弱いシャロンを弄って楽しみ始めたのである。下衆な女でしかない婚約者。最低だ。


 それを知ってしまえば、所詮、政略結婚の相手でしかないアリアナへ、僕は義務的に役割を果たすだけに徹した。

 だがしかし、アリアナへ冷たい態度で接しても、僕の気を惹くように纏わりつく、痛々しい存在。何とかならんのかと思う。


 ……ある日のこと。


 シャロンが「僕が気に入ると思って」と、最近話題だというミートパイを持って、部屋を訪ねてきた。そして、会話の最中にアリアナの虐めを思い出し、ポロポロと涙を流す。


 今回の虐めは何かと思えば「いつも同じドレスを夜会に着るのは、貴族としてどうなのか」と、指摘を受けたらしい。

 正直なところ、僕は返答に迷ってしまった。貴族の世界では、そんな意見も、「あながち間違いではない」からだ。


「貴族であれば、多少の見栄は家名を守るための必要悪だろう」


「いいえ、違うのよルーカス。アリアナは、ただ傲慢な意地悪なの。『いつものドレスを着るなら、夜会に来るな』と言われたわ。建国記念の夜会なのに、あんまりだと思わない」


「そんなことを、アリアナが言ったのか? むしろ、各国の主賓を招く建国記念の夜会に、顔を出さない方が問題になるだろう」


「そうよ。それなのに来るなって。我が家にはドレスを買う余裕なんてないのに、あたし……夜会に行けないわ、どうしよう」

 そう言ったシャロンがぐすぐすと泣きだした。

 だとしても、ドレスのような高価なものは買ってやれない。そもそもアリアナにも贈っていないのだから、流石に無理な相談と言える。僕は直ぐに断った。


「僕は力になれない」

「当然だわ。建国記念の夜会にドレスを贈るとなれば、婚約者や恋人ということになるものね。あなたにはアリアナがいると分かっているのに、ルーカスからそれを受け取れば、あたしは都合の良い勘違いを起こしてしまうわよ」

 と、儚げな顔を見せる。その姿に胸が痛んだ。



 少し前の話だ。

 アリアナに招かれた茶会で、シャロンだけにお茶を出さないのだ。

 僕が見かねて注意すれば、信じられないことに、ぬるくなったお茶を従者に運ばせるのだ。それも事前に示し合わせていたのだろう、得意気な態度で。

 アリアナの性格の悪さは、常軌を逸しているのだと青ざめた。


 一人遅れてお茶を出されたことで、傷ついたシャロンが手を震わせてしまう。当然であろう、僕の方だって怒りで手が震えるのを、隠せていない。


 すると、シャロンはティーカップを滑らせてしまい、彼女の胸に落としてしまったのだ。


 あれが熱ければ大惨事である!

 それも、これもアリアナがシャロンへ嫌がらせをしたせいなのだが、僕が注意すれば「シャロンを守っている」と悪びれない顔で、意味が通らない言い訳を並べ立てる。


 一見、青いドレスであれば、染みが目立つことはないだろう。

 だが、ただでさえシャロンはドレスのことで悩んでいるのだ。僕は痛いほど知っていた。


 自身の婚約者の横暴を見かねた僕は、可哀想なシャロンへ、ドレスと宝石を贈ることにした。

 そして、それを受け取ったシャロンは、部屋を訪ね僕を誉めたててくれるのだから、なんとも心地よかった。

 健気なシャロン。彼女を害する者から、守ってあげる必要が僕にはあった。


 

 ……それに引き換え。何でも見透かすようなアリアナは、派手なドレスも相まって、気味の悪い悪女に思えた。


 常に平然とした顔で豪奢なドレスを纏うアリアナは、ドレス一着を心底喜ぶシャロンと雲泥の差。


 今日だって、思わず顔をしかめたくなるような、紫の豪華なドレスを着ている。

 贅沢を当然だと思っている不愉快な令嬢。僕にとっては、まさにそんな婚約者である。

 アリアナと二人でダンスを踊っているときのことだ。


「ルーカス様。私、花の祭典で髪にたくさん赤い花を着けて貰っている恋人同士の姿が素敵だと思うんです。私たちも、今年はやってみませんか!」

「いや。あんな、直ぐに枯れる花に大金を出すのは勿体ないだろう」


「そうですが、私、花が大好きなので、どうしてもやりたくて。花売りが売っている王家の花は、押し花にして大切にとっておきますから、ねっ」


「アリアナが勝手に着ける分には構わないが……」


「いいえ、そうではなくてルーカス様に着けて貰いたいんです。だって、赤い花は未婚の特権なんですよ。私も十八歳ですし、もう機会はないと思うから。それに、前にもお伝えしたかと存じますが、幼い頃からの憧れだったんです」


「そんないっときのものは、無駄でしかない」

 やはり、シャロンの言ったとおり間違いはなかった。

 アリアナは、贅沢で傲慢な女だった。

 あの会場で売られている、「王家の庭で育てられた高価な赤い花を、大量に買え」と言い出したのだ。それも一方的に感情を押し付けて。


 もう耐えられない。

 この夜会に来る前に、アリアナの父と婚約解消を決めてきて大正解だった。

 嬉しくなった僕は、アリアナへ微笑んでしまった。すると、何を思ったのかアリアナが笑顔で返してきた。


「そうですね。ルーカス様と一緒に行けるだけで、私は楽しいから、赤い花のことは忘れてください。そうでした! 実はね、その日着ていくのは、水色のワンピースって決めてあるんです」

 頬をほんのり赤くしたアリアナが、目を細めている。またこれだ。僕の気を引き、直前の我儘を誤魔化して。不愉快の極み。


「ははっ。まだ二週間も先の話なのに、気が早いだろう」


「だって、貴族として祭りを盛り上げるのも大事だって、お父様が言っていましたよ。なーんて言うのは建前で、ただ、花の祭典が好きで、一緒に行くのが楽しみで仕方ないんです」

 ふん。性格の歪んだアリアナと花の祭典へ行くわけがないのにな。こういう事には気付かないのか。愚かな女だ。



 アリアナとダンスを踊り終え、僕たちはシャロンと待ち合わせをしていた上階へ向かった。打ち合わせどおり、シャロンが階段の傍で待っていた。


 シャロンから、「今までの嫌がらせの結果を、アリアナへ突き付けたい」と提案され、二つ返事で快諾した。

 このまま放っておけば、次に誰が被害に遭うか分からないからな。これでこの卑劣な女も、少しは反省するだろう。


 出来れば社交場へ二度と来ないように、会場中に性悪女の顔を印象付けてやる。



お読みいただきありがとうございます。

次話は②となります。


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