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宜しくお願いします。
アミーとおじいさんは村へ戻る長い道を帰った。
おじいさんの右手には、ムーが居る籠がぶら下がっている。
ムーは籠の床に腹這いになって揺れに耐えている。
「ねぇ、おじいさん、僕の笛、どうだったかなぁ」
「素晴らしかったさ」
「でも、みんな凄かったよ」
「ああ、みんなも素晴らしかった」
「これじゃ優勝どころか、入賞もできないよ」
「なーに、お前の笛は、そんなものを望んじゃいないさ。笛の音は賞のためにあるんじゃない。思いを伝えるためにあるんだよ」
そう答えながら、おじいさんは先程までいた会場を思い出していた。
そう、あの時、アミーが舞台に上がった時、少しだけ会場がざわめいた。
「あら、舞台用の晴れ着を忘れて来たのかしら?」
「小さい子供だな、よくここまで予選通過できたものだ」
「あの子、膝が震えているわ。可哀想に」
「確か進行役はアミーって呼んでいたな」
「え、あの子がアミーなの」
やがてアミーが笛に息を入れると、会場は水を打ったように静まり返った。
まさに風に声があるなら。
アミーは舞台での自分や会場の様子を覚えていない。
笛を吹いている間は記憶をなくしていたかのように。
ありがとうございました。




