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それから、十年の時が経った。つまり、俺がミクトに戻って十三年、俺が神になってから十四年。
子育てに明け暮れる日々は目まぐるしくて、めくるめく時が過ぎていった。
「それじゃあ、お父さん。行ってきます」
フーラは十六歳になって、丁度俺が神になったのと同じ年齢になった。使徒である彼女が他と同じように成長するのか、不安だったが、今のところは特に問題もなく、すくすく成長していっている。隠れてやってる活動は変わらず不安だが、まあへまはしないだろう。そこら辺、如才がない子だし。
「待って、姉さん俺も行く」
「はーい、待ってますよ、ハイくん」
ハイデルンとギルフォードは十歳。二人も他の人間と同じように成長している。もっと言えば、二人とも優秀で、特待生にも選ばれた。親としては些かの心配はあるが、フーラやあの剣鬼の弟子にルゥさんの娘が先輩として導いてくれるだろう。
「ギル君はどうします?」
「僕はゆっくり行くから良いよ」
そんな三人のやり取りを見つつ、俺は朝食を口に運んだ。
朝は大体家族全員揃うのだが、今日は珍しく俺一人だ。丁度、新学期の時期というのもあるからだろう。
スフィアは例の如く、教授の後釜に、ルビーはそんなスフィアのアシスタントに教壇に立つこともあるらしい、マリアは婆ちゃんがそうだったように学園の臨時講師、スカベラは情報収集のエキスパートとして国軍に協力している。
とまあそんな感じで、教職についてる奴が多いということもあり、今の時期は忙しいんだろう。そのため、俺はこの時期には大体長い休みを取っている。
フーラとハイデルンが家を出た頃、電話の音が鳴った。着信先を見ると、ルファの名前が。
「ようルファ、どうした?」
【おはようございます、今大丈夫ですか?】
予想通りというかなんというか、あれから程なくしてルファはウィルと結婚した。直ぐに子供も生まれて、ハイデルンたちとも仲良くやっている。両親の血を受け継いで非常に優秀な魔力量と適正で、将来的にはマギエに留学するつもりだとか。
「ああ、大丈夫だ。ゆっくり話してくれ」
俺はルファの声音に真剣な色を感じて、彼女の話の続きを促した。緊急性がある、というほどでも無さそうだが、シリアスな話になる予感がした。
【ええ、実は―】
*
僕は朝食を食べながら、二人の会話を、っていうか父さんの、言葉に耳を傾けていた。
ルファおばさん、ってことはサファイアになんかあったのかな。父さんが真剣な声で話している様子を見て、僕はそんな想像をしてしまった。
「分かった、今行く」
そう言って、父さんは電話を切って、僕のことを見た。
「悪い、ギル。ちょっと、用事が出来た。悪いけど、食い終わったら食器片づけといてくれ。帰ったら洗うよ」
「父さん、サファイアに、なにかあったの?」
「サファイア?」
父さんは首をかしげてから、少しだけ笑った。
「あー違う、サファイアの話じゃない。心配するな、もう少ししたらいつもみたいに家に寄ってくれるさ」
父さんが言うと、家のベルが鳴って、ドアが開いた。
「ギルー」
「ほら来た。お前は心配しないで、学校行ってこい」
「う、うん」
僕はちょっとだけ迷ってから頷いて、残っていた朝食を急いで食べた。
(じゃあ、何があったんだろう)
僕は、二人の電話の内容が何だったのか、疑問に思いながら、バッグを持って玄関へ向かった。
*
「え?何もなかったよ?」
僕は学校に行く最中、あの電話の内容が気になって、サファイアに聞いてみたけど、彼女は何も知らない様子だった。
「案外しょうもないことなんじゃないか?」
「うーん、そんな感じじゃなかったけどなぁ…」
プラチナがにやにやしながら僕の頭にのしかかってくるのを、僕は受け止めながら自分の意見を言った。
(どっちにしろ、確かに気になるね)
無口なゴーズが通信機に文字を打ち込み音声を出して、同意してくれた。
「これは、あれだな。私らで調べるか」
「えーやだよ。もしかしたら、ママがおじさんと浮気してるかもしれないし。そしたらトラウマ」
(親への信頼がなさすぎる)
「僕もトラウマだよ、それ」
そんな風に雑談をしながら、最終的には皆で調べて見ようということに決まった。サファイアは口では嫌がっていたけれど、興味津々なのは見て分かった。
「それじゃ、学校終わったらサファイアん家集合ね!」
「おっけー」
僕らはそう約束して、学校へ向かった。




