表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
87/100

Re:プロローグ 

 わたしは、フーラ。フーラ・アドヴァルト。今年で、6才になります。

 あたしは、カテーナ。カテーナ・アドヴァルト。多分、3才?


 お母さんとお父さんと、お母さんとお母さんとお母さん?あってるかな、のこどもになってから、3年です。

 ついてって、よかった。マリアも、ブロンズも、ルビーもスフィアもスカベラもやさしい。ルーデンもアイアンもルファもナインハルトもいっぱいいる!みんなやさしい!


 今日は、入院しているルビーお母さんに会いに行きます。

 今日は、新しい家族がふえる日!楽しみ!



 婆ちゃんの死から、一年と少し。世界はまだ、一応の平穏を保っていた。

 あれから天使たちに大きな動きはなく、それどころか侵攻の手も一時期に比べ緩んでいる。魔王の復活は音沙汰もなく、ダンタリオンたちは沈黙を保ち、徒党を組んでいるという噂の神々も息を潜めている。

 嵐の前の静けさ、と言われればその通りなんだろうが、今だけは、この静けさに安堵していた。何故なら。


 二階から、ドアが開く音が聞こえて、それから小さな足音がとことこと駆けてくる音が近づいてきた。俺は読んでいた本をテーブルに置いて、その足音がこちらにたどり着くのを待つ。


「おとうさん、準備できました」


 その足音の主、フーラは、俺に向かって、笑顔でそう言った。俺はそんな、彼女の頭を撫でて、自然と笑顔になる。


「一人でちゃんと着替えられてるな、偉いぞ」

「当然です。今日からお姉ちゃんですから!」


 胸を張って言う彼女に、また口元が綻ぶ。

 

 フーラがうちに来て、2年半くらいか。最初は遠慮がち、というか、どこか俺たちを恐れていた様子だったが、最近はすっかり馴れてくれたみたいだ。そして、俺たちも彼女に馴れてきた。こういうのはおこがましいかもしれないが、初めての子育てだ。些か以上に、困難はあったし、これからもきっとある。


「よし、それじゃ行こうか」

「はい」


 俺が手を差し出すと、彼女は小さな手でぎゅっと握って、一緒に歩き出した。


 実のところ、子育てについて、一番恐れていたのは俺だった。ほら、良く聞くだろ、虐待の連鎖とかさ。正直、俺はそうなるんじゃないかと、ずっと怖かった。

 だが、少なくとも今のところは大丈夫だ。考えれば、親は俺だけじゃない。ちゃんと愛されて育った奴も多いし、更に言えば俺だって、愛されなかった訳じゃない。

 だから、きっと、この先も大丈夫だ。精々胸を張って、この子の親でいよう。


「赤ちゃん、どんなかなあ」


 期待で胸を膨らませるフーラの手と鎖を握りながら、俺たちは病院へと向かった。



 私は、お父さんと一緒に、病院に行きました。ここに、ルビーお母さんは入院しています。

 私も、入院したことのある病院だから、お父さんをあんないしようと思ったけど、お父さんはまよわずに病室まで行っちゃいました。ちょっとざんねんです。

 

「ルビー、俺だ」

「はーい。入っていいよ」


 ノックしてから、お父さんは病室のドアを開けました。

 病室には、ルビーお母さん以外に、マリアお母さんとルーデンお姉ちゃんがいました。


「フーラちゃん、こんにちは」

「こんにちは」


 お姉ちゃんが抱きしめてくれたから、私もぎゅっとする。

 それから、私はお母さんのところへ行って聞いた。


「おかあさん、大丈夫?」

「大丈夫だよ。ありがとね」


 ルビーお母さんはそう言って頭を撫でてくれた。

 よく見ると、お母さんは病院の服じゃなくて、普通の服を着ていた。なんでだろう。


(フーラ、フーラ!ルビーは今日で退院!)


 なんでだろ、って思ってたら、カテーナが教えてくれた。そっか、お母さん、今日帰ってくるんだ。


「あ、じゃあ、赤ちゃんもいっしょ?」

「そうだよ、フーラ。弟だ」

「しかも双子。めーっちゃ不安」


 じゃあ、二人も弟ができるんだ。うれしい。


「かわいい顔するなぁ、君は」

「おか、お母さん。くすぐったい」


 ルビーお母さんにほっぺたをつままれて、くすぐったくて、笑っちゃう。


「アドヴァルトさん、退院のお手続きですが―」


 看護師さんが来て、お父さんが呼ばれてついて行った。

 もう少しで、赤ちゃんに会えるのが、楽しみだった。



「ルビー、大丈夫か?」

「うん、嫌、嘘、結構だるい」


 家に帰って、車から降りた時、転びかけたルビーを抱えると、彼女は苦笑しながら言った。


「やっぱ出産の後ってこうなるのかな。赤ちゃん、マリアに頼んで良かったよ」

「こういうのは私の得意分野だからな、任せてくれよ」


 マリアは相変わらず器用に髪を活用しながら、二人の子を大事に抱きかかえていた。


「頼める家族がいるんだから無理することないさ。とりあえず、中入って休もう」

「うん、そうする」


 俺が家のドアを開けると、中からクラッカーの音が鳴った。


「ルビー先輩」「退院」「出産」「お疲れ様!」「デス」


 玄関で待ち受けていたのは、スフィアとスカベラ、それにアイアンにルファ、ウィル。アーガイルとクィミミトルまで。


「何?皆、暇なの?」

「素直じゃない親友ですねぇ。顔が綻んでますよ?」

「…うるさいよルファ」


 照れ隠しに口元を覆い隠して言うルビーとそんな二人のやり取りに、笑いが巻き起こった。


「はい、そこら辺にして、まず赤ん坊寝かしてやろうや」

「すっかり、まとめ役だな、アイアン」

「うるせ」


 俺が茶々を入れて、アイアンが笑いながら小突いて、それかマリアと、フーラが二人の子をベビーベッドまで連れて行った。


「フーラちゃんもすっかり大きくなったすね」

「ウン、もう私の背とあんまり変わらナイ。私の立つ瀬がナイ…」

「実にキュート、可愛いものに目がない私が太鼓判を押す」

「見る目がありますね、クィミ。私の研究室に内定をあげます」

「スフィちゃん、人格面とモラルのテストもした方が良いよ」


 下級生クインテットも相変わらず仲良しで何よりだ。


「そういや先輩は?来てないのか?」

「うん、誘ったけどなんか用事あるんだって。代わりに出産祝い預かってきたよ」


 うわ、分厚。ありがたいけど、恐縮するよこんなに渡されたら。


「下手すると俺らにもこの額送ってきそうで怖いよ、ナインハルトさん」

「良い人なんですが、加減を知りませんね」


 アイアンとスフィアの発言は間違ってないから、余計に困る。本当にもう既に返しきれないくらい恩があるってのに。


「って、このケーキ」

「これは俺らからの祝いだ。これで勘弁してくれ」


 立派なケーキだ。陳腐すぎて申し訳ないが、すごく高級そうな。


「勘弁、って。アイアン、良いの?」

「当然、所詮俺らで金出しあって買えるレベルの店だ。そんなに気にしなくていい」

「気にするなら、私たちの時にお返ししてくださいね」


 全く、最高の親友だよ、お前らは。本当、ミクトに来て、お前らに出会えてよかった。


「そういや、子供の名前、なんて言うんだ?」

「私の記憶によると双子、二つ必要」

「分析浅くない?」


 ケーキを切り分けた頃、そんな話題になった。俺はルビーと目を合わせて、それからスフィアと、スカベラと目を合わせた。

 名前なら、もう決まってる。だから、俺はケーキをフォークで刺しながら答えた。


「ハイデルンと、ギルフォード」



「…と、これで良し」


 お母さんが赤ちゃんをベッドに乗せて、おふとんをかけた。全部、髪の毛でやっててすごいなあって思った。


「フーラも出来るよ。頑張ればね」

「お母さん、教えてくれる?」


 お母さんはぽんぽんって頭を撫でて、うんって言ってくれた。わたし、がんばる。がんばって、弟をだきしめてあげたい。


「そういえば、二人はなんて名前なの?」

「お兄ちゃんの方がハイデルン、弟の方がギルフォード。ちょっと前に、皆で話して決めたんだ」


 こっちがハイデルンで、こっちがギルフォード。覚えた。いっぱい、家族がいて幸せだな。


「お母さん」「マリア」


 私はなんか嬉しくなって、カテーナといっしょにお礼を言いたくなった。


「私たちを見つけてくれて、ありがとう」


 私たちがこんなに幸せなのは、お母さんが見つけてくれたから。あの時、お母さんが助けてくれたから。だから、私はお礼を言った。


「…馬鹿だな」


 そう言って、お母さんは私をぎゅっと抱きしめてくれた。


「私たちは家族なんだから、お礼なんかいらない。フーラとカテーナを幸せにするのは、私たちの役目なんだから」


 私はとても幸せになって、それでもお礼が言いたくて、言おうと思ったけど、なんだかほわほわしちゃって、私はそのまま眠っちゃった。


「おかあさん、だいすき」


 マリアお母さんのうでと、髪で抱きしめてくれて、暖かくて。

今年もありがとうございました。来年もよろしくお願いします。


評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ