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episode of frame dance

「ブロンズくん!」


 敵を目掛けて駆けだしたブロンズ、そしていつの間にか姿を消したキングに対して、ウィルは移り変わりが早すぎる状況に戸惑っていた。

 ウィルが鈍いのではない。状況が余りにも異常すぎた。初めは三体の竜だけだったはずの状況は、乱入に次ぐ乱入により混沌と化し、最早現状の把握すら困難になっていた。

 故に、怒りの余り、行動を固定化したブロンズ、そして理由こそ不明な物の、初めから逃走すると決めていた様子のキングの方が異例であり、ウィルの困惑こそ、正しい反応であった。


「何、ぼさっとしてんだぁ?」


 だが、正しい反応というものは、必ずしも正しい対応ではない。上空から、ウィルを嘲る何者かの声。ウィルは咄嗟に上空へ弓を向けるも、もう遅い。


「眠てえなら、永遠に寝てな」


 上空からの、一閃。ウィルの体が、縦に裂かれた。


水廻矢(アクアロタスアロー)


 が、それはウィルの傷にはなりえない。切り裂かれた肉体を修復しつつ、彼は水を纏わせた矢を放った。


「は、何だお前。面白い身体だな」

「誰だよ、君は」


 愉快そうに笑う天使、肉体を修復させたウィルは、そんな天使を睨みつけながら問う。


「私の名はリール、てめえをぶっ倒す、熾天使様だ」


 胸を叩き、自信にまみれた様子で名乗りを上げた天使。彼女はそのまま、手に持った剣を天に掲げた。


「さあ、焼き尽くしやがれ!【神の焔】!」


 掲げた剣が、焔を纏いだす。そんな剣を見て、ウィルはおかしそうに笑った。


「炎、ね。残念、僕は」

 

 それから、ウィルもまた、対抗するように弓矢を掲げた。自らの力を、示すために。


「水の覚醒者なんだ」


 水を纏う弓構えながら、ウィルは言った。



 殺す、殺す、殺す、絶対に殺してやる。俺の脳内はそんな、どうしようもない怒りと、一抹の氷のような冷徹さが支配していた。

 

 だから、俺の戦法はより、敵を追い詰められるものに先鋭化していく。雷一閃や雷光閃のような大技は出来るだけ抑え、雷纏を維持しながら雷速でじわじわと削っていく。


「ち、くそ!」


 だから、奴は俺を捉えられない。雷速を封じる手管もない奴は、俺を止めることすら出来やしない。

 それに、雷纏剣(ドンナーシュヴァート)だけでも、一撃一撃の斬撃は馬鹿にならない威力だ。奴の体を効果的に削っている。


(このまま、苦しませて、殺してやる)


 絶対に、許さない。婆ちゃんを殺したこいつだけは、生まれたことを後悔させて、殺してやる。

 そんな、復讐心に塗れた心が、俺の足元を掬った。


「ちょろちょろと、うるせえんだよぉ!」

「ぐ、はぁ!」


 突然、奴から噴火の様な熱が飛び出した。攻撃するため、奴に近づいていた俺は、その熱を受けて吹き飛ばされた。


「【炎舞】、属性を纏うなんてことは、お前だけの特権じゃねえぞ?」

 

 奴の全身を炎が纏っていた。先ほどの噴火の様な熱も、これを発動したのが理由か。恐らく、奴の体表の炎は途轍もない熱を帯びているはず。迂闊に近づくことは、もうできないか。


「さあ、もう油断はしねえ。来いよ、次は殺すまで焼いてやる」


 そう言って挑発してくる男、そんな男に攻撃をぶち込んでやろうとした瞬間、割り込む声があった。


「おいおい、さっきそう言う台詞は殺してから言え、とか言ってなかったか」

「な―!?」


 何者かの背後からの攻撃、男は咄嗟に躱したが、それでも尚、驚愕は収まっていない。

 そして、それは俺も同じ。なんで、こいつが。


「よう、兄ちゃん。加勢するぜ」


 【災厄の使徒】アギトは、そんな風に俺に声を掛けてきた。


「なんで、あんたが」

「何、簡単なこった。俺は人間は嫌いじゃねえんだ。あいつの元の種族だしな」


 俺が呆けた表情で聞くと、アギトは何のこともないかのように言った。


「煙の嬢ちゃんも嫌いじゃなかった。もっと、戦っていたかったくらいだ」


 悼むように亡骸に顔を向けた後、アギトは目の前の男に向けて、親指を下に向けた。


「そして、そんな戦いを邪魔した奴らは大嫌いだ。全てを手のひらで転がしてるみてえな、上位者ぶりやがったその面は、竜そっくりで今にも殺してやりたいさ」


 それから、彼は俺に顔を向けて聞いた。


「だから、共闘といかねえか。あんたの邪魔はしねえ、合わせてやる」

「…頼む!」


 そんな誘いの言葉に、俺は迷うことなく頷いた。考えれば、この時限りとは言え、これほど、心強い味方もいない。


「…ハハハ!良いだろう、来てみろ!魔王の使徒すら、俺には及ばんということを見せてやる!」


 自信過剰に言う男、俺たちは目を合わせてから、攻撃を仕掛けた。


「水面斬り!」


 俺は雷纏を解除し、剣技を中心に戦うことにした。アギトとタイミングを合わせるなら、こちらの方が良い。


「ほう、馬鹿の一つ覚えを止めたか。だが、それでは、俺には敵わん!」


 水を纏わせた剣技は、容易く男に止められる。派手な炎に目が行くが、拳術も相当な域に達しているな。だが、今はそれは問題じゃない。何故なら、これは止められるのが目的の剣だからだ。


「渦巻」

「な!」


 渦巻の回転を利用し、男の態勢を崩す。そこに。


「捕まえたぜ、クソ野郎」


 アギトが奴の体を掴む。竜殺しというだけはあり、アギトは男の全身の熱すら、意に介してはいないようだ。


「クソ、放せ!」

「早くしろ、兄ちゃん。あんたの技で、ぶっ殺してやれ」


 もがく男をぎりぎりのところで押さえつけながら、アギトは俺に促す。

 その言葉に、異論はない。俺は再び、雷を纏う。そして、剣を構えた。


雷一閃(ドンナーシュナイデン)!」


 捕まったままの男に、当たり前のように直撃する雷の剣。傷跡が男に刻み込まれ、奴は崩れ落ちた。

 それでも、僅かに息があった奴は、負け惜しみの言葉を並べた。


「…俺は【壊す者】!司る者に名を授けられ生まれた、最強の戦士だぞ!なんで、俺が、こんな簡単に―」

「さあな、弱いからじゃねえの?」


 男の最後の言葉を、嘲るように笑ったアギトは奴の顔面を踏みつぶし、俺は男の心臓を刺し貫いた。


「天使より弱いよ、お前は」

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