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妹に負け名家から追放された俺は【雷神】となり高みへと昇る  作者: 雑魚宮
第二章 フィラウティアが足りないの
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エピローグ

「…ほうぇ?」

「おはよう、マリア。良く寝られたか?」


 俺はそう言ってから、いつぞやにもこんなことがあったな、と思い出す。

 マリアがフーラという少女と使途の契約を結んでから丸一日が経過していた。契約を結んだ瞬間に、疲弊の余り気を失ってしまったらしいマリアは、彼女のベッドに突っ伏しているところを先生に発見されて、家まで運んでもらった。


「フーラは!?大丈夫!?」


 気がついた瞬間に、鬼気迫る雰囲気で問うマリアに、俺は頷いた。


「ああ、あの子はもう大丈夫だってさ。検査と栄養状態の改善のために、一ヶ月程度は入院する予定だけどな」

「そっか…良かった」


 俺の返答を聞くと、マリアは安堵したように息を吐いた。


「安心してるところ悪いが、他にも報告しなきゃならないことがある」

「…何?」

「柚子とスカベラが、帰った」


 恐る恐る尋ねたマリアに、俺は端的に事実だけを答えた。

 

「帰った…ってどこに?」

「スカベラは【灼竜】の元に、柚子は、【外】に」


 淡々と話そうと思っていたが、柚子の方にはどうしても含みが入ってしまった。

 

「…そっか、ならもう簡単には会えないね」


 マリアもまた、寂しそうに返した。

 スカベラの方は然程問題じゃない。会おうと思えば、いつでも会える。

 問題は、柚子の方だ。【外】とここを自由に行き来できるのは、師匠の【次元斬】のみ。更に言えば師匠のあれでさえ、時空間の歪みからは逃れられない。柚子が存在する時間軸、更に言えば柚子がここから帰った後の時間に到達出来る可能性は、普通に考えれば相当に低い。


「…まるで出来の悪いSFだな」

「SF?」


 そんな俺の呟きに、マリアは首を傾げた。

 それと同時に、立ち上がって、俺に顔を近づけた。


「でも、きっと大丈夫。待っていれば、いつかまた会えるよ。だって私たちは、神なんだからさ」


 マリアは励ますようにそう言って、俺の背中をぽんぽんと、優しく叩いた。

 マリアの言う通りだ。少なくとも、俺たちのような神は寿命で死ぬことはない。ずっと待っていれば、いつかは【外】と行き来できるようになるかもしれない。


「元人間の感覚からすりゃ、慣れない話だけどな」

「人間でも死なない人いるじゃん。あのレインとかゲオルグとか、ウィルとか!」

「覚醒者の感覚には似てるのかもしれんがね…」


 あの人たちも人間でありながら、寿命とは無関係で生きている慮外たちだ。他者とどう擦り合わせてるのかは、参考すべきところがあるかもしれん。


「他には、あれか。とりあえず、皆の居住は許可されそうだ。その他諸々の提出しなきゃならない書類があるから、今すぐ市民権を得られるって訳じゃないが」


 元々、ミクトは多くの人種を抱える国家だ。その中には、ダークエルフのような難民、リザードマンのような賎民扱いされていたもの、ギガントのような少数人種など、多くのマイノリティが混在している。そもそも、国主が人型の竜で、顧問が屍体男だ。神だからといって否定される通りもない。


「…良かった、安心したよ」


 マリアはまた、安心したように息を吐いた。やっぱり、フーラのことが気がかりだったんだろう。


「さて、お前も目覚めたことだし、飯にでもするか。腹、減ってんだろ?」

「あんまり気にしてなかったけど、そう言われると、空いてる気がする」

 

 マリアがそういった瞬間、彼女のお腹の音がぐぅとなって、二人で笑いあった。


「ね、ブロンズ」


 俺が先に行って、食事の用意をしておこうと思った時、彼女の髪が俺の服の裾を引っ張った。俺が振り返ると、彼女は少しだけ俯いて、顔を赤くしながら、言った。


「貴方のことが、好きです」


 だから、続く言葉は予想はしていた。そう言って貰えたことに嬉しさを感じつつ、俺も彼女の思いに答えなきゃと思った。


「…ああ、俺も、好きだよ」


 俺は乾く喉を唾液で湿らせてから、やっとそう答えることが出来た。求婚の時より、余程緊張している。我ながら、あべこべだけど。

 それでもきっと、俺は今一番幸せなのだろうと、心から思えた。



 食事を終えた俺は家を出て、学園へと向かった。目的地は昨日まで、教授の部屋だった所。


「や、待ってたよ」

「もう、皆さんお揃いでしたか」


 そこには既に、事前に聞いていた面子が既に揃っていた。師匠、ゲオルグさん、レインさん、ルイン、それに、【竜帝】ルーガイン。


「あなたまで、お越しとは」

「宮殿は息が詰まるからな。玉には息抜きも必要なんだろうよ。なあ、ルーガイン」

「息が詰まると思うなら、お前には向いていない場所なのだろうよ。私にはいたく快適な場所だ、最も、あいつの後始末をしなきゃならない今は除くがね。素知らぬ振りをして学生に混じりたいものだ」

「は、一回出席した程度じゃ単位はやらねえぞ」


 竜帝と軽口を叩きあう姿は、改めて、ゲオルグさんと彼が長い付き合いなのだと思い出せた。


 軽口を叩きあうのは良いが、そもそもこれは何のための集まりなんだろうか。俺はその目的について知らないし、この面子の中に俺が混ざっているのには、どうにも違和感がある。


(…ふん、ただの懺悔だろうよ。奴が黙してた、そして、私たちが目を逸らし続けていた、罪の告白。ただ、それだけの話しだ)


 俺の疑問に、どこか遠回りにフアイは答えた。それで少なくとも、七英雄絡みの、更に言えば魔王に関する話だということは想像できた、それ以上の続きは師匠に聞けというのだろう。

 フアイの言葉を聞くと、師匠が話始めた。


「まずは、集まってくれてありがとう。そして、まず最初に断っておくよ。この話には、私が実際には見ていない話が多分に含まれている。特に最初の方は、デッドマンたちからの伝聞が殆どだ。私の目で見たものを語れるのは、私があいつと出会ってからの、短い期間に限られる。それでも、この話を聞いてくれるというなら、椅子に座って欲しい」


 そう、師匠が言い終えた瞬間、俺以外の四人は迷わず座った。その話を聞くことを待ち望んでいたように。それを知らない俺は、恐る恐る、椅子に座った。


「…ありがとう。それと、ごめんね、ブロンズ。良く状況が分かってないだろうに、こんな決断をさせて。でも、そうだね、お前にも無関係な話ではないから、さ」


 師匠は俺に頭を下げてから、思わせぶりな言葉を告げた。フアイじゃなくて、俺に?そんな疑問を覚えながらも、俺は師匠の話に耳を傾けようと思った。今からの話が何やら途方もない物になるということは予想できたが、だからこそ興味が湧いた。


「さあ、それじゃあ過去(これまで)の話をしようか」


「失われた、影の話を」


「勇ましき、彼の話を」


「名と影を喪失した、英雄の、話を」

第二章はこれにて終了です。

そして、ハジメの語りは直接、【影の英雄譚】へ続きます。よろしければ、そちらもご覧になっていただければ、と思います。


今後の予定としては、【影の英雄譚】をメインに進めつつ、時折こちらで2.5章と題して、いくつかヒロイン、サブキャラに焦点を当てた短編的なものを投稿していく予定です。現時点での予定では、ルビー(及びシュライバー)→スフィアまでは決めています。


願わくば、今後もお付き合いいただければ幸いです。

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