表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
妹に負け名家から追放された俺は【雷神】となり高みへと昇る  作者: 雑魚宮
第二章 フィラウティアが足りないの
60/100

【七英雄】対【七英雄】 上

 一方、竜峰山。復活したダンタリオンと相対する、ハジメとアイゼンは。


「…元気ってほどじゃないな。なにせ、私が会ってきた【彼】は、あの時の直後の彼だから」

「ああ、そう言えばそうだった。こことは、時の流れが違うんだったね」


 そんな風に、ダンタリオンとハジメは談笑を交わす。まるで、敵対していることを忘れたかのように、かつての友情のままに、二人は親しげな様子を見せていた。

 隠しきれない程の戦意を、互いに抱えながら。


「ハジメ、そのくらいでいいだろう」


 ダンタリオンに友情など一切抱いていないアイゼンは、戦意を隠してすらいない。

 拳を握りながら、装填音を鳴らす彼を見て、二人は彼が本気だということを理解する。


「貴様が蘇ると言うなら、何度でも殺してやる。それだけのことだ」


 アイゼンはそう言って、強く拳を握った。

 アイゼンの神性、【核熱拳(スペース・ニューク)】。強く拳を握ることにより、超威力の拳を放つ事が出来る。一日の最大使用回数は十回、重ねがけすることにより、十回分の威力を一撃に込めることすら出来る。参考程度ではあるが、一撃の威力が、【大雷光(ドンナー・シュラーク)】程度。三回重ねがけした時の威力で【極大(ドンナーシュラーク・)雷光(オーバードーズ)】と同等。十回重ねがけした【核熱拳(スペース・ニューク)】に至っては、かつての魔王にすら致命傷を与えかねない、正に最強の矛。


「…ま、悪いけど、食らってもらうよ。ダンタリオン」


 既に彼女も剣を抜いていた。水の型、【渦潮】。ダンタリオンの全身に纏う微量の水によって、彼の行動を著しく制限する、拘束特化の剣技。

 それはつまり、彼は攻撃を回避できなくなったということ。

 

「【核熱拳(スペース・ニューク)】」


 最強の矛が、彼に直撃する。

 凄まじい爆音を鳴らしながら、彼が拳を振るった。今回、彼が放ったのは三回分だが、それでもダンタリオンが致命傷を負うには十分すぎるほどの威力を持つ。


「残念、俺だ」

「デッド、マン!」


 だが、その拳は、第三者によって妨げられる。デッド・コード、デッドマンが【雷の門】と共に現れたからだ。

 彼の拳に触れたデッドマンは、その瞬間に爆散し、血液と肉片が周囲に飛散した。


「…ああ、クソ、死ぬほど痛えの数十倍痛くて死にたくなる。死ねや、しないけどな」


 だが、そんなグロテスクな惨状は、彼の命を奪うに至らない。肉片は瞬時に集まり、デッドマンという男の形を取り戻す。【屍体男】、死にながらにして生き続ける男の二つ名は、伊達ではない。


「…まさか、お前が裏切っていたとはな」

「意外じゃねえだろ。俺たちは元々、同胞なんだから、よ」


 デッドマンはそう吐き捨てながら、アイゼンに向けて斧を振り下ろす。片手の力だけで振るった、素人同然の振り、躱して一撃を加えるのも容易い、そんな一撃を見てアイゼンは後方に飛んだ。

 そして、その判断は正しかったことは直ぐに証明される。


 デッドマンの斧が地面に触れた瞬間、爆音が鳴った。デッドマンの斧が、爆発したのだ。ナインハルトの使用する双斧のプロトタイプであるそれは、ナインハルトのそれ以上の出力を誇るが、それ故に使用者にも大きなリスクを背負わせる。使用者の安全など何も考えていないそれは、余りにも大きな出力故に、使用者すらもその効果に引き込む。それを証明するように、デッドマンの右半身は焼け焦げ、彼の右腕は粉砕骨折を引き起こしている。余りにも危険すぎる武器、だが、それでいい。【屍体男】が使う限り、リスクはリスク足り得ない。

 使い物にならなくなったはずの右腕は既に治り始めている。焼け焦げていた肌も、いつの間にかその残滓すら感じ取れない。すっかり元に戻った肉体で、彼は笑う。


「おいおい、七英雄様がこんなクソみたいな攻撃、避けんなよな」

「お前も七英雄だろう、デッドマン。そうでなくとも、侮りはしない。魔導具生産のスペシャリストを、侮ることは出来ないさ」


 アイゼンはデッドマンの軽口に乗り、状況の仕切り直しにかかった。

 ハジメとアイゼンが正道の前衛なら、ダンタリオンとデッドマンは邪道のトリックスターたち。何が起こるか、何を起こすか予想がつかない二人だ。万全の態勢で待つのが、順当だ。

 アイゼンの頭はすっかり冷え、冷静に判断を下す。そして、その判断は概ね正しい。ダンタリオンたちの攻撃の殆どに後手で対処出来るハジメたちには、ダンタリオンたちは攻めにあぐねる。


「しかし、さ。良く来れたよね、君、アイゼン。僕が、君の小さいお嫁さんを狙わない保証なんてないのに」

 

 だから、言葉巧みに誘導する。冷静さを欠かせ、相手の視線をずらすために。


「ルゥ=ガルーが、そう簡単にやられると思うか?戯言もそこまでにしておけよ」


 しかし、アイゼンは動じない。アイゼンが上手というより、ダンタリオンの一手は、今の場合、意図が余りに透けて見えていた。これでは、動揺させられるものも、させられまい。

 

「そうだね。あの強靭なる狂人が凶刃によって退陣するなんて、細心の注意を払っても無理な話だ。けどね、君は肝心なことを分かってない」


 だが、実のところ、彼にとっては、アイゼンが動じるか動じないかは二の次だった。無論、上手く行けば何よりだが、それよりも彼らが求めたのは、もう一つの手を隠すこと。奥の手の存在を、小手先の、舌先の技術でごまかすことが、何よりの目的だった。

 

「僕をまともに相手するなんて、余りに愚鈍だ」

「【明星】、起動」


 この奇襲を、ぶつけるために。

 雷の門と共に現れた、光り輝く、女。天使、アルティナ。彼女は、現れた瞬間に、ハジメとアイゼン目掛けて、照準を合わせ、無数の矢を放った。


「【迂遠】!」


 しかし、対応も早い。直ぐ様、前面一帯に巨大な水の壁を生み出し、矢を減衰させようと試みた。


「凍れ凍れ、永久に―」


 だが、それすらも彼の手のひらの上。


「【絶氷(コンフェラシオン)】」


 全ての攻撃を迂遠に巻くその剣は、呆気なく凍てつき、矢と共に砕け散る。

 氷を貫いた無数の矢を、二人は難なく対処したが、それでも更に襲いかかる矢の大群では、後手に回らざるを得ない。


「【【核熱(スペース)】―」


 だが、それでも彼らにはこの状況を打開する一手がある。

 ハジメが前面に出て、襲いかかる矢の全てを受け流す最中、拳を強く握り力を溜め込んだアイゼン。


「【(ニューク)】!」


 振るうのは勿論、彼の神性。拳で放つそれは、普通に考えればこの距離で効果があるはずもないのだが、その余りにも強大すぎる威力の拳は、ある程度の距離であればその拳圧だけで必殺とも呼べる代物だ。


「祈っても叶わない夢を叶えてくれと願うそんな子供みたいな夢を守り続けてくれ―」


 されど、ダンタリオンたちは動じない。アルティナを後ろに下げ前に出た、デッドマンの、詠唱。

 死んだ目で奏でるその不気味な詠唱は、魔法ではなく、その手に持った、神性宝具の詠唱で他ならない。彼の低めな背丈には不釣り合いな、大盾の。


「閉じろ、【不落の大盾(アイギス)】」


 その盾は、拳の威力も、それから生じる衝撃さえも、飲み込み消えた。

 だが、それでも飲み込めないものはある。


「!?」


 次の瞬間、起こったことが理解できなくて、デッドマンは驚愕した。

 腕が切り落とされ、その大盾が盗まれたのだ。


「―デッドマン、貴様は変わらないな。いつまでも、研究者のままだ。どこまで行っても、戦士ではない」


 現れた、更なる来訪者。彼は大盾を片手に、それを背後に放り投げながら、デッドマンに向けて言った。

 ダンタリオンはそんな、来訪者に向けて、問いかける。


「…何しに来たのかな、ケルビス」

「愚問だ、ダンタリオン。貴様らの狂った計画を、止めにだよ」


 【狼王】ケルビスは、ただ、憐れむように、ダンタリオンたちを見据えた。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ