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妹に負け名家から追放された俺は【雷神】となり高みへと昇る  作者: 雑魚宮
第二章 フィラウティアが足りないの
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対【熾天使】

「撃ち滅ぼせ、【神聖剣(ギフト)】」


 これは、不味い。そう気づいた時には既に、空を飛ぶ彼女の背後から無数の剣が現れ、俺たちに向かって襲いかかっていた。

 無論、ただの剣の投擲なら、幾らでも遣り様はある。迂遠なり、隼なり、不落なり。だが、これは、余りにも、物量が桁違いだった。かの【破壊神】の力と言われたって信じられるほどに。


「ルビー!ブースト頼んだ!」

「了解!」


 もっと早くに分かっていたならともかく、やれることは最早一つしかない。俺はルビーに声をかけ、炎の魔力を俺の剣に送り込むように頼む。


「【炎天遮災】!」


 魔力が最大限度まで溜まった瞬間に、俺は剣を振るった。そして、生まれる炎の壁。俺たちの背丈を軽くその炎は、襲いかかる剣たちから俺たちを守り、そのまま全て焼き尽くした。


 これぞ一流炎之型秘奥、【炎天遮災】。前方一帯に炎の壁を生み出し、寄り付く全てのものを焼き尽くす、攻防一体の剣技。

 秘奥はどれも非常に難易度が高いから、俺が使用するにはそれぞれの魔力に特化した人材の助けが必要になる。俺が素で出来るのは、この【炎天遮災】と【山嶽羅漢】くらいだ。それも劣化版の。


 それでもこの【炎天遮災】はよく使った技だ。型の練習には、ルビーがずっと付き合ってくれたから、炎の型は最も早く会得することが出来たし、上達も早かった。


「…思ったよりも、やりますね」


 剣を止められたことに、天使は感心したように頷くが、それ程驚きはない。

 

「底なしじゃん、やばくない?」

「…ああ、前戦ったやつも大概だったが、こいつはそれ以上だな」


 ルビーの軽口に、俺は同意する。あれだけの大技を止めたというのに、こいつにはまるで焦りというものがない。つまり、さっきのあれは連打が可能か、同等の武器をまだ持っているということだ。さっきのあれならともかく、他の攻撃手段だった場合、次も対応できる確証はない。

 なら、早い内に仕留めた方がいい。あの時の様に、大技がまた来る前に。記憶を取り戻し、自由自在に扱える様になったあれを、開放する。


「【黒雷纏(シュヴァルツ・ドーン)】!」


 俺の中の化者を開放すると、俺の体に黒色の雷が纏った。苦々しい過去の象徴であるこれだが、この一ヶ月間で何となく付き合い方が分かってきた。

 ただの【雷纏】に比べて、速度の上昇が殆どない代わりに、光を吸い取る力を持つ。はっきり言って、実感しなきゃ分からないくらいの効果だが、ルーデンの【白雷纏】やアルティナの光速などの、光を由来とした能力を吸収し塗りつぶせるという効果を俺は理解している。

 それ以外にも、日光を吸収することによって、身体能力の強化や回復効果を見込める。また、【雷一閃】の様なこれでしか使えない必殺技も。バランスの素状態、攻撃・速度特化の【雷纏】、相手によって特攻が生じる【黒雷纏】、と、場合によって使い分けていこう。

 

 あの時、アルティナと言う天使から力を吸い取ったように、この天使からも同じ様な効果が起こることを期待したのだが、今は少なくとも目に見える効果が現れることはなかった。

 期待外れに終わったことに舌打ちをしたい俺とは逆に、天使は納得がいったように頷いた。


「…ああ、貴方が例の【黒色】でしたか。ですが、残念ですね。私にはそれ、聞きませんよ」


 嘲笑混じりで天使が言う。既に、対策されていたか。或いは、元から天使でも効く個体と効かない個体がいるのか。続く言葉で、どうやら後者だということを理解する。


「アルティナと違い、私に与えられた力は、司る者の力そのもの。何者にも征服されることはない」


 …司る者?どこかで聞いたような。ラ・バース信仰初期の分派の宗主か何かだったか。まさか、そこがこいつらの源流か?

 俺が推察を重ねていると、彼女は目の色を変えた。酷い、怒りと憎しみの色。


「…アルティナを唆したクズが、殺してやる」


 吐き捨てるように言った彼女は再度、無数の剣を生み出した。その瞬間、ルビーに目配せする。彼女はとうに分かっていたように、魔法の詠唱を開始していた。


「死ね」

「ばぁん、【連鎖炸裂破(チェーン・ブラスト)】」


 放とうとした剣を生み出してから、放つまでの間、全ての剣に鎖が繋がれていた。少しでも動けば爆発する、脆い鎖が。

 だから、爆発が生じた。あれだけの剣の量だ、爆発の規模は相当なものであり、その爆発により剣は砕け、爆風は天使をも飲み込み、彼女に大きな同様を与えた。


 【連鎖炸裂破】は特別な魔法ではないが、これ程までに早く、完璧にこなせるのはルビーくらいのものであり、彼女が炎の覚醒者たる所以だ。

 さ、ルビーがやってくれたんだ。俺も負けてはいられない。黒色を剣先に収束させ、天使目掛けて振り下ろす。


「【黒堕(フォール・ダウン)】!」


 空を飛んでいた彼女の周囲に黒色が纏い、そのまま地面に叩き落された。

 これこそが、【黒雷纏】でのみ使える必殺技の一つ。剣を向けた相手に黒色を押し付け、強い重力を与える。ぺしゃんこに潰せるほどに強い重力は無理だが、普通に行動するのは到底不可能だ。

 勝負は決した。彼女を殺すべきか、それとも捕らえて情報を引き出すべきか。情報は欲しいが、これ以上の面倒事を抱えるのはあまり良くないよな。などと、俺は勝った気になっていた。彼女に、まだ奥の手があることも知らずに。


「…【征服の飛沫(コンキスタ・フォビア)】」


 …何だって?彼女は、何もなかったように立ち上がった。重力の効果など、欠片も感じさせずに。

 よく見ると、黒色が消え失せている。理屈が見えたことにはほっとするが、当たり前だが、俺が解除したわけじゃない。彼女は一体、何を隠し持っている?


「良くも、これを使わせたな。もう、蹂躙じゃ済まない。虐殺だ、お前らも、お前らの仲間も全員!」


 先程以上に、怒りに滲んだ声音で、彼女は絶叫した。その勢いには驚いたものの、まだ勝負は着いちゃいない。なら、勝つだけの話しだ。


「まだ付き合えるかルビー!」

「勿論、舐めんなよ親友」


 俺の啖呵に頷いてくれる彼女に頼もしさを覚えつつ、俺たちの戦闘は再開した。

 その奥で生まれていた、もっと大きな敵にも気づかずに。

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