表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
28/100

竜峰山 2

 頂上の直前、俺たちに最後の難関が立ち塞がっていた。


「Agiyaaa!!!」


 超大型竜種、壊呑竜(ベヒーモス)。女王蟻や大食らいの花弁並みの巨大さに加え、それらすら物ともしない力を持った、神領でも最上位クラスの魔獣。あの時の天使、アルティナを超えて、デスペラードクラスと思って良いだろう。

 疲弊していなかったとしても、勝てると確信を持っては言えない相手。今の状況で勝てる可能性は低く、立ち向かうのは下策だ。どうする!?


「ああ、こいつは大丈夫だよ」


 俺たちが警戒を顕にしていると、ルインは微笑を浮かべて、その壊呑竜に手を振った。

 ルインの姿を確認した壊呑竜は、鼻を鳴らして何処かへ去っていた。


「彼は、まあ隣人みたいなものだ。留守を預かってもらっていたんだ」


 あれ程の魔獣に留守番を任せるとは、贅沢というかなんというか。

 とにかく、最大の難関と思えたものが居なくなったのだ。良かったと思っておこう。


「何にせよ、これで」

「そうだな、登頂成功だ」


 俺とマリアはそう言って、こつん、と拳をぶつけ合う。念願、ってほどじゃあないが、一度失敗したものを成功させたことは、素直に喜ばしい。

 

「流石に、疲れましタネ」

「うん、もう一歩も動きたくない…」


 スカベラは座り込んで、柚子に至ってはへたり込んでいた。やっぱり、二人とも満身創痍だったんだな。俺やマリア以上に、二人は疲弊しているようだ。


「休むならとりあえずうちに入らないか?ここだと、また魔獣が出てくるぞ?」

「…もうひと踏ん張りしよっか、スカベラちゃん」

「…ハイ」


 ルインの気を重くさせる言葉に対し、心なしか震えそうな声で言った柚子に、か細い声でスカベラは頷いた。



「…なんというか、絵に描いたみたいだな」


 頂上、正確にはその付近に存在する、ルインが住む家がある場所を見た俺は、率直な感想を漏らす。

 綺麗にくり抜かれように、真四角な平地。その一帯の中心に、小さな家があった。最早、小屋と形容すべきほどに小さなそれが、ルインの住む家だということを理解するのに、それなりの時間を要することになった。


「さ、どうぞ。入ってくれ」


 ルインに促されるままに、家に入る。入って真っ先に思ったのは、必要最低限の家具だけがある、殺風景な部屋だった。外見もそう広くは見えなかったが、中に入るとそれ以上にこじんまりしているように感じる。正直、大規模な研究室があるようには見えないが。


「お茶を淹れようか?」

「お願いしマス」


 何十年、下手をすれば百年単位を共にしているだろう、骨董品の椅子に腰を掛けた俺たちに、ルインが聞いた。その言葉に従って皆が珈琲を頂こうとする中、俺は口を挟んだ。


「悪いが俺は」


 全て言い終える前に、ルインが微笑んだ。


「分かってる。資料だろ?珈琲を淹れ終えたら案内しよう」

「私も行っていい?化物っていうのに興味がある」


 すると、手を挙げて、柚子が追随するように聞いた。


「勿論、何せ研究資料は膨大だ。一人でも多いほうが良いからね」


 ルインはそんな柚子を歓迎しているようだった。一人でも多いほうが良い、という言葉を聞いた後、マリアが吹けもしない口笛を吹いていた。あいつも学びを苦とするタイプじゃないが、今回ばかりは疲労が大きいんだろう。別に参加しないことを責めやしないんだからさ…

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ