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エセブンディア.6

スフォーファンドからフィルファイブに移動して、「森の朝露」を手に入れた森に来た。清浄な空気の中、進む。胸の竜のペンダントはほんのり光り、森にかかっている幻術が解けて、正しい姿が見えていく。

デニーと一緒に森の奥に進み、やがて石碑が見えた。真ん中で光る森の朝露。ラッタスに盗まれていないようだ。

「有紗、どうしてここに?」

「うん…ここはね、秘密の場所なの」

ゲーム中で、ゲームクリア後に登場する隠しダンジョンの入り口、それがここだ。ここに、ゲームクリア後に7つの宝玉を集めて、この石碑にはめ込むと隠されたダンジョンが登場する。ずっと冒険を続けて、宝玉を手に入れてきた。それらを取り出すと、石碑が光り、宝玉がはめ込まれていく。

フォルワンの奥地で泉のそばにあった水色の宝玉。

スツートでエリネーゼが残した海コハクの青い宝玉。

エスリールで大神官にもらった赤い宝玉。

スフォーファンドで王様からもらった緑の宝玉。

フィルファイブで「お父さん」に託された黄色い宝玉。

エセブンディアでオリバーさんの杖の先端についていた紫の宝玉。

それらが石碑に吸い込まれていく。

「…ん?」

そう…宝玉は6個。1つ足りない。

「ええっ」

石碑に開いている穴は小さいが、それが無いと石碑はどうにもならない。

「…アセシックスルか」

アセシックスルを旅していた時に、流れでフォルワンの宝玉を手に入れたから、アセシックスルの宝玉は手に入れたみたいな気分になっていたのかもしれないな、とぼんやり思った。

「とは言っても、この6個の宝玉も、流れで手に入れたものだし…積極的に探そうと思っても、何の手掛かりも無いよ」

途方にくれたものの、とりあえずアセシックスルに行って誰かに聞いてみようかなとか思った。

そう思っていたら、デニーに止められた。

「少し待つんだ有紗…シーフのスキルと絶対視覚で何かが見える」

「え」

そう言うと、石碑の足元をガサガサと探し出した。地面を掘ったりして、そうこうしているうちに、デニーは小さな透明の玉を拾った。

―大事なもの、水晶の宝玉を手に入れた。

「これは」

「恐らく、この石碑の宝玉を盗んだ者が、小さくて色も無いこの宝玉を、価値のないものとして捨てていったのだろう、それが年月を経てここに埋まっていたようだ」

「なんと」

「今まで役に立ててなかったけれど、シーフが…スキルが、有紗の役に立てたよ」

「そんな事ない、デニーの事は頼りにしてる!」

「ありがとうな」

ここから盗み出されたのが何年前か分からないが、家宝になっていたり、王様から貰えるものになっていたりするものになっている辺り、相当昔なんだろうな、盗まれたのって。

とりあえず、デニーから受け取ったそれを、カチリと石碑にはめ込む。石碑がキラキラと輝くと、石碑の後ろに何故か扉が出現した。

「扉?」

「ただドアがそこにあるだけだな、後ろには何もない」

その扉をそっと開いてみると、下に降りる階段がある。

「別の空間につながっているのかな、これ」

「少なくとも、本来ならこのドア開けても何もないはずだもんな、魔法ってすごいんだな」

「うん、普通はこんなこと出来ないよ」

相変わらず本来の使い方とは違う「ナイトランプ」の魔法を唱えて、フロアを照らしながら、その階段を降りていった。ゲームでは、この奥に金の竜がいて、そこに魔法陣があり、その魔法陣から黒龍のところへ行けるようになっていた。それを目的に、この場所に来たのだ。

つまり、私は今度こそ、本格的に金の竜、ヴァティルと対峙するのだ。

「…金の竜、かあ…」

「この国の守護竜、と言われているな」

「うん…」

しかし、人間を恨んでいるヴァティルが、この国を本当に守護しているとは思えなかった。そもそも、この国の守護と言っても、何から守護しているのだろう?

そんな事を考えながら、歩を進める。ゲームではそれなりに突破が大変なダンジョンではあったが、こうして歩いていても、何も無い。部屋も無ければ宝箱とかも無い。ただ暗い一本道が続くばかりだ。出現する敵を倒していたら、とうとうレベルが99になる。体が淡く光り、とうとう最後のスキル「アルヴィース」が使えるようになった。ただ、この「アルヴィース」だけれど、カーソルを合わせても説明が無い。「?」って書いてるだけ。ラストバトルだけに使うスキルなのだけれど…通常戦闘に使っても何も起きないのだ。

LV 99

HP 9999

MP 999

攻撃力 927

防御力 894

魔法攻撃力 908

魔法防御力 978

「何だろうな、この場所…。この国のどこかに実在しているのだろうか」

「分からないね」

そうして、ただひたすら歩く。すると、扉が1つ現れた。まるでアールヴァルの城のようだと思った。

「いくよ」

ギ、と扉が開く。そこにいたのは…

「とうとう来たか、宿命の小娘」

「ええ…」

全身を金のうろこに覆われた、大きな竜。守護竜ヴァティルだ。

「何を求めてここに来たかは知っている…だが、そう易々と行かせる訳にはいかない」

「何故」

「アールヴァルを…傷つけさせる者は何でも許さない」

そうして戦闘が始まった。


吹き付けられるドラゴンのブレスは凍えるような吹雪の息の時もあれば、業火のような燃え盛る炎の息の時もある。咆哮を上げながら振り下ろされる爪や尾。それらを何とかかわしながら、剣や魔法で切り付けていく。ゲームでは攻撃すればダメージが与えられるが、こうして本当に戦うと、ダメージを与えられているのだろうかと思う。空中を走るスキル「エアボックス」を駆使して、上半身にも攻撃してダメージを与える。そうして攻撃を続けていたらダメージが蓄積したのか、竜が足元をふらつかせた。

「今だ!」

剣を構えて、空気を蹴って首元に飛び込んでいく。

「え」

攻撃の先、竜の首元。きらりと青く光るもの、それは…私の持つ金と赤の竜のペンダントの対になるもの。青と銀の竜のペンダントだった。

その剣を突き刺した先。竜の喉元に1か所ある、赤いうろこ。そこを突き刺した。アールヴァルに聞いたのだ。竜の首元に1か所色が違うところがあり、そこを突かれるとその傷が回復するまで、大幅に力を失うのだと。

竜は咆哮を上げ倒れる。そして、その巨体は、スルスルと小さくなっていったのだった。

尾はなくなり、うろこの身体は人間の皮膚になり、見事なたてがみは柔らかそうな金髪へ。

「え」

薄々感じていた…そこに居たのは、冷たい目をした金の髪の、少年と青年の間の年齢の…この国の王子だった。

「あなたが…あなたが、金の竜…?」

「ああ。人間の姿ではディル、と呼ばれているが…」

どうしても思い出せなかった王子の名前。どうして忘れていたのだろう。記憶を抑え込まれていたように。

見ていたら、何かがパチパチと音を立てて、記憶がよぎる。ただ、瞬間的に何かが見えるだけで、何かを思い出せそうで思い出せない。

「我が名はヴァティル。力の竜」

憎悪を籠めた目をしていた。

「何故、私を憎むの。私はこの世界の人間じゃないのに」

「お前は…この世界の人間ではない」

「だったら、何故」

「お前は、私とアールヴァルを引き裂くためにこの世界に呼ばれた」

「引き裂く…」

「物理的に、と言う意味でも…時間的にも、精神的にも」

私は別に竜を倒したい訳じゃない。そうしなければならないと思って、旅を続けたにすぎない。

だが、今までの宿命の存在で、竜を切り倒した人も居たのだろう。何でも、転生の儀式は必ず200年に1回のペースで起こるので、寿命が来る前に倒れると、次の転生の儀式が始まるまで、魂の状態で時が来るまで眠ることになるのだ。その間、残された竜はたった一人でその魂の傍らに居ることしか出来ないのだ。私が竜を倒したら、まだ転生して20年も経っていないから、残り180年を一人で過ごすことになる。それに、金の竜はひどく怯えているのだ。

「お前は感じているだろう。この世界がお前を無理やりにこの世界に連れてきたことを。暗示をかけていたのだよ、私に対して、無理やり執着をさせて、それを恋情と思い込ませて、この世界に引きずり込むやり方を」

「ええ」

王子に対して、この世界に来てからは何の感情も持てなかった。不思議なくらいに。それを、暗示のただ一言で済まされる。あんなにゲームに執着したのに。のめりこんだのに。

「私は、あなたの事を好きと思い込まされていた…ゲーム中もね」

「相変わらず、この世界の人間…特に王族は、汚いやり方をする」

「あなたも…王族でしょう?」

そう言うと、ギロリと睨まれた。余計な一言だったようだ。

「失敗したと思っている…この国の王族に、我らが産まれるようにしたことを」

「失敗」

「ああ。汚いやり方をする王族は、どれだけ変わっても結局同じやり方をする」

「変わっても…?」

「有紗…この国の王族は世襲制じゃないんだよ」

「え」

「何度も、王族の腐敗のためにクーデターが起こされて、王が何度か変わっているんだ」

「ああ…そうさせたのは、私だ」

ヴァティルは、語った。

200年に一度、竜の命が尽きて生まれ変わる時、必ずこの国の王族に産まれるようになっている。自分たちが生まれ変わる前くらいに、腐った王族を廃して新たな存在を王とさせる。その新しい王の元に自分たちは産まれてくる。しかし、生れ落ちると必ず、一緒に産まれるアールヴァルは地下牢に閉じ込められてしまう。それを見ていた自分は、また、この国に絶望する。だから王族を変えようとするが、王族は変わらない。アールヴァルと双子で産まれた自分を王にすると反感を買うと言って自分以外の存在を王にさせるのだけれど、その次代の王に、竜の事を頼むのだ。曲がりなりにも自分の双子として産まれた竜を救ってほしいと。しかし人間は竜に怯え、異世界から人間を呼び寄せてはその者にばかり押し付ける。戦で行方をくらませたり等で行方不明になるふりをして、竜の生が終わるまで王族を見守っているが、どの王族も同じ…いや、どんどんと竜への畏怖が強くなって、ただ、排除ばかりするようになる。だから、この国の王族を滅ぼさせるのだと。次に王になった者に、今度こそ竜の魂を供養するように言い聞かせて。しかし、何度生まれ変わっても、同じなのだそうだ。どうしても、人間は竜を従えようとする。他の世界の者を連れてきて、その者に全てを被せようとする。ただ竜に怯える。望んでいたことは、こんなことじゃない。アールヴァルの望みはただ…人間と穏やかに共に居られれば…それだけだったのに、どんどん歪んでいく。

この場所は、身を隠した自分の住むために作った部屋。王城の地下にあるものの、ヴァティルの魔力の認証がなければたどり着けないようになっている。例外が、あの石碑に7つの宝玉を埋め込むことなのだと言う。そこにアールヴァルの所へ行く魔法陣を作ったのも、いつでもアールヴァルの元に行くために。人としての役割を終えた後は、転生までアールヴァルと一緒に過ごしている。黒く染まり続けるアールヴァルを見つめながら。

「もう、たくさんだ」

「…ヴァティル…」

「私はただ、アールヴァルと静かに暮らしたい。あいつと一緒に生きたいだけだ」

だから、と。

「だから、私は、私とアールヴァルを引き裂くお前を倒す!」

「!」

戦闘が始まる。別に倒したい訳じゃないのに!

「待ってヴァティル!」

「うるさい!」

アールヴァルは話を聞いてくれたのに、と思いつつ、防御魔法を使う。攻撃を防げるが0になる訳ではないので、とりあえずどうしようかと悩みつつ、魔法を放ったりしてみる。

「話を聞いてよ」

分からずやの金の竜、倒すしかないのかな。

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