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アセシックスル.5

そうして私は久しぶりにフォルワンの冒険者ギルドの前に降り立った。ストラーダのみんな、元気かな?まだここに居るのかな?他に行っちゃったのかなあ。

そう思いながら入り口をくぐると、普通にそこにみんな居た。

「え、アリサ?」

「アル!エリス!マリス!」

リーダーに、魔法使いと僧侶の双子。そして、

「デニー…」

絶対視覚を持つシーフ。「有紗」を好きだと言ってくれた人。

「また、随分と久しぶりだなあ。少し大きくなったか?」

「いや~ん、アリサちゃん久しぶり!」

「元気にしてた~?」

「はい、元気ですよ!」

ちらりとデニーを見ると、少しだけ口角が上がっていた。

「…久しぶり」

「うん…久しぶり」

そしてそのまま食事会…と言うかストラーダのメンバーは酒を頼んで宴会になってしまった。

「はああ、アセシックスルまで行ったのかあ」

「すごい~、アリサちゃん」

「もう、私たちなんて力にもなれないわねぇ」

「いやいや、あの時色々教えてもらったからですって」

「そんな事ないわよぉ~」

きゃっきゃと笑いながら、酒好きのエリスはガバガバとお酒を飲んでいく。それをアルとマリスはハラハラしながら見ている。一人デニーは静かにグラスを傾ける。みんな全然変わっていなくて、ちょっとほっとした。

「みんなが、もうここには居ないんじゃないかって、心配してました」

「それは無いよ、俺たちはずっとここにいるよ」

「え、どうして」

「冒険者にも種類があるんだよ。大きく分けて3つだな。

それは、1つ目が、目的があって長い距離を冒険するタイプ。これが本当に「冒険者アドベンチャー」を示す。アリサはこれに当たる。2つ目が、目的は無く定住する事もなく、あちこちを流離うタイプ。言うなれば「放浪者ワンダラー」だな。亜種として、国から追放されたせいで国に帰れず彷徨う「追放者エグザイル」なんてのもあるが。3つ目が俺たちみたいな、ギルドに所属して、ギルドの御用聞きで冒険しているタイプ。まあ強いて言えば「依頼請負人リクエストコントラクター」だな。

俺たちみたいにギルドに所属してるタイプは、ギルドにパーティを登録してある。他のギルドに行く事は、そのギルドの所属者を脅かすことになるからな、ソロの冒険者ならさておき、パーティで他所に移動するのは基本的に良くないんだ。パーティを解散して、みんなで新しいギルドに移動して、そこでパーティ作って所属させてもらう、なんて手も無くはないが…ばれたらとんでもない事になるんだよな。

だから、俺たちは基本的にはここに居るんだよ」

「な、なるほど~」

冒険者の仕組みを初めて理解した。ゲームでも、ギルドにいつもいる冒険者とか居たものね。ヒントくれる存在だったし、深く考えた事無かった。一口に冒険者と言っても、色々あるんだなあ。

そうこうしているうちに、ピッチ早くお酒を飲んでいたエリスは潰れてしまった。それを見てアルが、すっとエリスをお姫様抱っこしようとするが、マリスがそれを制して、「アルはそっち持って、私はこっち持つから」と、二人がかりでエリスを運んで行った。アルがエリスを見る目。マリスがアルを見る目。前と違う気がする。

「ねえ、デニー。何だか…3人の雰囲気が前と違う気がするよ」

「…俺の、せいだな」

「え?」

何でも、デニーは意識していなかったが、私が去ってから、少し落ち込んでいたのだそうだ。それをエリスに見抜かれてしまったのだそうだ。さすがにロリコン扱いは嫌だったので、「絶対視覚で見えた、成人の女性を好きになった」と説明したのだが。そこでエリスが言ったのだそうだ。

「素敵ね。恋してるのね。身近な人って、いいよね」

その一言は、気持ちを押し殺していたマリスと、気持ちに無自覚だったアルの、扉を開いてしまったのだとか。

エリス←アル←マリスの、気持ちの一方通行。矢印がどこかで反対を向いたら、このパーティは大きく変わってしまうだろう。

「そう言えばエリスは好きな人っているのかな」

「…あいつが好きなのは酒だけだ」

…納得。

「それよりも」

ちら、とデニーがこちらを見る。その視線は、私と言うより私の後ろを見ているようだ。デニーの目には、本当に世界が違うように映っているのだろうな。

「有紗…大丈夫か?」

「え?」

周囲がガヤガヤしているのに、まるで音が消えたみたいに感じる。それくらい、デニーの真剣な目がこちらを見ている。

「小さい方が…「アリサ」が、消えかけている」

「…え」


さすがに大事な事なので、そんなガヤガヤとしたところで話す内容ではないと、私の泊まる部屋で話を聞くことにした。

「お前さんは、大きい「有紗」と小さい「アリサ」で出来ている、んだったよな」

「うん」

「その小さい方が消えかけている」

「消えかけている」

デニーには、魂の姿とかでなく、ちゃんと人間の形で姿が見えているらしい。その中で、「有紗」と「アリサ」が並んで立っているのだけれど、明らかに「アリサ」が薄く見えるのだそうだ。私がまだこのフォルワンの街に居た頃に比べると、明らかに薄いのだそうだ。

「もしかしたら、長い時間、魂の同居は出来ないのかもしれない」

「…多分、そうだろうな」

「だとしたら…あと、どれくらいで」

「見た感じ…3ヶ月だろう」

「え…」

3ヶ月で、「アリサ」が消えてしまう。

「言いたくはないが、「アリサ」が消えたら「アリサの肉体」も死ぬ」

「え」

「つまり有紗、お前さんも…死ぬ」

「そんな」

あと3ヶ月…それまでに、魂をアリサから切り離さないといけない。間に合うだろうか。

「魂を切り分けて他に移す呪法は見つけてあるんだったな」

「うん…」

「俺には何も出来ないのが悔しい…。砦の向こうの魔物には、手も足も出ない…。レベルが低くて」

「大丈夫、私は強いんだから」

「そうかもしれないが、だからと言って平気で送り出せるもんでもないんだよ」

いわゆる序盤の街なのだ、フォルワンは。フォルワンの街で基本レベルが20を超えるのは、まず無理だ。モンスターから得られる経験値が、微々たるものすぎて。先の地域に進めば100倒せば上がるレベルが1000倒しても上がらない、とでも言えばいいのか。一方で砦の向こうに行くにはレベルが45は必要。フォルワンで冒険者をしながらそのレベルに到達するには10年かけても難しいだろう。RPGの経験値って、そういうものだ。

「砦までは送っていくよ。だから、気をつけてな」

翌日、デニーの走らせる馬に乗って、砦まで送ってもらった。砦で出入りの受付をして、砦をくぐる。重たい空気が立ち込めている感じがする。

うろうろする魔獣は強そうだが、倒せない事はなさそうだった。魔獣を倒し、アイテムを収集する。必要な材料はリストアップしてある。「ガラテイアの涙」「天使のアイソレート」「マジカルスクエア」、これらで足りないアイテムの中で、この砦の向こうで必要なアイテムは6種類。それらを集めていく。魔獣を倒すと出るドロップアイテムも含まれているので、魔獣もたくさん倒す。ただ、魔獣は生き物なので、倒しても魔物のように核だけ残して消えたりしないので、残った身体を見ないふりをしながらアイテムポーチにしまう。魔獣の身体は肉が美味しかったり、毛皮が有効に活用出来たり、それ以外にも魔法研究の素材に良いとかで、新鮮であるなら高値が付くのだそうだ。アイテムポーチにしまうと時間が止まるようなので、ポーチに仕舞えば傷まない。後でギルドに運ぼう…。

魔獣のドロップアイテムが無事に見つかったので、今度はこの奥地でも奥ににある洞窟にも潜り、アイテムを集める。万が一、アイテムの生成に失敗する事を考えて多めに材料を集める。数日かけて6種類が集まって、もうへとへとに疲れた。奥地にアタックをしている間は砦が宿の代わりになっていて、毎日ここに戻ってきては魔獣倒しや洞窟探検をしていた。今日もやっとの思いで砦に戻る。砦に戻ると、この数日で仲良くなった砦の宿泊を担当している女将さんが、クッキーをくれた。ありがたく頂いていると、気になる話をしてきた。

「この砦から北東に行ったところにある、小さな泉は見たかい?」

「泉?」

洞窟が北西にあるせいで、北東にはほとんど足を踏み入れていない。北東を探索する前に、必要なアイテムがそろったからだ。

「すごくきれいな泉らしいから、行ってみるよいいよ。またここに来るとは限らないんだろう?」

「うん、まあ」

「そうは言っても、アタシは泉に行ったことないんだけどね。高レベル地帯には怖くて足を踏み入れられないさね」

「う、う~ん」

前にこの砦を訪れた冒険者が、その泉の話をしていたらしく。少し気になるので、翌日に向かったのだった。岩の隙間に細い通り道が出来ていて、ぱっと見ただけでは気付かないだろう。ここに来た人、良く見つけたなあ…。泉には昼前に着いて、それは確かにきれいな場所だった。泉の真ん中には女神像が設置されていて、とても神聖な雰囲気のする泉は、深く透き通っていた。ふと空を見上げれば、太陽がちょうど真上に来ていた。すると、泉が、ちょうど真上に来た太陽の光をきらきらと跳ね返し、女神像から一筋の細い光が発せられて、周囲を取り囲む岩壁の一角に光が当たる。そこに近寄り、良く見ると、岩壁の一部が動かせるようになっていた。岩をどけるとその奥に淡く透き通る水色の宝玉があった。大事そうなアイテムなので、持っていくことにした。

そうして必要そうな事を全て終わらせた私は、フォルワンの街に戻ることにした。お世話になった女将さんに、泉の横に生っていた果物をプレゼントした。一度採取してアイテムポーチに入れ、アイテムの説明文を読んで情報をちゃんと確認して、それが美味しいものであること、毒とか無い事をちゃんと確認した上で、である。どうやら、滅多に手に入らないものらしくて、大変に喜んでもらえたのだった。


トランスファーで瞬く間にフォルワンに戻ったら、帰りを待っていてくれたデニーが頭を撫でてくれた。

「へへ」

「無事に戻ってきてくれて良かったよ」

そうして、アセシックスルに戻って必要なものを探して、次の地域に向かう事にした。最後の地域、黒龍の住む「エセブンディア」へ。

冒険者の設定はこの話だけの設定と思ってください。ストラーダが最初の街にずっと居る理由を考えていたら、こうなりました。

アイテムポーチにアイテムを入れるとアイテムが傷まない設定も、「だったらトランスファーの呪文を覚えるためのアイテムで一晩で効力なくなるアイテムも、ポーチ入れておけば良かったじゃない」と言われてしまいましたが…その頃は有紗がそれに気付いてなかったとでも思ってください…。

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