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アセシックスル.3

「…えーと…必要な材料は…18種類?多いなあ…」

私はぶつぶつ言いながら、メモを取って行く。その様子を、驚いた目をして見つめる所長さん。

「読めるのぉ…?」

「え」

「それ…古代語で書かれてるんだよぉ…?僕でも辞書無しではなかなか読み薦められないのにぃ」

「古代語…」

どうやら、チートの1つだったようだ。確かにゲーム中では、どの国に行っても普通に話せて、普通に読める。もちろんゲームによっては翻訳のアイテムとか必要になるが、「守護竜の導き」では必要なかった。書かれている文字は確かに本来は読めないのだけれど、その上に自分が読める文字が出現している。

「僕もなかなか読み進める事が出来ていないんだよねぇ…本を開けるタイミングもなかなか無いしさぁ…。なのになぁ…」

ブツブツ言っているが、無視して読み進める。必要な材料18種類のうち、13種類は持っていた。今までクリアしてきていたクエストで、少し多めに採っていたものがいくつかあてはまる。困るのが、ゲーム内でもこれまでの旅でも聞いた事の無いアイテムだ。どこに行けばあるのだろう?そう思って所長さんに聞いてみたが、

「僕は現場の人間じゃないもんだからねぇ」

要するに知らない、らしい。こう言ったアイテムを知っていそうな人…考えてみたら一人居る。そう思い出した私はスフォーファンドに飛んだ。


「研究者さん!」

「うお!?あ!」

突然、扉を開けた私も悪かった。目の前の人物は、手にしていたフラスコを落っことして、その下にあった葉っぱにフラスコの中身を全て掛けてしまっていた。葉っぱは白い煙を上げながら枯れてしまった。そう言えばこの人、こういう人だった。申し訳ない。目の前に居るのは、スフォーファンドでトランスファーの魔法を付与してくれた研究者の人…名前はそう言えば聞いてない。名前を今更ながら聞いたら、「エドと呼んでくれ」だそう。本名か聞いたが「そこは秘密だ」だそうだ。

「ははぁ、この5つのアイテムがある場所を知りたいと?」

「そうなんです」

「う~ん、これな。ちょっと面倒な場所にあるものが多い」

「そうなんですか?」

「ああ、まず1つ目と3つ目は、場所こそフォルワンなんだが…フォルワンでも奥地だ」

「奥地?」

「ああ。フォルワンの北に、砦があるのは知っているか?真ん中だけ通行可能になっている、ダムみたいに壁が作られてて谷間にある所だが」

「そう言えば…。フォルワンで一時、パーティに所属していた時に、そこの砦より北には行くなと言われてました」

「ああ、そうだろうな。出入りする冒険者も、冒険者レベル3級以上でないと許可されない。フォルワンに所属する冒険者では、そこに入ることすら出来ん」

「なんで、そんな場所が」

「まあ、その辺りには『魔獣』が出るからな。レベル低い人間は近寄れない」

「魔獣…?魔物じゃなくて?」

「魔獣と魔物は別物だよ。魔物は黒龍が核に力を注いで作った、いわば人工生命体だが、魔獣は動物が魔力を吸って変化した、生き物だよ」

「はああ」

「で、まあ…魔獣は他の地域では結構討伐されたりしていたのだけれども、ほら、フォルワンって冒険者もレベル高くないだろう?倒す事が出来ないまま時間が経過して、魔獣がどんどん魔力吸って強化されてしまって、今では滅多な事で討伐できないくらいになってしまったんだ」

「他の地域の、強い冒険者呼んで倒してもらうとか…は?」

「フォルワンって遠いし、報酬だって、そうそう出る訳じゃないしな…名誉を得られるでも無い。なかなかそんな酔狂な冒険者いないんだよ」

「遠い…」

「お前さんは、俺の与えた呪文「トランスファー」があるが、この呪文を使えるのは、今の冒険者ではお前さんだけだと思うよ」

そう言えば、入手が厄介なアイテムをかき集めないといけないのだった。この人の他にこの呪文を研究してた人が居るなら話は別なのだが、なかなか居ないだろう…。

「空を飛ぶとか、それなりに高速で移動できる方法が無い訳では無いものの、例えばここからフォルワンに行こうとするだけでも、普通は数日かかる。それが冒険者レベルが3級に到達している冒険者ともなると、アセシックスルに到達している冒険者くらいになる。そこからフォルワンなんてな…遠いぞ」

「確かに…」

そんな話をしつつ、5つのアイテムの場所を聞きだした。残りの3つのうち、あと2つはアセシックスルにあるが、残りの1つがエセブンディアにあるのだそうだ。どちらにしても先に進む必要はあるのだろう。

「で、ここが大事なんだが」

「?」

「お前さんが作りたいのって…『ガラテイアの涙』だろう?」

「!…何で」

ガラテイアの涙とは…「無生物に生命を与える」アイテムである。亡くなった人の身体を乗っ取るなんてしたくないし、してはいけない。人造人間を作るのも、最初から命を創造するのは倫理的に考えてしまうところがある。しかし、最初は無生物だったら?無生物を作る人物と、ガラテイアの涙を作る人物が別の人物だったら、少なくとも無生物を作った人物は「生命を作った」事にはならない。また、ガラテイアの涙を作った人物も、あくまでもアイテムを作っただけなのだ。使う人だけが生命を作った事を背負えばいいだけなのだ。最初から何もかも一人で背負うのは無く、リスクを分散させるって考えらしい。

「材料を見れば分かるさ。こんな高等アイテム使うのは、そうそう無い」

「でも、材料だけ見て分かるなんて…。これ、下手したら王様しか見られないような鍵がかかっている本になっていて」

「ああ、それか。昔、読んだことがあるからだよ」

「へ」

「ああ、言ってなかったか。俺は昔、王宮に住んでいた。王の弟だよ」

「へええ!?」


まあ、語るには短い話だ。

俺は王の弟…当時の第3王子として産まれた。だが、万一の時の次期王のバックアップとしても、第2王子が居る。第3王子に必要性は無くて、やがて王になった第1王子に息子が産まれ、公爵になった第2王子も安泰な家庭を築いた。下手に、俺が何かしない方がいい。そう思って、王に願い出て、生涯結婚しない事を誓った上で、生活の支援を受けながら、こうしてここで昔から夢だった研究者をしている、って訳だ。

古代語は趣味で研究していて、王宮に居た時に、当時の王…つまり父親に頼んで、「魂の分割」を読ませてもらった事がある。だが、「ガラテイアの涙」だけでも必要な材料が多すぎて、作るのは無理だ、研究にはちょっと手が出せないと思ってあきらめた。それだけだよ。

「え、ガラテイアの涙『だけでも』?」

「全部読んでないの、ひょっとして?」

「う、うん」

「実は、魂の分割には、4つのアイテムが必要になる」

「4つも!?」

「そう。「魂を分ける」「身体から魂を取り出して移転させる」「無生物に命を与える」…そして「魂を移す無生物」の4つ」

「…言われてみれば、その通り…だね」

「魂を分けるアイテム…「天使のアイソレート」は確か15種類の、魂を移転させる魔法陣を作り出すアイテム「マジカルスクエア」は12種類のアイテムが必要になるが、これを調合するのは、俺ならば、そう大変ではない」

「えええ、頼もしい」

「アイテムの収集は大変だがな。ちゃんと調べておきなさい」

「はぁい」

「で。それらはアイテムの収集こそ大変だが、まあ、そんなにそこまで時間はかからないだろう。問題は『無生物』だ」

「はい…」

「これなんだが、お前さんの本来持っている魂に出来る限り近い形をしている事が望ましい。あまり魂と器が違う姿をしていると、拒否反応を起こすんだ」

「あ、だから、絵本の話って、双子とか、そういう話になっているんだ」

「そう。1つしか無い魂を切り分けて移動させるとなると、元々の姿と同じような姿になるからな」

「うう~ん」

と、すると前世の姿に似ている無生物かあ。そんなの、どうやって入手しよう。と言うか無生物って、何を用意したらいいの?

「一般的に、石像を用意するな。出来る限り実物大の」

「実物大の石像!?」

そんなの作ってもらうにも、買うにも、伝手なんて無い。どうしよう。

「そうだな、アセシックスルに、確か王城に納めてる石像屋が居たはずだ」

「アセシックスルに」

「だが、あいつは…正直、気難しいぞ」

「…どうしよう…」

とりあえず、一旦、アセシックスルに戻る事にした。本の内容も確認する必要がありそうだ。


「おや、嬢ちゃん…じゃなくて、アリサ」

「ルディ!」

本の情報をメモし、石像に関する文章も読んで、途方に暮れてた頃、冒険者ギルドでルディに再会した。

「元気か?」

「…まあまあ、かなあ…」

「おい、子供が元気じゃなくて、どうするんだよ」

「う~…。私にだって困った事は、あるんだよぉ」

ルディは、このアセシックスルの出身。石像屋について、知っているかもしれない。

「石像屋?ああ、あれか~…」

「知ってるの?」

「知っているって言うかなあ…」

「?」

「俺の出身の村にあるんだよ」

「!」

ルディの村は、戦士系を多く輩出する村で、戦う事を生業とする人が多かった。戦士や農家以外の職業を選ぶ人は、ほとんどいない中、ものを作る事を仕事にしたその人は、村で少し浮いていたらしい。

「あいつ、おかげですっかり人間嫌いになってしまってなあ…王城は、まあ昔からあいつを認めてくれてたものだから、まだ信じられるようなんだが、それ以外は…」

「う~ん…」

作ってくれるだろうか…石像。

「まあ、一度行ってみるか…」

「一緒に行ってくれる?」

「お前の依頼や護衛は最優先って約束したからなあ…。こうなるとは思わなかったが」

「あはは」

そうしてルディと共に、ルディの出身の村、エルデロクに向かった。道中、ルディはずっと浮かない顔をしていた。ルディは戦士を多く輩出する村の出身だが、村を出るまではあまり身体能力は高くなかったそうで、冒険者や護衛として揉まれているうちに実力を着けて行ったそうだ。だが幼い頃に刷り込まれたことは、やっぱり残るらしくて、村人に対して苦手意識があるんだそうだ。

「ルディは強いよ」

「ありがとうな、アリサ」

ルディは苦笑を浮かべているが、本当に私はそう思っているのだ。

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