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スフォーファンド.2

つらつらと考えつつ、半日かけて採取場所に到着した。嫌な雰囲気のする洞窟だ。

「ナイトランプ」

本来の「夜間のエンカウント率低減」の用法とは違う使い方(つまり周囲を照らす照明の魔法として使っている)をしつつ、洞窟を進む。狭い場所を通る時は小さいこの身体が便利だとは思うが、それなりに広い洞窟は、進みにくい。

そうこうして、基本レベルが2つ上がる程に魔物を倒していたら、洞窟の最奥に着いた。そこにはぼんやりと光を放つ石が点在していた。これが研究者の求めていたアイテムの1つ、「オーロラ蛍石」だ。まだらに光る石はきれいだが、そっと触れようとすると、周囲の魔物の気配が濃くなる。これもアレか、持っているとエンカウント率上がるタイプか。何か多いな、そういうアイテム…。

案の定、上がるエンカウント率に苦戦しつつ、洞窟を脱出する。洞窟の外に出たら、魔物の出現率は下がった。どうやら、この洞窟からこの石を出したくなかったみたいだが、出てしまったら、いいのかもしれない。

そうして石を片手に、街に戻る。帰り道も、もちろん半日かかる。遠いなあ…。

「お、これがオーロラ蛍石か」

「はい。やっぱり遠いですね…」

「ああ、アンタちっこいもんな」

「…年相応な大きさです」

「いやあ、大人の姿が重なっていると難しいなそう思うのは」

「…でも事実です」

「しかし、以前は違ったんだったな」

「ええ…乗り物に乗って移動していました。やっぱりこの街で売ってる乗り物買おうかな」

「う~ん、一緒に行ってやりたいのはやまやまなんだが、自分も忙しくてな」

「…そうですか」

とりあえず貴族街に行く事にしてみた。

「……」

「お引き取り下さい」

「これでもダメですか」

「ダメです」

貴族街の門番と押し問答である。大神官の書状を見せても、「こんな幼子が、大神官の書状を持っている訳がない」と、聞いてもくれない。

困り果てていた私の前を、3台ほど馬車が通り過ぎていく。子爵や伯爵の馬車だそうだ。そんな中、4台目の馬車がやってきた。一際立派な馬車の御者が、門番に通行許可証を見せる。

「これは…登城は随分とお久しぶりでございますね」

「はい、代替わりがございましてな」

「それは…様々なご事情が」

「左様で」

ぼんやりと馬車を眺めていた私は、馬車に乗る人がカーテン越しに動くのを見た。

そっと、少しだけカーテンが開き、中の人の手が見える。

「この先に進みたいのかね」

中の人が声をかけてきた。

「…はい」

「そうか。門番、私が許可しよう…この娘を通してくれ」

「そんな、でも」

「構わない。大神官の書状を、こちらで確認する。もしもこれが偽物であれば、街の外に追い出せば済むことだ」「はあ、でしたら…」


そうして、私は馬車に乗る事になった。目の前に居たのは。

「どうして」

リュシター侯爵家当主、コンラート・リュシター。かつてラートと名乗っていた、私の父だった。


「私の…村、ライル村は…もう、ありません」

「…ライル村が、無い?」

「孤児となった私が生き延びる方法は二つだけ。物乞いとして生きるか、冒険者として生きるか。その二つの中で私は、冒険者を選びました」

「…そうか」

「幸い、戦闘スキルも魔法スキルもありましたから…」

「ああ…」

立派な馬車と言えども、うかつな発言は出来ない。他人行儀になるのも仕方がないのだ。御者が父の完全な味方であるとも思えないし、おそらく、また脱走されてはかなわないと、見張りもさりげなく居るのだろう。こうして私を馬車に乗せるのが、迂闊な行為だと思う程に。

「そうして冒険者を続けて…私はエスリールの大神官に取り付いた魔物を倒しました…そして、それを王に伝えるように大神官に渡されたのが、この書状」

す、と父に…いや、リュシター侯爵に差し出す。

「…見覚えがある。この対の鳥の足元に、気付かぬように小さくある星のマーク。知らなければ見落とすものだ。間違いない、大神官の封蝋だ」

「こんな4歳児が持っているのはおかしいと、散々疑われました…王に届けようにも、貴族街にも入れませんでしたから」

「…そうか、なら、あの場で声をかけたのは、良かったのだろうな」

もしも、私が赤の他人でも、良かった結果になっていた。言外に、それを漂わせて。

「それに、貴族街に欲しいものがありましたから…」

「欲しい物?」

「空中を浮いて移動できる乗り物です…スツートの町で購入したものは壊されてしまって」

「…ああ」

まじまじと私を見る。小さい姿、短い足。冒険者に向いてない姿。

「その店は、王城から割と近い。王との謁見が終わったら、付き合ってやろう…貴族でない者は断られる店だ」

「…ありがとうございます」

少しの切なさが滲む。貴族と平民の壁が、ここにはある。親子なのに…。声高に叫べない、関係だけれども。

そのまま、侯爵である父に連れられ、王城に入城した。侯爵の一声と大神官の書状で、いかにも庶民の冒険者の格好でも、入城を許された。侯爵の立場って大きいんだな…。

そして、王との謁見も許されて、直接大神官の書状を手渡す事が出来た。その場でざっと書状に目を通した王は、直答を許すと告げて、聞いてきた。

「この書状に書かれている事は誠か」

「私は書状に目を通していませんから、書状に何を書かれているかは不明ですが、神殿の結界を超え魔物が大神官に取り付き、それを私が倒した事でしたら…間違いありません」

「ふむ、聡明な娘だな。なかなか得難い存在かもしれぬな。庶民でありながら、その年齢でその受け答え…なかなか出来るものでもあるまい」

ちらりと横に居た、王子に声をかけた。

「どうだ王子、あの娘、どう見る」

「…庶民に興味はありません」

ああ、あの王子だ。あのほれぼれする声…この世界でも声は一緒なんだな。

そして庶民に冷たいのも同じか。それに年齢は、どうやら15歳か、少し上かもしれない…一回りくらい離れているね。もしも私が元の姿に戻ったとしても、10歳くらい違うから、王子様からはどっちにしても年齢の離れた存在としか認識されないか。

「…そこなる娘。聞きたい事がある…」

「はい」

さ、と王が右手を上げると、王子と父以外の者が声が聞こえない遠くへと距離を開ける。王子も去るように言われ、しぶしぶと距離を開ける。侯爵も距離を取らされて、私は王に「近くに寄れ」と、王のすぐ傍まで近寄らされた。

「娘。大神官の書状によると、大神官に取り付いた魔物と戦った場所は、神殿の地下だとあるが」

「はい、そうです」

「アールヴァルの事も、聞いたか?」

「!」

人々から厭われて、悲しみと寂しさから魔物を産み出すようになってしまった黒竜アールヴァル。あの神殿の地下で、魔物はアールヴァルを慕っていた。一般的には魔王と言われているアールヴァル。それの事を何故、王様は聞きたいの?

そんな…悲しそうな表情で。

「アールヴァルは…元は、竜ではない」

「え」

「はるか昔に…この国が建国された時に、後に王となる人物は、竜の力を借りたのだ。竜の力をもって、この地を平定した。それは、歴史書にも書いてある、この国の子供なら庶民でも学ぶことだ」

「はい…」

4歳なのでまだ学校には通っていないので知らなかったが、そうなのか…。

「そして、この国の王は、代々、その力を貸してくれた2つの偉大な竜をあがめる事とした。その竜たちこそが…」

「アールヴァル、それとヴァティル」

「いかにも。力のヴァティルと、技のアールヴァル、そう呼称もされておった」

「力と、技」

「だが、やがて…王は、目に見えて分かりやすい、力の竜ばかりを重宝するようになり、技の竜を軽視するようになった。小手先の技などに頼らなくても、力さえあれば国を守れると」

「…そんな」

「怒りと絶望を覚えた竜は、絶望にその身を黒く堕とした…元は美しい、白銀の竜であったと聞く」

「金と銀の竜だったのですね」

「ああ。そして、アールヴァルとヴァティルは、元々、一つの卵から産まれた双子の竜…互いの結びつきも強かった。アールヴァルを闇落ちさせた人間を、ヴァティルは許さなかった…」

「え」

「ヴァティルは、その身を自らひどく傷つけて、落命した。そして魂だけの存在となって、時の王に乗り移り、告げたのだ…『お前の一族に、我が魂を。いずれ私はお前の一族として産まれてくる。その存在は、この国を壊すだろう。救われたいのであれば、我が半身を浄化できる存在を求めよ。さて、我が産まれるのと…その浄化と…どちらが早いのであろうな』王の魂に同化したヴァティルの魂は、脈々と王の血の中に受け継がれてきた」

「…なんて」

「竜の加護を失ったどころか、闇落ちしたアールヴァルと戦うこととなって、王国は疲弊した…。アールヴァルを倒しても、その魂は浄化されず、再び産まれ、また王国を襲い…それを何度も繰り返した。そして、またも…アールヴァルは産まれた」

「え?」

「人の姿を…借りて」

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