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LOSERは遠吠えしない。  作者: 高瀬涼
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本当の敵-02

「リタさん、聞きましたよ。本当に《レッドフード》第二へ異動になっていらしたんですね!」


ラインハルトが馬に乗って、やってきた。

朝日に金髪が輝いている。

まだ、異動して一日しか立っていないのに、もうここに顔を出すとは早い情報網だ。

と言っても、リタは≪レッドフード≫内でも、人狼討伐数は群を抜いており、部隊をつくった父の娘という立場からも目立つのは当たり前のことかもしれない。


「第二部隊の宿舎は《ハンター》本部から離れているため、毎日会えないですね」

「私たち赤ずきんと猟師は最近になって連携することが多いけど、もともと別部隊よ。王都お抱えのあなたたちと村人からなる私たちとは大きな溝があるわ」

「同じく人狼を討伐しようとする目的は同じです。同じ人類として歩み寄っていきましょう!」


楽しく(?)会話しているリタとラインハルトを《レッドフード》の女たちとラインハルトの後ろから、別の馬に乗ってついて来ていた青年がじっと見ていた。

 気付いてから、リタがラインハルトに紹介しようとする前に、フィリーネが挨拶をした。


「始めまして、フィリーネ=ハーネと言います。あなたがラインハルト様ですよね!?」

「は、はあ。そうですが」

「噂には伺ってましたが、実物は本当にかっこいいですね! あたし、めっちゃファンなんですう」

「ありがとう。僕も会えて光栄だよ」

「きゃあああ、イケメン!!」


 にっこりほほ笑まれ、フィリーネが悶絶した。


「わ、わたしも自己紹介していいですか? アンナ=バ……」

「ちょっとお、なに無断でラインハルト様に近づいてんのよお!?」

「いいさね、イケメンはみんなのもんさあ!」


甲冑をがしゃがしゃ言わせて小声ながらも挨拶しようとするアンナ、独占しようとするフィリーネ、その間に割り込むクロエ。

リタは、これが普通の女の子の対応なのかと思った。ちょっと過剰かもしれないが。

他の面々もわらわらとラインハルトの周りに集まってきて、リタはその輪から外れていく。

ラインハルトの後ろの青年が馬から降りた。

銀色の髪に同じ色の瞳をした青年。年はリタと同じくらいだろうか。

一応、《ハンター》と同じ皮の上着、背中に長い銃を携えていた。

いつもなら、気にならないのに、リタは青年から目が離せなかった。

やる気のなさそうな顔をして強そうではない。ラインハルトほどの顔立ちをしているわけでも(とはいえ、リタは顔が整っていたとしてもさほど気にならないのだが)ない。


「君がリタ=ヴィンダウスだね。あのニコラス=ヴィンダウスの娘」

「そうよ。あなたは?」

 馬の手綱を持って一礼する青年。

「僕は、アセナ。《ハンター》に入ったばかりさ。家族を殺されてね。身よりがなくなって、孤児院にいたんだ」

「へえ」

 

そう言った境遇の者は大勢いる。

なのに、どうしてこの青年のことが気にかかるのだろう。

風に銀色の髪が揺れてリタは気付いた。

灰色だからだ。

あの人狼の同じ色だから。


アセナが馬の顔をなでながら尋ねてきた。


「狼を殺すのは楽しい?」

「楽しいも何もないわ。私のやるべきことだからしているだけよ」

「憎いから、でもないんだ」

「もちろん、憎いわ。あなたもそうだから《ハンター》になったんでしょう?」

「まあね」


リタは得体が知れない青年だと思った。アセナの考えが読めない。


人は人の心の内を読むことができないのは当たり前だが、この青年は何かを隠しているという予感がした。

今の質問も妙だ。

普通、リタに会った初対面の者は

「人狼を殺すのは怖くないですか」だの「どうやったら、そんなに強くなれるんですか」だの、人狼を殺すのは当たり前のことだと認識しての質問ばかりだ。

人狼を殺すことに対する感情なんて聞かずともわかることばかりなので聞かない。みんなが人狼を恐れているし、憎んでいるし、倒すべきものだと考えている。


「楽しいか」と聞かれたのは初めてだ。


「よろしくね、リタ」


馴れ馴れしいと思った。

けど、嫌な感じがしないのはどうしてだろう。

握手を求められて、リタは軽く彼の手を握り返した。銀色の腕輪が目にとまる。

銀細工は人狼が嫌がる。

お守りとして持っているのだろう。


「アセナね。《ハンター》ならきっとまた会うわね」


ひょっとして、あの狼なのかもという微かな疑念。

リタの中に浮かんだ、既視感はその銀の腕輪を見て消え去った。






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