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LOSERは遠吠えしない。  作者: 高瀬涼
3/6

孤独な赤ずきん-03

六歳だったリタは、十八歳となった。

自分でも、よくこの年まで生きてこられたものだと思う。

たぶん、実力なんかじゃない。運だ。

人だと思っていた村人が、人狼に化けてリタを至近距離から襲ってきたときも、人狼に丸腰で囲まれたときも、一緒に赤ずきん≪レッドフード≫にいた同い年の女の子が死んだ日も、全部、リタが殺されてもおかしくなかった。

リタは母が死んだ日から、いつ死んでもおかしくないのだと覚悟していた。

覚悟しているから、いつだって、冷静に理性的に状況を確認することができた。それも自身の強みだと自負している。

――母が殺された日、もう一匹の人狼が現れなかったら、きっと私は……。

リタは頭を振って、歩き出す。

母がよく編んでくれた三つ編みはもう自分で編めるようになっていた。



リタは武器である、銀の弾丸の入った猟銃を構えた。

人狼の堅い体は銀の弾丸でしか貫けない。


必死で逃げる標的。

二足歩行で走る、痩せた人狼。

茶色をした毛並みも悪かった。人狼にもさまざまな体格がある。あれは小型な方だ。

リタは、はっきりとした青色の瞳を大きく見開いて撃った。


「うっ……!!」


左足に命中。

倒れる前に背中にも一発放った。それも命中した。

リタは赤ずきん≪レッドフード≫でも猟師≪ハンター≫並みの身体能力で動ける逸材と育った。


「この距離から弾が当たったのか!」


驚くハンターの男。

ハンターも例の人狼を追っていた。基本的にハンターとレッドフードは別部隊なので一緒に行動しないが要請があれば出動した。

今回は要請があったパターンだ。

ハンターは王の正規軍なので、父が作った施設の討伐部隊より彼らの方が立場は上だ。父はいつだって二つ返事で応援を了承する。

最近、正規軍のために仕事しているといっても過言ではない。

赤いフードをかぶった仲間が、人狼を足で転がして表を確認する。


「隊長、こいつで間違いなさそうです」

リタも小さく頷いた。


リタはレッドフード精鋭部隊の隊長となっていた。

ハンターも特徴を確認して、その人狼が書面通りのものとして頷いた。

死体を布でくるみ、荷台に積み込む。

すると、馬に乗った男が現れた。全指揮を執っていた若い貴族の男。


「さっすがリタさん! お見事です!」


金髪がきらきらと陽光に輝いた。同じく金色の瞳も輝いている。

リタは、返事をせずに黙々と死体を運ぶのを手伝う。血が手についた。


「ところで、リタさん、今度食事に行きましょう!」


彼は昔、人狼に腕を取られて義手をしていた。がしゃがしゃと鎧と義手の音をさせてはいるが、ハンターとしての腕はリタも認めてはいる。

馬から降りると、彼の目線はリタよりもだいぶ上にあった。体つきもいい。


「ラインハルト。あなたほどの顔立ち、貴族、おまけにハンターの隊長と揃った人は私みたいな女は合わないわ。ドレスをまとった女性があなたのことを待っているはずよ」

「いいえ。僕は憎い人狼を放って、紅茶を飲んでいるご婦人になど興味ありません! リタさんがいいんです」

「あなたは、人狼を多く殺せるから私がいいだけなのよ。私自身が欲しいわけじゃないわ」

「人狼を多く殺せるあなたも、あなた自身では?」


真っ直ぐな視線から、リタは視線を逸らした。

人狼を悪として疑わない彼とリタは違うような気がしていた。

最近、人狼を追って、撃って、殺しての一連の作業に何の感情も浮かんでこないのだ。

父が殺せというから殺す。母を殺したから殺す。

恐怖も浮かばず、淡々と行う。死にそうになっても、怖くない。

時々、麻痺している自分が怖くなる。

この感覚はラインハルトには理解できないだろう。リタは曖昧にほほ笑んだ。


「私には構わないで」

「――リタさん、またそうやって殻に閉じこもって……」


年下のくせにラインハルトは説教をリタによくしてくる。

また、小言が続きそうになったとき。



「もう一匹いたぞ……!!」


隊員の声に、銃を構え直す。リタは声と方角を確認。

一瞬、木々の間から黒い影が見えた。

リタは反射的に走りだしていた。





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