05話 ござる集団戦 -1-
盾を構えながら、長銃で敵の集団に向かって乱射。
だが相手は盾持ちを全面に出して、事なきを得る。
前衛には盾四人。その後ろに近接、魔法の攻撃職が待機、さらに後ろには回復職を守る為の盾持ちが残り三人。そして回復職と続く。
「蓮にぃ、天姉。優先順位はいつもの通り」
「了解。天姉は前衛でお願いしますね」
「分かったわ。じゃあ飛ばすわね?」
「お願いします」
敵の盾持ちの前までくると、肩に乗せるように大剣を構える天姉。
その背負われた剣の腹を踏み台に、僕は宙に身を投げ出した。
剣から重さが消えた瞬間、天姉は目の前の盾に斬撃を加えていく。
天姉が剣を振るう度、盾と鎧で相当重量があるはずの盾持ちさんが、綺麗に吹き飛んでいく姿は滑稽の一言。
相変わらず凄い力だな。ただ、魔法剣士なら魔法も使って頂きたいものだが。
僕は跳躍中にその光景を眺めながら、長銃と盾を装備から外し、代わりに両手に短機関銃を装備する。
前衛の盾持ちを飛び越えて、攻撃職の集まりのど真ん中に着地。
「な、なんだこいつ」
「上から降ってきたぞ!」
攻撃職に囲まれているがこれは思惑通り。
前衛の盾のせいで見えていなかったのか、突然降ってきた僕に対応できずにいるらしく、棒立ちの敵。
僕は好都合とばかりに、その的へ握った二丁の短機関銃を向け、銃弾をばらまく。
「ぐ……麻痺……」
あらかじめ銃弾を麻痺弾に変更しておいた為、銃弾に当たった七割近くは状態異常、麻痺にすることに成功する。
遠距離が使える射撃、魔法職を重点的に麻痺をかけるようにしたが、何人かは微量のダメージが入ったのみで終わった。
もうちょっと麻痺にしたかったが、仕方ない。
そう諦めて、装備を盾と長銃に持ち替えて後衛の盾持ちへ突撃する。
僕達の人数でこの数を倒すには、優先順位の高い者から倒していかなければ勝ち目は薄い。
そして現段階で、最も順位の高い者。それは回復職だ。せっかく減らした体力を回復されたら戦闘が長引いて、数で押し切られてしまう。
それを避ける為、僕がやることは────。
「まずは一人だよー」
まやの狙撃の射線を通す事だ。
彼女の報告通り、回復職が一人減っている。銃声は一発しか聞こえなかったから、恐らく頭を狙い撃ったのだろう。
相変わらずまやの精密性は高いな。僕達が盾持ちを射線から外しているとはいえ、攻撃職の合間を縫って狙撃とは。
若干まやに呆れながらも、引き続き盾持ちを射線から押し出す。
「蓮にぃ、天姉。もうすぐ到着するけど、攻撃職が気絶から回復してくるよー。回復職は二人逃したー」
「了解よ。こっちは前衛の盾さんが終わったわ。れんれんは?」
「盾持ちに火力求められても厳しいです。相変わらず盾持ちさんと体当たりしてますが、後ろから攻撃職さん達がきそうです」
「あと、ござるさんが見当たらないから気をつけてー」
「そういえばござるさん、最初からいなかったですね。一体どこに────」
「こっちでござる。《居合抜刀 紫電》っ!」
僕の言葉を遮る声が真後ろから聞こえた。
即座に振り向き盾を構えたと、迫ってきていた刃が盾を打ちつける。
くっ……危ない危ない。
攻撃してくる前に話しかけてくれて助かった。無言だったら斬られていたに違いない。
ござるさん、頭弱くなかったら僕にダメージを与えられただろうに。
気の毒に感じながらも、ござるさんと対峙する。