04話 戦いの火蓋
「ははは! ようやく対戦を受ける気になりましたか! さては今まで拙者には勝てないと逃げ腰になっておりましたな!?」
指定された場所へ赴くと、久し振りに見かける姿を視認した。
相変わらずロールプレイが捗っているようだ。
ただあの勘違いの多い性格は、どうにかならないものだろうか。
「……やっぱりめんどくさくなったのですが」
「そうね。受けておいてなんなのだけれど、既に帰りたい気分ね」
「でもこの人のメールしつこいしー。かといって運営さんはこの時期、こんな小さな事で動く程暇じゃないだろうしー」
「そこが問題なんですよね。このござるさん、ロールプレイ含めてうざったいのでやめてほしいんですが」
「忍者か侍かよくわからないけれども、どっちにしても静かにしているイメージはあるわよね。でもこのござるさん、凄くうるさいわよ?」
「このござるさんはロールプレイしきれてないんだよー。本物のござるさんになりきれていないから、たまに一人称が私になっちゃうんだよ?」
「拙者はれっきとした忍者でござるよ!? あとござるさんのごを、おさるさんみたいなイントネーションで言わないでほしいでござる!」
僕、天姉、まやの三人の談話に割り込んでくるござるさん。
忍者を名乗るなら、言葉遣いにくらい気をつけましょう?
「本物のござるさんならイントネーションとか言わないと思いますでござる」
「もう穴だらけよねでござる」
「責めないであげてー。ござるさんが泣いちゃうーでござる」
「どうみても馬鹿にしているでござる! もう許さないでござる!」
やけに短気な忍者だこと。これじゃどこにも忍べないと思いますがね。
「さぁ! 勝負を受けるでござる!」
「……ござるさん、ノリノリみたいですね。準備は大丈夫ですか?」
「私はいつでも大丈夫よ。欲をいうならござるさんの相手をしたいわ」
「あたしもー。ござるさんと戦いたい」
「そうね。二人で倒しましょう?」
「うん、賛成ー。というわけで蓮にぃ、あとはよろしくー」
「え? それじゃあござるさんが瞬殺されちゃいますよ?」
「そっちでござるか! お主、自分の心配も少しはしたほうがいいでござるよ?」
「ちゃんと遊んであげるから心配ないわよ、れんれん?」
「ござるで遊ぶー」
「天姉もまやも、あまりござるに時間かけないでくださいよ?」
「分かったわ」
「はーい」
「拙者の話を聞いてほしいでござるよ!」
「じゃあ、いくわよ?」
天姉の一言に、僕達は目つきを変える。
対戦を承諾したようで、転送が開始された。
暗転が終わると、平原の対戦ステージに僕達は立っていた。
平原か……。相手間に五百メートルの距離があるとはいえ、ここからでも敵さんが見えてしまっている。
「蓮にぃ、射線通る。狙撃で減らす」
「狙いは?」
「もちろん、狙撃手。あ、走りながらね」
「それできるのまやさんだけですけど。僕は精密性足りないのでお願いします」
まやがすぐさま狙撃銃に装備を変更し、走り出しながら相手を狙い始めていた。
「じゃあ、れんれんは私と一緒に突撃ね」
「了解」
その言葉を合図に大剣を背負った天姉と、盾と長銃で武装した僕とでまやを追いかける。
相手方の狙撃手に狙撃されないよう、無作為に飛ばされてくる銃弾や魔法でダメージを食らわないよう、僕は盾を構えて直進。その後ろに天姉が追従。
まやは走りながら狙い撃ちをしているため、通常の移動速度より遅い。その上、回避運動も追加されている為、直進できる僕達が抜かして先行する。
しばらく走って今にも敵と衝突しようとした時、まやの声が頭に響く。
「狙撃手終わった。見た感じ残りは盾七、近接七、魔法三、射撃二、回復五くらい。あとはござるー」
「こっちもそろそろ、残りの敵さんと接触するわ。まやちゃんはこっちに来ながら援護お願いね」
「りょーかいー」
仮想現実ならではの通信方法。ボイスチャットと呼ばれる機能で、意思疎通を図る。
「天姉、行きますよ」
「うんっ!」
そして、相手が射程圏内に入った事を確認し、戦闘を始めた。