03話 対戦申し込み
「結構呆気なかったわね」
天姉は物足りないとばかりに、大剣を弄ぶ。
少しいじけたような表情は、姉ながらも子供じみていると感じざるを得ない。
「まぁ難易度低いものでしたからね。明日以降に解放される、難易度の高いものの予行演習ということで」
そう宥めるが、未だに曇った表情は晴れない。
いい年なんだからと言いたいが、高校二年女子はこんなものなのだろうか?
……周りに参考になる人がいない。というか友達が少ない時点で、参考にできる人がいない。
あくまでも友達は少ない、であっていない訳じゃない。
いない訳じゃ……。
あまりの虚しさに頭を振って、思考を破棄する。
すると、まやが唐突に嫌そうな顔をする。
「蓮にぃ、天姉。またきたよー」
「あら、またなの?」
その言葉を聞いて、以前から対戦を申し込んできている、めんどくさい男からのメールだと結論に至る。
またあの人か……。何回も何回よく懲りないものだ。
僕達三人に送られてきた数多の対戦申し込みの中で、実際に行った戦闘は二回。いずれも僕達の勝利で終わっている為、勝つまで対戦申し込みは続いていくのだろう。
負ければ収まるのだろうが……。
あの性格の人には負けたくないな。負けたら絶対鼻につく態度で話しかけてくるだろうし。
そう結論付け、対戦の内容を問う。
「今度は何人ですかね」
「うん。今回は三十人くらい集めたって書いてあるー。今からみたいだけど受けちゃっていいー?」
「そうね。流石にしつこいものね」
「じゃあ受けるねー」
「え? ちょっと待って下さい。前は十人程度だったのに三倍ですか」
前回との人数の差に、不安が残る。
「何か問題かしら?」
問題というか、それ三人で捌ききれますかね。
「……一応聞きますが、一人でどのくらいの人数持てますか?」
「相手にもよるけど一人くらいよ」
「あたしも一人だよー」
「……残り二十八人どうするんですか? いくら盾に専念しても、十人超えると一瞬で溶けるんですが?」
困った。
このパーティーは相手を一人ずつ撃破していく事で、連携を保っているといっても過言ではない。
前回は、残った敵を盾の僕が抑える事でそれが成立していたが、今回ばかりは抑えきれないだろう。
「でも蓮にぃ、それは理論上の問題じゃないー?」
「それにパーティーならわからないでしょう?」
「うぐ……。そう言われるとそうなんですけど」
やってみなければわからない。
確かにそうかもしれない。でも、ここまで人数の差ができてしまうと、運なんて要素が介入する余地はない。
「悩んでいるところ悪いけど、了承メール出しちゃったのー」
うんうんと悩んでいると、まやが悩む必要はないと言外に言う。
「もう手遅れでしたか」
「大丈夫。なるようになるわよ」
「そうそう。相手は数が多いだけで、あたし達のような連携は無理だから問題ないよー」
「連携プレーに関しては同意できますが、数で押されたら連携どころではないと──」
「考えるのはその時にして、準備だけ済ませちゃいましょう?」
「時間もないしねー」
今から断りのメール送ったとしたら、あの人がいろいろ騒ぎ出しそうだ。
……仕方ないか。
「……はぁ。もうこうなったらしょうがないですが、そんなに数持てませんからね」
「大丈夫よ。れんれんなら」
「きっと蓮にぃなら、三十人程度は持てる筈」
「大事なのは連携なんですから、危ない時は協力してくださいよ?」
「任せてちょうだい?」
「努力するよー」
結局は持たされるんだろうけど。
僕達は装備の確認をしながら、指定の場所へと向かう。